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時計と、鞭打


  *


 五人は揃って床に現れた鞭を凝視した。皆が無言だった。この鞭で何をしろと言うのか、理解したくなくて誰もが口を閉ざす。


 そんな王子達の思考を嘲笑うかのように、アメリアが残酷なルールを告げる。


『さて、皆様にはその鞭で百回、互いを叩き合って頂きます。誰が誰を何回叩いても構いません。但し、猶予はこの砂時計が落ち切るまでとします。その間に百回を達成出来なければ、全員にペナルティが与えられますのでご注意を』


 アメリアが大きな砂時計を指し示す。見事な装飾が施された時計の中には、虹色に煌めく砂がたっぷりと入っていた。しかし、それがどれ程の速度で落ちるのかは見当も付かない。


 五人はそれぞれに息を飲み、顔を歪め、溜息をついた。仲間内で誰かが誰かを鞭打つ、──そんな惨い仕打ちをさせようとする、それをゲームだと真顔で言うアメリアに憎悪が湧く。


『また、鞭打つ力が弱過ぎますと一回としてカウントされませんのでご注意下さい。残り時間と回数はきちんと表示されますので誤魔化しは出来ません。──さあ、最初は誰が誰に鞭を振るいますか?』


 王子達はそれぞれに顔を見合わせる。複雑な視線と表情が交錯する。


 ──シルヴィアを鞭打つのも打たせるのも論外だ。鞭を振るうのは意外と体力が必要だ、弱い力ではカウントされないと宣言されている以上、彼女はこのゲームからは外した方が良いだろう──男性陣は皆がそう考えているようだった。


 ならばブラスやスティールはどうか。インドア派の二人は乗馬なども余り得意ではない、鞭の扱いにはそこまで慣れていない筈だ。体力もブロンゼやゴールディに比べると心許ないものがある。


 ならば、とブロンゼと王子は同時に視線を絡ませた。


「ゴールディ、俺を鞭打て。俺は体力には自信がある、剣の稽古で痛みにも慣れている。それに乗馬の得意なお前ならば鞭を上手く扱えるだろう。選択肢はこれしかない」


「そう……だな、ブロンゼ。やはり、そうなるよな」


 ブロンゼの言葉に王子は力無く笑う。……恐らく他の四人は王子が鞭打たれるのをよしとしないだろう事は分かっていた。ならばこの答えは当然のこと。しかしゴールディは、親友を自らの手で鞭打つ事に強く抵抗を感じていた。


『決まったようでしたら、さあ、鞭をお取りなさい、猶予はありません。──さあ、ゲームスタートですわ』


 アメリアの冷酷な声が響き渡る。同時に、アメリアが大きな砂時計のハンドルを回し上下を引っ繰り返した。──さらさらと、煌めく砂が流れ落ち始める。


 そしてスクリーンは一瞬漆黒に塗り潰され、直後に大写しとなった砂時計の様子と、百を示す数字だけが黒一色の中に浮かび上がる。


「く……っ!」


 その様子に王子は意を決し、床に置かれた鞭を握った。ひやりと冷たい革の感触は滑らかで、手に馴染む握り心地にゴールディは唇を噛む。


 鞭は乗馬用にも似ているが、少し特殊な形状をしていた。握り手は長く、その先には革を編んで作った指二本分程の幅のベルトが伸びている。長さはゴールディの身長の半分程度だ。刑罰用というよりは、軽い処罰を与える時に使うものだろうか。


「ゴールディ、ぐずぐずしている時間は無いぞ。──さあ、頼む」


 ブロンゼが王子に背を向け膝立ちになった。他の三人は二人から離れ、壁際に座り込む。ゴールディは意を決し、ゆっくりと立ち上がった。


「すまない、ブロンゼ」


「いいんだ、遠慮は無用だ。──あのアイアンメイデンが何を考えてこんな事をやらせてるのかは分からんが、こんな下衆な遊びとっとと終わらせて、皆で此処を出ようぜ」


「……ああ」


 王子は泣きそうに表情を歪めると、覚悟を決めて大きく鞭を振りかぶった。


  *





王子による親友の鞭打ち……。

さてブロンゼは百回耐えきる事が出来るのか。乞うご期待、なのです。


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― 新着の感想 ―
[一言] 次は鞭打ち! 勿論鞭打ちだけでは済まないに違いない…… ワクワク。
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