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中年聖騎士は、気付かぬうちに武を極める  作者: 陽山純樹
第二章

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最前線の聖騎士

 エリアスの視界に入った騎士は、金髪碧眼かつ絵に描いたような美男子。さらに言えばエリアスと同じ聖騎士のペンダントを首に掛けている――エリアスは見たことがない人物ではあった。しかし、当該の人物が聖騎士テルヴァなのだろうと、心の中で察した。


(北部最前線で戦い続ける聖騎士というのは、容姿まで完璧でなければいけないんだな……)


 そんな風に思った――のだが、さすがに容姿までは考慮に入れないか、などとエリアスは自分自身にツッコミを入れた。

 思考を戻すと、いよいよ聖騎士テルヴァが出てきたということは、地竜討伐へ赴くのか――動向を注視していると、聖騎士テルヴァはエリアスがいる方へと歩み寄ってきた。


「勇者ミシェナ」


 そしてエリアスの近くにいた彼女へ声を掛けた。その声音も、芯が通りつつ透き通ったものだった。


「これから討伐へ向かう。共に戦ってくれるか」

「もちろん……勝機はあるの?」

「勝算なく挑むつもりはない……そちらは――」


 テルヴァがエリアスへ目を向けた時、何かに気付いたように、


「……あなたは、最近噂に上る御仁か」

「俺のことは知っているんだな、聖騎士テルヴァ」

「私のことはテルヴァでいい。ここへ来たのは情報収集のためか?」


 問い掛けにエリアスは頷く。すると、


「……共に、地竜討伐に協力してもらうことは?」

「そっちから水を向けるのか……政治的に問題にならないか?」

「私個人の評価が下がるなどどうでもいいし、あなたの不利益にはしない」


 テルヴァはエリアスの言及を斬って捨てるように言った。


「重要なのはいかに犠牲者を出さないか、だ」

「……そちらが要望した、という形であれば参戦することは別に構わない。ただ、犠牲者を少なく……という方針に貢献できるかはわからないぞ」


 そこで、再び咆哮。距離は先ほどと比べ何ら変わっておらず、どうやら地竜は地上に出てきただけで移動していない様子。


「生き延びる人間が少しでも増えるのであれば……手を貸してもらえないだろうか」

「……参戦するのは俺一人か?」

「後方にいる二人の人物も同行して良いのか? という話だな。そこについては問題ない。だが、相手が相手である以上、どうなるかわからない。死を覚悟してもらわなければ」


 エリアスはフレンとジェミーへ視線を移す。二人は同時に小さく頷いた。


「……フレンはまあ、修羅場も経験しているからいいが、ジェミーはどうする?」

「ここへ残れと命令されると思っていたから訊かれるのが意外なくらいだけど……同行していいのかしら?」

「俺は構わない……が、テルヴァが言ったように間違いなく死闘になる。命の危険がかなり近くなるだろう。それでも挑む気があるのなら」


 エリアスの言葉に――ジェミーは少し考えたが、やがて共に行く選択をした。その際、エリアスは一瞬彼女の視線がミシェナに向けられたのを見逃さなかった。


(彼女も戦うから……というわけだな)


 エリアスはならば何も言うまいとこれ以上言及せず、聖騎士テルヴァへ話を戻す。


「俺達は参戦する……作戦は? それと、地竜討伐のためにやってきた騎士や勇者もいるが」

「彼らにはこれから話をする。地竜がいつ動き出すかわからないため、迅速に説得する」

「彼らをどうするんだ?」

「戦う方向へ持って行く……というより、現状ではそれしかない」


(それだけ、戦力的に逼迫しているというわけか)


 北部最前線にいる騎士や勇者だけでは足らない――まさしく、北部全体の戦力、それを結集させた総力戦という形になりそうだった。


「わかった。そちらが話を終えるまで待機しているよ」

「すまない、助力感謝する」


 テルヴァは歩き出す。そして地竜討伐のためにここを訪れた一団と話を始めた。


「……ああいう人が多くなれば、それだけ人的被害も大きくなりそうだけど」


 ジェミーが言う。それにエリアスは同意しつつ、


「たぶん、地竜の動きを制限する役目を頼むんじゃないか?」

「制限?」

「結界などを行使して、地竜の動きをある程度制御、もしくは制限したいと考えているんだろう。地竜は巨体を持っているみたいだし、そんな敵が見境なく暴れ始めたらそれだけで大惨事になる」

「それを防ぐために、彼らに結界などを使わせる役目を?」

「ジェミーは砦の魔術師と連携訓練をしているよな? 普段から訓練していれば練度も上がり結界なども強固になるが、さすがに今回そういった練度を期待するのは難しい。だが、一定の水準を満たした実力者が多重に結界を構築できれば、それだけでも地竜に対抗できる可能性は高まる」

「なるほど、ね……けれど、それって援護要員でしょう? 地竜の討伐を目論む人達が、同意するのかしら?」

「俺がテルヴァの立場なら、結界を維持しつつも、機会があれば横から地竜へ攻撃を仕掛け、討伐していい……という風に説明するな。テルヴァは人的被害を抑えようと動いている。ならば自分の手柄は後回し……とにかく、協力するために色々と説得するはずだ」


 エリアスはテルヴァの様子を見ながら、そう言及した。


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