魔鋼騎戦記フェアリア第3章双璧の魔女Ep2姉弟Act20姉(マリー)と弟(ルメル)
ロナを失ったマリーは失意の中、一人の将軍とであった。
その憎しみは濯ぎ様も無くマリーを堕としていった。
ロナを失った私は唯一人、軍に求めた。
<双璧の魔女>と、闘う為だけに車両を欲しいと。
あの戦車に勝つ事が出来る車両が欲しいと。
だが、軍は私の事をもう必要としていなかった。
二度も敗れた魔女に3度目は無いと。
私はどんな事をしても、奴と闘わねばならなかった。
例えこの身を失う事となったとしても。
「マリーベル少尉。君は伝承の魔女なのだ。
その紋章に描かれた様に力を発揮させてみる気はないかね・・・」
一人の将軍がマリーに声を掛けてきたのは、ロナを失ってから4日後の事だった。
将軍が指す紋章は赤黒く描かれていた。
「君は闇の力を知っているかね。君の紋章を闇に染めてみる気はないかね?」
薄く笑う将軍に言われるままに、
「闇の力?もし、その力を欲したらどうだと言うのです、将軍。
私に車両を下さるというのですか?」
マリーの質問に将軍が笑う。
「そうだマリーベル!お前が求めるのならくれてやろう。
闇の力と闘う術を。
だがその身体は貰い受ける事となるぞ。
それでも良いと言うのなら、来るがいい・・・」
歩み始めた将軍に、
「身体を貰い受ける?どう言う意味だ?」
マリーは将軍の後を追いながら訊く。
「お前が闇の力を欲するのなら教えてやろう。
その車体に必要なのは、お前の魂だけなのだ。
お前自身が、その車体の一部となるのだよ」
将軍は一つのドアの前で歩を止めて言った。
そしてマリーに言い放つ、ドアを開けて。
「この車体と一つになるのだ。
伝承の魔女・・・マリーベルよ!」
将軍とマリーの前には何本ものチューブが繋がれた車体があった。
まるで活きているかのごとく、
各部の計器を点滅させながら黒く光る車体を淡い光の中に浮き立たせていた。
ー 私は二つ返事で認めてしまった。
私の肉体が失われようと、あのフェアリアの魔女に打勝つ事が出来るのであればと・・・。
私の紋章は闇の中へ堕ち、<大蛇の紋章>から<邪剣の大蛇>へと変わってしまった。
この子を乗せていると言うのに・・・-
マリーの中で眠る男の子を感じながら、
自分が一両の車体と化した記憶を甦らせていた。
ー マモルが私に乗り込んだ時に想ったのは、弟ルメルの事。
フェアリアに殺された弟、ルメルの想い出を・・・-
マリーが思い出すのは小さな頃からよく喧嘩懐かしい弟の事。
自分が軍に入った時も怒って辞める様に言われた事だった。
「マリー姉、どうして軍に入ってしまったんだ。僕が軍隊に入った腹癒せか?」
ルメルはマリーに怒鳴ったものだった。
「何よ!自分だけ働き口みたいなことを言って!
私だって生活していくには軍に入るのが一番間違いないんだから。
働く所もない、この辺りでは軍に入るのが一番いいんだから!」
マリー達の住むウラル山脈の裏側には、これといって産業も無く、
農業に向いた土地でもない為に住民は皆、
出稼ぎに出るくらいしか生活の目途が起たない程の貧しさだった。
「だからと言って女の姉さんが兵隊になる事はないじゃないか!」
ルメルはマリーの判断に文句をつける。
それは弟が姉に見せた心配の顔。
「もう決めたんだから。ほっておいてよ!」
マリーはルメルにそう言うと、話を打ち切った。
ー 今にして想えば。
ルメルの言った事の方が正しかった。
ルメルの忠告を聞いておけば、こんな想いはしなかっただろうに・・・-
マリーは砲手席で眠るマモルを見て想う。
弟ルメルの事を。
闘いで死んでしまった弟がずっと気に病んでいた自分の弟の事を。
ー すまないルメル。
お前の言う事を聴いてさえいれば善かったものを・・・
闇になど堕ちる事も無かったものを・・・ー
計器の中でマリーが想うのは、懐かしい弟の思い出。
そして、ロナの事。
ー ロナ・・・ロナ。私は何と愚かな事をしてしまったのだろう。
ロナの想いを忘れ、憎しみに身を委ねて・・・・
こんなに穢れてしまった。
もうロナの願いも果たす事が出来ないまでに堕ちてしまったのだ。
やっとフェアリアの魔女に勝てたというのに・・・-
マリーは自らの罪の深さに嘆く。
ー 私の継承した力は古来の剣士の力だった筈。
それさえも忘れ、魂を堕としてしまった。
もう私には死ぬ事さえも叶わない。
ロナの元へ謝りに行く事も出来なくなってしまったから・・・-
<そう想う事が出来る様に戻れたのか。大蛇の紋章を受け継ぐ者よ?>
何者かが、マリーの思考に割り込んでくる。
碧き光がマリーの思考の中に現れた。
その者は何時か忘れかけていた光を伝説の剣士の魂に語りかける。
次回 ミコトの意思
君は闇から救いを求める者に手を差し伸べる・・・





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