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中年聖騎士は、気付かぬうちに武を極める  作者: 陽山純樹
第二章

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救援へ

「状況はどうなっている?」


 ノークはエリアスへと尋ねる。騎士が入ってきたことに気付き、彼もまた外に出てきたらしい。

 エリアスはそこで説明を加える。すると、


「わかった、エリアス殿は確認のために動いてくれ」

「……よろしいのですか?」


 自分が動くことはノークの背後にいる人間にとっては都合が悪いのでは――そう思ったのだが、


「該当の場所は、そこまでこの砦から離れているわけではないだろう? どうやら緊急事態のようだし、確認はしておくべきだ」


 その顔には、騎士としての責務を果たそうとする様子が見て取れた。


「……わかりました」


 エリアスは承諾すると駆け込んできた騎士へ尋ねる。


「怪我人などはいるのか?」

「魔物の発生したタイミングで救援を、と言われここに来ました。他の砦にも向かっている騎士はいますが、現状ではどうなっているか」

「急いだ方がよさそうだ……ノーク殿、怪我人のことを考えると多少人員を割く必要がありますが」

「構わない」


 ノークが返答。それでエリアスは決断した。


「ルーク、レイナ、フレン、そしてジェミー。四人は俺に随伴し、調査隊の救援に向かう。魔物と遭遇した場合、交戦するのは俺達だ」


 その言葉に近くにいたルークやレイナの顔に緊張が走る。


「二人は騎士を数人選抜し、行動を共にしてくれ。もし怪我人がいたら騎士と共に安全な場所まで運んでくれ」

「戦闘には参加しないのですか?」


 尋ねたのはルークで、エリアスは一考した後に返答する。


「それは状況次第としか言えない……が、ルークとレイナ以外は戦闘経験がほとんどないから無理はしたくない。最優先は状況を確認することと、騎士が負傷していたら一刻も早く戦場から離脱させることだ……二人とも、手早く作業を始めてくれ」


 その言葉にルーク達は頷き、騎士達に声を掛ける。次いでエリアスは、


「フレン、状況に応じて伝令をやって欲しい」

「わかりました。とはいえ、魔物が出現しているのであれば、私一人で動くのは危険かもしれませんが」

「そこも道中の状況で考える。とにかく、現場がどうなっているかわからない以上、備えておくべきだ……そしてジェミー」


 エリアスは話の矛先をジェミーへ。


「信頼できる魔術師を一人呼び、状況に応じて動けるようにしてくれ」

「わかったわ」

「あと、ノーク殿。魔物が山中にうろついている可能性もありますから、砦の門は閉めておいてください」

「うむ、気をつけろ」


 エリアスは頷き、騎士達へ指示した。


「五分後には砦を出る。緊急事態だ、全員、気を引き締めてくれ――」






 エリアスは言葉通り五分後には砦を出た。伝令役の騎士も同行し、彼を先頭にして進んでいく。

 その道中でエリアスは先導する騎士へと質問を行う。


「調査を行った騎士達の詳細はわかるか?」

「現場を主導していたのはゴーディン家の依頼により調査を請け負った騎士と勇者です。全部で十人ほどで隊を形成していました」


 エリアスはここでフレンへ首を向ける。ゴーディン家、という家柄がわかるかという無言の問い掛けだったのだが、彼女は、


「……政治的にも王都では影響力の高い一族です。新興勢力の部類に入りますが、聖騎士を輩出しています」

「武により発展してきたというわけか……そんな彼らは、北部では活動していなかったのか?」

「元々ルーンデル王国南部で興った一族なので、北部にはそれほど影響力はなかったようですね」

「なるほど、今回の魔獣討伐を契機に、開拓最前線でも自分達の影響力を強めようとしたわけか」


 エリアスは納得するように声を上げた後、先導する騎士へさらに質問を行う。


「現場のリーダーは誰になる?」

「騎士ジェインです。ゴーディン家の嫡男であり、調査隊を率いる方です」

「一族からリーダーを出している……か」

「次の聖騎士候補と呼ばれている方ですね」


 と、フレンは捕捉するようにエリアスへと告げる。


「何ならエリアスさんが授与される際に、彼が選ばれていてもおかしくなかったと」

「……俺が行くことで騒動にならないか?」

「緊急事態ですし、大丈夫だと思いますが……」

「その他に、ジェイン殿と戦う騎士が隊の統率をしています」


 と、さらに先導する騎士はエリアスへと語る。


「名前はメイル=ナデット。女性で、調査のためにゴーディン家より依頼された北部の騎士で、彼女が案内役を務めていました」

「ふむ、戦況などを確認する場合は騎士メイルへと尋ねるのが最適か? いや、さすがに一度リーダーに話を通すべきか」


 そこまで言った時、エリアスの口が止まった。


「……こんなことを悩むような余裕、ないかもしれないな」

「え?」


 エリアスの不穏な呟きに先導する騎士は声を上げる。

 その直後、魔物の雄叫びが聞こえてきた。その声は一体どういう意味を持つのか。


「さらに急いだ方がよさそうだな……索敵しつつ進もう。ジェミー、俺は進行方向を探るから、側面を確認してくれないか?」

「わかったわ。彼女と二人でやる」


 ジェミーは同行する女性魔術師に視線を送りながら応じた。そしてエリアス達は索敵魔法を行使しつつ――現場へと急いだ。


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