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中年聖騎士は、気付かぬうちに武を極める  作者: 陽山純樹
第二章

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頼まれ事

 フレンと話をして数日後、エリアスは砦の外へ出て山から離れた町を訪れていた。開拓を行う北部へ向かう玄関口――交易の中心かつ、王都以外で非常に栄えた町の一つであり、そこをエリアスは訪れた。

 目的は観光を兼ねた休暇。ただし、フレンからとある仕事を言い渡されていた。


「むしろ仕事のついでに休んでこい、みたいな感じだよな……」


 呟きつつ、エリアスは町中を歩く。大通りには多数の人がいて、なんだか人疲れしそうなほど。こんな様子で本当に体が休まるのかと思いつつも、エリアスはまず目的を達成しようと、路地に入りとある店へ入った。

 そこは、ポーションを販売する店であった。


「ごめんください」


 ドアを開けつつ店内へ入る。店内は狭く、真正面に受付があった。


「ん、いらっしゃい」


 応じたのは女性。眼鏡を掛けた二十代半ばくらいの、三つ編みの黒髪を持つ人物。


「いくつかポーションを購入したいんだが」

「……身なりからすると、騎士さん?」

「一応そうだ」


 休暇であるため私服――町に溶け込むような服装ではあるのだが、すぐに店員は察した。見破るコツでもあるのかもしれない。


「部下の紹介でここに来た。質の良いポーションがあると」

「それはどうも」


 淡々とした口調で応じる女性――ちなみになぜこの店なのかというと、


『該当のお店のポーション、北部では評判もよく贈り物として重宝します。相応の値段もしますから、情報提供の見返りとして提供すると言えば、色々喋ってくれる人も出てくるかと」


(物で釣る、というのは合理的な方法ではあるし、買ってこいと言われればやるけどな)


 ちなみに、ポーションの購入代金はフレンが用意した物。このお金の出所は、おそらく東部から持ち出してきたものだとエリアスは予想している。


(フレンなら色々言いくるめて、東部からちゃっかり予算の一部を拝借するとかやりそうだしな……東部の面々も餞別だ、持っていきな! くらい絶対に言うし)


 でもバレたら面倒だなと思いつつ、口を滑らせないよう注意しようとエリアスは思う。

 というわけで渡された金貨の入る袋を出しつつ、


「これで買えるだけのポーションを」

「……結構な量になりますね。流石に抱えて持ち帰るのは無理かと」

「それなら、今から言う場所へ輸送してくれ。この店はそういうこともやっていると聞いたんだが」

「わかりました」


 淡々とした雰囲気を変えることなく女性は応じ、エリアスから代金を受け取る。

 場所を聞いた後、彼女はメモを取り宛先などを確認。そこから手続きが少し必要とのことで、エリアスは狭い店内で待つことに。


「……場所からすると、後方支援をやっている方ですか?」


 その時、雑談の体で女性が問い掛けてくる。


「ああ、そうだな。北部の地名はわかるのか?」

「輸送手配などをしているので自然に憶えました。最近、こういった仕事が多いですね」

「北部に人が集まっているみたいだし、その関係かな」

「何かあるんですか?」


(……北部の状況とかは普通の人には非公開なのかな?)


 エリアスは胸中で呟くと、女性へ返答を行う。


「俺は後方支援の人間だから、詳しいことはわからないが物量も多いし、開拓をさらに推し進めるために色々動いているのかも」

「そうですか。私としてはありたがい話ですね」

「あなたみたいな商売をしている人は景気がいいのか?」

「どうでしょうね。ただ、最近羽振りがいい人を見かけることもありますし、もしかしたらそうなのかもしれません」


 応じつつ女性は書類をまとめていく。


「輸送の手配についてはすぐに行います。数日以内には指定した砦に届くと思います」

「わかった、ありがとう」

「後方支援の砦にこれだけの量となったら、本格的に開拓に乗り出すのですか?」

「いや、そういうわけじゃないよ。あくまでこれも後方支援の一環だ」


 返答しつつエリアスは店を出るため背を向けようとする――が、


「あ、すまない。個人的にもいくつか欲しい」

「わかりました、少々お待ちください」


 女性はゴソゴソと手を動かし、数本のポーションを取り出した。


「どうぞ」

「ありがとう……これは君が調合しているのか?」

「私がやっている物もありますが、レシピをする人が他にもいまして、共同でこの店を経営しています。今日は別の人間が作成していますね」

「なるほど、ありがとう……あ、それともう一つ。この町のことをよく知らないんだけど、案内所とかそういう場所を知っているか?」

「それなら――」


 女性はエリアスにいくつか情報を伝える。それを聞いた後にエリアスは「ありがとう」と礼を述べ、


「じゃあ、よろしく頼む」

「はい」


 返事と共にエリアスは外へ出た。


「これで仕事は終わり……後は自由というわけだが」


 周囲を見回す。大通りから路地を一つ入った店でありためか人通りは少ない。だがここからでも大通りの喧噪が聞こえてくる。


「まずは宿探しかな……」


 呟きつつ、エリアスは歩き出した。


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