表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
中年聖騎士は、気付かぬうちに武を極める  作者: 陽山純樹
第一章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

34/179

魔獣との対峙

 魔獣オルダーの動きをエリアスが捉え、フレンに指示を送り彼女は協力者へ罠の場所を通達する――そうして行動し始めた段階で魔獣側も動きを活発にさせた。一度騎士達が交戦をしたためか、オルダーは包囲を脱出しようとするような行動をとっているようで、周辺の騎士達が伝令により逃がさないよう動き回っている。

 そうした中でエリアスは地図などを確認しつつ、罠の設置を終える。


「一応、オルダーが通りそうだというポイントに罠は設置できたかな」

「でも、逃がさないよう騎士が動き回っている。望み通り来てくれるかは微妙よね」


 ミシェナが言う。エリアスはそれに同意しつつ、


「けど、策が成功する確率は上がった……さて、俺達も移動しよう。騎士達は動き回っているし、今なら誰かに見咎められる危険性も低い」

「エリアスさん」


 そこで、フレンが話し掛けてきた。


「魔獣オルダーと交戦した詳細が判明しました。魔法による集中攻撃によって一度は押し切ろうとしたようですが、強固な皮膚によって防がれ、動きを鈍らせたにしろ取り逃がしてしまった」

「……たぶん、魔法による攻撃で動きを止めてから、接近戦で勝負を決めようとしたんだろうな」

「おそらくは」

「国側としては、どうやって仕留めるために動きを止めるかに苦心したわけだ。俺もその戦い方には賛成だし、採用した罠も動きを縫い止めるものだから発想は同じだな」

「罠、成功するかな?」


 ミシェナが呟く。そこでエリアスは、


「ちゃんと成功してくれないと困る……が、どうなるかはわからない。もし拘束できなかったら、おとなしく逃げることにするか」

「うん、了解」


 エリアス達は移動を開始する。魔獣オルダーの現在地点から、ここに来るかもしれないという罠を設置したポイントへ向かう。


「状況は流動的だ。もし魔獣オルダーの動き方が変わったら、罠なんかも再設置するぞ」

「うん、わかった」

「フレンはそれに備えておいてくれ」

「はい」


 指示に二人の返事を聞いた時、エリアスは罠を設置したポイントへ辿り着いた。木々が途切れ、少し開けた空間。おそらく落雷などによって木々が焼失したのだろう――空間の端には、倒れた樹木があった。


 一度周囲を確認した時、エリアスは森の奥から禍々しい気配を察知する。


「……大当たりだな」

「魔獣、オルダー」


 ミシェナが呟く。次いで、周辺の森から人の声が聞こえ始めた。

 やがて他の騎士や勇者も来る――これで進路変更する可能性はあったが、どうやら向かってくるのは変わらないらしく、


「最前線にいた騎士や勇者なんかはまだここまで来ていない……援軍が来ても、突破できるという自信があるのかもしれないな」

「エリアス、ここで迎え撃つ?」

「ああ、ミシェナはどう立ち回る?」

「私は少し引いた位置で迎え撃つ。まだオルダーの力をその目で確認したわけじゃないから、一度見ておきたい」

「なるほど、わかった……ただそれなら一つ、言っておきたいことがある」

「何?」


 聞き返したミシェナに対しエリアスは笑みを浮かべながら、告げた。


「そちらが様子見している間に仕留めても、文句は言わないでくれよ」

「わかってる。なら、お手並み拝見といこうかな」


 そうしたやりとりをした直後、森から騎士や戦士がやってくる。そして禍々しい気配に気付いたか声を上げ襲来に備えるべく動き出す。


(……罠は、魔獣オルダーの魔力に触れたら発動するようになっている。魔物の特性を持つ存在にのみ通用するよう調整したから、この場が荒らされても魔獣オルダーが踏めば発動する)


 そうエリアスは思い返しつつ、徐々に迫ってくるオルダーの気配を捉える。


(問題は、設置した罠でどれだけの時間を拘束できるのか……だな。数秒程度の余裕があればいいが、そうでない場合は――)


 胸中で呟く間に、いよいよ魔獣オルダーの姿を肉眼で捉えた。その瞬間、周辺にいた騎士や戦士は立ち止まり、武器を構える。

 明らかに待ち伏せされている状況だが、魔獣オルダーの進行方向は変わらなかった。この場を突破する――包囲が狭まっている状況で、魔獣はこの場所が手薄と判断したのだろう、とエリアスは考える。


(援軍は来たけど、それでも人数的に足らないとか……かな? だとするなら、ここに俺がいるのは魔獣にとって想定外かもしれないな)


「総員! 戦闘態勢へ!」


 騎士の誰かが叫んだ。それにより多くの人間が魔力を発し、魔獣オルダーを討伐するための最終準備が整った。

 その光景を見ながら、エリアスはさらに作戦を立てる。


(オルダーは移動能力により強引に突破を試みる……か? それなら罠が作動し動きを止めることができるかもしれない。失敗した場合は周辺にいる騎士達を守るために立ち回る必要性があるな)


 最悪の想定も考慮に入れた時、魔獣オルダーが加速した。エリアスの目には魔獣の脚に魔力が集まったのを見て取り、来る――と直感した。

 同時、エリアスは剣に魔力を集める。加えて、オルダーが迫る方向を完璧に理解した。


 魔獣オルダーが進むその先に――事前に仕込んだ罠が確かに存在し、エリアスは最後に心の中で呟いた。


(勝機は――ほんの一瞬だ!)


 刹那、魔獣オルダーがエリアス達と同じ空間へと到達した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ