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中年聖騎士は、気付かぬうちに武を極める  作者: 陽山純樹
第二章

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まばゆい光

 結界が破壊されたことで、この場にいた人間達がどよめいた。すぐさま多くの騎士や勇者が地竜の攻撃に備えて動き出す。

 それに対しエリアスだけは、足を前に出す。その間に破壊された結界の奥から地竜が姿を現す。二度の魔法による集中攻撃を受けたが、それほど傷ついてはいない。


 だが、さすがに手痛い攻撃だと思ったか――地竜が吠える。それは今までの威嚇とは少し異なっていた。発する魔力はそれほど変わらないが、音圧が一段上がり、身を竦ませる。

 間違いなく地竜は怒っている。なおかつその怒りを、目前にいる人間達へぶつけようとしている。


 その標的は、魔法を放っていた者達か、それとも真正面にいる聖騎士テルヴァか。どちらにせよ、交戦を開始した時点で大きな被害が出ることは予想できた。おそらくテルヴァは地竜の気を引くためにあえて真正面から対峙しているようだが、果たして地竜はその目論見通りに動くのか。

 騎士や勇者が地竜の動きを注視する。その中で、エリアスだけが真っ直ぐ地竜へと突っ込んでいく。


 ――その動きにいち早く気付いたのは聖騎士テルヴァ。駆けるその姿を見て彼は瞠目し、


「あなたは……!」

「結界で進路を塞げ!」


 エリアスは叫ぶ。直後、彼は結界を構築した魔術師に指示を出す。


「すぐに破壊された結界の再展開を!」


 魔術師達は即座に動く。だが地竜はそれよりも先に攻撃を仕掛けようとして――それを、エリアスが魔力を発することで止めた。

 エリアス自身が気配を発し、注意を引いた。地竜からすれば放たれる気配自体は他の騎士達と大差ないはず。だがそれでも動きを止めたのは、ひとえにエリアスだけが攻撃的な姿勢を見せていたためだ。


 地竜が人間達を威嚇するように、エリアスは目前にいる巨躯へ向け気配を放った。それにより、他よりも目立ったことで地竜は目前に迫る矮小な存在に注目した。

 攻撃対象が他からエリアスに置き換わっただけ――だが、一瞬地竜が動きを止めたことにより、結界の再構築が間に合った。


 途端、地竜を囲む結界が再度展開された。強度はおそらく先ほどと同一。ただこれではまたも地竜に破壊されるだけで終わる。

 そしてエリアスは足を止めない。他の騎士達を差し置いて一番槍を目指そうとするような雰囲気さえあったが――この動きの意図を読めた者は、戦場においてどれだけいただろうか。


 その時、エリアスは再び魔力を発した。結界を挟んで地竜が目前に迫る中、再度相手の目を引くための行動――ではなかった。魔力を発したのは、後方にいる人物への合図だった。

 刹那、戦場に光が生まれた。それは直視すれば目が潰れてしまうのでは、と思うほどの大きさの光であり、放ったのはフレン。生み出した光は太陽の光を忘れさせるほどにまばゆく、騎士や勇者達が何事かと動揺するほどだった。


 次いで、光と共に音が聞こえた。これもフレンによるもので、甲高い金属音めいたもの。ただこれは彼女自身が意図的に発しているわけではなく、巨大な光を生み出す影響で、こうした音が出てしまうだけだ。

 とはいえその二つによって、視界が効かなくなり音で周囲を確認することもできなくなる――戦場においては致命的になりかねない状況だったが、地竜も動かなかった。巨躯は身じろぎなどすることもなかったが、間違いなく光と音を受けて動きを止めた。動揺するほどではないが、視界などが効かなくなることで様子を見る選択を取った。


 その間に、エリアスは――フレンが放った魔法は、数秒程度で消え失せる。一瞬の出来事でありながら、この戦場においてはひどく長い時間だと感じた者もいただろう。

 果たして、この魔法に何の意味があるのか――答えはすぐに出た。聖騎士テルヴァは気付いただろう。先ほどまで地竜へ向け突撃していたエリアスの姿が、消えていることを。


「……なっ――!?」


 そして、すぐにどこにいるのかわかったらしく呻き声をエリアスは上空で耳にした。フレンによるかく乱の光。音さえ発するそれが発動する間にエリアスは地を蹴り、地竜の上へをとった。

 地竜としては手品のように消えたと思ったことだろう――エリアスは地竜と遭遇し、ここまでの時点で目の前の巨躯が視覚や聴覚を頼りに人間の動きを捉えていることを把握。フレンもそれは理解し、光や音によるかく乱が通用するとして、仕掛けた。


 エリアス達の目論見は成功し、地竜は上をとった人間の存在に、気付くことができなかった。


「後は、俺の攻撃がどこまで通用するか……だな」


 エリアスは呟きながら剣を掲げる。着地地点は地竜の頭部。攻撃する寸前に一気に魔力を高め、無防備な相手に一撃を叩き込むつもりだった。

 落下する時間は数秒だが、それでも地竜にはギリギリまで気付かれたくなかった。エリアスはタイミングを見計らい、迫る地竜の頭部を注視し――そして、


「――食らえ!」


 次の瞬間、限界まで魔力を発したエリアスの剣が、地竜の頭部へと叩き込まれた。


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