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中年聖騎士は、気付かぬうちに武を極める  作者: 陽山純樹
第二章

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苦労人

「……複数名最前線から来ると俺は言われていたが」


 エリアスは来訪者である騎士メイルへ向け、話をする。


「君がミシェナと一緒にここに来た、ということでいいのか?」

「はい、魔物が発生しているし単独行動では危険だろう、とのことから」

「なるほど、それでミシェナの速度に追いつけず遅れてやってきた」

「はい、その通りです」


 と、騎士メイルはため息を吐く。


「能力的に差があったことが要因ですね……これでは単独行動と大差ありません」

「彼女は言っても聞かないだろうしなあ……ご苦労様」

「まったくです」


(苦労人、って感じだな)


 エリアスはそう評する。きっと仕事ぶりが評価されて重要な仕事が回されるのだが、その仕事に振り回されてしまう、といったところだろう。


「君は元々最前線にいる騎士なのか?」

「時と場合によります。元々は後方支援役だったのですが、事務的な作業が優秀として、色々と動き回っています」

「……ゴーディン家の人物と一緒にいたり、結構顔は広いみたいだな」

「私としては動き回るより、一つの場所で仕事がしたいのですが」


 と、再び彼女はため息。


「しかし、勇者ミシェナがなぜこのような砦に用があるのか……と最初思ったのですが、あなたがいることが関係しているようですね」

「……魔獣オルダーの討伐で知り合っただけさ」

「かの魔獣に決定打を与えた御仁であることは知っていますよ。先の戦いでその実力が相当なものであることはしっかり確認できましたし……次に戦う脅威も、あなたの手で倒しますか?」

「俺はこの砦に所属している身だ。それを決めるのは俺の判断ではなくて、あくまで上の人が決めることだ」


 エリアスの返答に騎士メイルは「なるほど」と応じる。


「反骨心があるわけではなさそうですね」

「別に北部最前線に行きたいと我が儘を言ったところで誰も聞く耳持たないだろうしな。変に我を通すより、目立たないように活動していた方がよっぽどいい」

「そうですか」


 彼女が返答をした時、その視線が砦の入口へ。エリアスがそちらへ向くと、外にミシェナが出てきていた。


「フレンさんと話をすることになったんだけど、せっかくだからエリアスも付き合って」

「はいはい、わかったよ……ジェミーはどうする?」

「同席するわ」

「あ、私も行っていいですか?」


 騎士メイルもまた声を上げる。エリアスは「構わない」と応じつつ、


「とはいっても、この面子だとどういう話になるのか……」

「前回の魔物討伐について詳細をあなたが話せばいいのでは?」


 ジェミーが言う。エリアスはそれに対し頭をかきつつ、


「話すといっても五分で終わる程度の内容だぞ……」

「ミシェナにとってはその五分の話が聞きたいのでしょう」

「……それで納得するのか? まあいいや、ひとまず話をするか……仮に一時間くらい熱弁しろと言われたら、遠慮なく逃げるぞ」


 そう言いつつ、エリアスはミシェナの手招きに応じ、砦へと足を向けた。






 エリアス達は会議室に入って話し合いを行うことに――ちなみにこの時点でエリアスは自分以外全員女性であることに気付いた。


(……まあ別に気にすることはないか)


 そんな考えの中で話し合いが始まったが――エリアスとしては本当にものの五分程度で説明が終わり、さっさと解散してしまうのではと考えたのだが、


「一つ、聞きたいのだけれど」


 と、ミシェナが質問を投げかけた。


「危険度としては三くらいはあったという解釈でいいの?」

「あくまで感じられた魔力量では、だな。実際のところは色々と基準もあるだろうから、確実なところは不明だ」

「……メイルはどう思う?」

「私の肌感覚で言えば、危険度三は間違いなくあったかと」

「そう……で、エリアスはそれを一撃と」

「なんか引っ掛かる物言いだな……」

「私としては、それだけの実力があるならさっさと最前線に来て剣を振るってよ、とか言いたいのだけど」

「それは、開拓が効率良く進むから?」

「そう。聖騎士テルヴァだって同じ事を思うよ」

「……最前線で戦い続ける聖騎士の名だな。彼と会ったのか?」

「幾度か一緒に仕事を。間近で見ていてこれが聖騎士の中の聖騎士か、と思ったよ」


(……彼女がそうまで言うのであれば、本物なんだろうな)


 エリアスはそう考えつつ、


「ミシェナがそういう風に言うのはもっともかもしれないけど、北部の開拓には政治的な要素もかなり混ざっている。強い人間が最前線に、というのは至極まっとうな意見ではあるが、この場所はそれだけで全てが決まるような場所じゃない」

「うーん……立場的な問題かあ」

「どうこうする気はないのですか?」


 これは騎士メイルからの質問。エリアスは彼女を見返すと、


「俺は俺なりに目的はある……それには、より政治的な意味合いで地位を向上させる必要があるんだが……強引にやったら反発もあるだろう。俺としてはあんまり貴族とかににらまれるのは避けたいし、ゆっくりやっている」

「なるほど……」


 メイルは口元に手を当て考え込む。何を悩んでいるのかとエリアスが眉をひそめた時、彼女がおもむろに口を開いた。


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