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中年聖騎士は、気付かぬうちに武を極める  作者: 陽山純樹
第二章

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政治的な要素

 エリアスはノークと話を終えて部屋を出る。結局連携を強化していくという結論だけで、他は色々と悩みながら模索していくということになった。


「――エリアスさん」


 ふいに名が呼ばれる。目を向けるとフレンが立っていた。


「一通り情報が集まりましたので、その報告に」

「わかった。俺の部屋で聞くよ」


 エリアスは部屋へ戻り、フレンから報告を聞く。


「まず、北部の情勢から。現在開拓最前線に多数の勇者がいる状況ですが、前線以外にも貴族の動きによって集結した勇者や騎士が多数います」

「むしろ、人が多すぎるようにも思えるが……」

「はい、そこは私も同感です。まだ国側としては残る脅威について討伐をすると表明したわけではないのですが……貴族達はずいぶんと気が早い」

「討伐が決まった時点で動き出しても遅い、ということなんだろうけど……どこかの貴族が動き出したから自分も、みたいな形で動いている可能性が高そうだな」

「かもしれませんね……その中で、元々最前線で戦っていた聖騎士などは、今回の件に関して良くは思っていないようです」

「それは当然だろう。討伐が決まってもないのに戦力だけ向けられてもなあ」


 エリアスは小さくため息を吐きながらフレンへと応じる。


「ノーク殿も言っていたが、下手に人を動かせば何かあるのではないか、などと疑われるような始末だ。当面この状態は……少なくとも、国が結論を出すまではそのままだろうな」

「これはこれで北部の情勢としては厄介ですね……そもそも、人が多くなればなるほど当然ながら人同士のトラブルは多くなりますし」

「というか、もう既に発生しているんじゃないか?」


 その問い掛けにフレンは一度沈黙する――何かしら知っているようで、


「詳細はわかりませんが、実際最前線の騎士と討伐のためにやってきた騎士が小競り合いをしたみたいです」

「その内、どこかで喧嘩になるぞ……」

「はい、危険な状態であるのは間違いない……ですが、人を派遣した貴族も引き下がるつもりはないのでしょう……もしかすると今回の討伐を契機に、自身の息が掛かった存在を開拓最前線へ、と画策している可能性がありますね」

「間違いなくそれが目的だろ……政治的な要素が絡むと本当、面倒になるな」


 エリアスは言いつつも、思考は前を向く。


「ま、嘆いていても仕方がない……俺達は訓練を行うことによって戦力強化しているわけだが、その辺りの話はどうだ?」

「魔物が出現したことで危機感を持っている、という認識であるのは間違いないようで、この砦の活動を耳に入れている人も多いようです。しかし最前線まで来ようなどと考えているわけではないと、これまで開拓をしている北部の面々はわかっている」

「嫌な言い方だな……つまり、これまで北部にいなかった人間、つまり討伐があると聞いてやってきた騎士や勇者はそうではないと」

「あくまで可能性の話です。彼らは情報を秘匿している面もあり、あまり多く情報を手に入れることができないので……」

「手の内を晒すことはしない、か。警戒するのは無理もないが、確かに下手に干渉すると面倒事を引き起こしそうだな」


 エリアスは言うと、どうすべきか思案し始める。


「ひとまず討伐を行うと国が表明するまでは、表立った動きはないだろう。よって、彼らのことはひとまず無視で頼む」

「よろしいのですか?」

「というよりそれ以外に方法はない。彼らの情報を得ようとすれば逆に警戒される可能性もあるし、穏当な動き方をしよう」

「わかりました……対する私達は――」

「戦力強化を行っているにしろ、この砦が従来持っていた戦力を踏まえれば、最前線まで来ることはないと考えるとは思うんだが……まあここは実際に最前線へ行かない、という行動で証明をすればいいよ。実際、ノーク殿もそこまで踏み込んだ行動はしないと考えているし」

「砦の周辺で活動していれば目を付けられることはないと」

「ああ、そう思いたい」


 エリアスは頭をかく――場合によっては貴族の息が掛かった騎士や勇者が、この砦を訪れる可能性もある。その場合、どう応じるべきか――ただここは、ノークが対応することになる。


「ま、実際にそういった人間がやってきたら、ノーク殿がどう対応するか……だな。俺が出るよりノーク殿に動いてもらった方がいいだろう」

「そうですね……当面は戦力強化を引き続き行う、という方針ですか?」

「ああ、実戦経験を積むのが難しい点が問題ではあるが、こればかりは仕方がない。とにかく、名前がある魔物を倒せるほどではないにしろ、俺なんかがいなくても対応できるくらいには、強くなって欲しいな」

「わかりました……では、北部最前線の情勢について、お伝えしようかと思います」

「わかった」


 エリアスはここからが本題だ、という心境を抱きつつ、フレンの報告に耳を傾けた。


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