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中年聖騎士は、気付かぬうちに武を極める  作者: 陽山純樹
第二章

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夜の会話

 時刻は夜を迎え、エリアス達は火を囲みながら食事をすることに。空気は和やかであり、談笑も交え魔物も出てくることなく平和だった。

 エリアスは集った者達を見回す。ジェミーは同行した女性魔術師と話をしており、ルークとレイナの二人も明日に備えてか色々と話し込んでいる。残る騎士と兵士も笑っているところを見ると、人間関係は悪くない様子。


 その中でフレンは黙々と食事をしている。しかし時折ジェミーなどに声を掛けられると、それに応じて作業の手を止め話をする。


(……交流という面でも、今回の討伐は良いものになったな)


 エリアスはそう思いつつ、今後どうするか思案する。

 討伐についてはおそらく問題はない。その後、自信をつけたルーク達と共に当面は魔物討伐に勤しむべきか。


(でも、他にこうした魔物がいるのかもわからないし……より調査範囲を広くして魔物を見つけるか?)


 そんなことを思ったが、さすがにそれはやり過ぎか、などと思ったりもする。


(ま、討伐が終わった後、考えるか)


「――エリアスさん」


 結論を出した時、ルークが声を掛けてきた。


「魔物討伐後の話なんですが」

「ああ、どうした?」

「今回の討伐、非常に良い経験となりました。今後も訓練などについて、指導して頂きたいんですが……」

「ああ、それは構わないよ。ただ、そうだな……最終目標を決めるか」

「目標ですか?」

「というより、仕事をしていて自分としてこうありたい、と思うこともあるだろう……ルークは、どういう騎士になりたいんだ? 開拓最前線で活躍する騎士か? それとも、ノーク殿のように軍略を行う存在か?」


 エリアスの質問にルークは押し黙った。今はただ実力を高めることに集中し、将来のことまで考えが至っていない様子だった。


「……難しいですね。でも、魔物を倒せたという事実から、平和のため、秩序維持のために剣を振るっていくべきだと思っていますが」

「わかった、ルークが今後どういう騎士になりたいのかは時間を掛けて見つけ出すとして、まずは実力を高めるところから、だな。魔物を倒せる能力がある、という事実があれば、北部における昇進も早くなるだろうし、やりたいことができる可能性も増えるからな」

「わかりました。ありがとうございます」

「礼はいいさ。開拓を進める……それはルーンデル王国の方針だ。それには騎士一人一人が強くなることが重要……つまり、俺は国の方針に従っているだけさ」


 ――ただ、とエリアスは思う。政治的な要素が色々あって、問題も多数ある。


 実力だけでのし上がれるような世界ではないことも、また事実。ただこの辺りのことはどうにもできず、ルーク達に注意することくらいしかできないのだが。


「……私も」


 と、ここでレイナが声を上げた。


「私も同じように訓練に参加していいですか?」

「ああ、問題ない。君の方もルークと似たような考えらしいな」

「将来どうするかなんて想像もできませんが、今は魔物を倒せる力を得る……それが何よりも重要だと思ったので」

「なら、砦に戻ったら少しばかり気合いを入れて訓練をしようか」

「あ、それなら俺達も」


 と、今度は新米騎士が手を上げた。


「魔物討伐できる実力はないですけど、俺達も強くなりたいんです」

「……俺としては大丈夫だけど、さすがに人数が多くなりすぎると指導も難しくなるな」

「根本的に人が足りていませんね」


 ここでフレンが言及。


「エリアスさんだけで全て解決できる問題ではない……いっそのこと、もう一人くらい東部から見知った人物を引き抜いてもいいかもしれません」

「……なるほど、考えておくか」


(東部の状況を説明すれば、手を貸してもらえる人間は多数いるだろうしな)


 そう思った時、全員食事を終えた。そこでエリアスは山の方角へ視線を向け、


「魔物が動き出す気配はない……ここは予定通り交代で見張りといこう。ただジェミーは部外者だから、寝てて良いぞ」

「私も見張りくらいなら手を貸すけれど……」

「まあまあ、明日の戦いで貢献してくれればいいさ。ルーク達の援護要員として、頼りにしてるぞ」

「そう……ならお言葉に甘えさせてもらうわ」


 ここで彼女はエリアスを見返し、


「一つ質問なのだけれど、この仕事が終わって以降の予定はないのかしら?」

「魔物の調査とか? 残念ながら現時点では未定だな」

「そう……」

「何か気になることが?」

「いえ、あなたの魔法……索敵魔法などにも興味はあるし、色々と話を聞きたいと思って」

「……うーん、さすがに仕事でない限り君を砦に入れるというのは難しいしなあ……」

「指導者、という立場なら可能かもしれませんが」


 と、フレンの言葉。どういうことかとエリアスが目を向けると、


「砦にいる魔術師についても戦力強化をしたい……というのであれば、彼女はかなり優秀ではないかと思います」

「あら、評価してくれるのね」

「問題は、認めてくれるかどうかですが……」

「ノーク殿に話を通さないといけないからな……」


 エリアスは女性魔術師に目を向け、


「君としても教えて欲しいことはありそうだな」

「そうですね」

「……ジェミー、前向きに考えるけど、あまり過度な期待はしないでくれよ」

「ええ、わかったわ」


 エリアスの返答に、ジェミーは笑みを浮かべたのだった。


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