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中年聖騎士は、気付かぬうちに武を極める  作者: 陽山純樹
第三章

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召喚命令

 ノウェト公爵の結果が出たのは、さらに一ヶ月が経過した時だった。


 結末については、公爵の完全敗北。様々な証拠が並べられた結果言い逃れできなくなり、彼は失脚という形となった。

 なおかつ、彼の一族については彼を犠牲にすることでどうにか生きながらえるという方針をとった――非情な話ではあるのだが、政治闘争である以上、下手に庇い立てれば自分達にも大きな影響が出てしまう――ということらしかった。


 そして王都内では騒動が吹き荒れた。重臣の一人が国家を脅かすような研究をしていた点。それに加え、東部では実際に被害も出ている――様々な憶測すらも流れ、混乱が収束するのは時間が掛かりそうだった。


 ただ、その最中にエリアスにとって良い方向へ進んだ点もあった。本来エリアスは発言力を得て東部の状況を語ることを大きな目標としていた。だが、エリアス自身が動く必要がなくなった。

 なぜか――ノウェト公爵が東部の情勢に関して王都へ情報が届かないように画策していたとわかったためだ。それは生み出した人の形をした魔物――ロージスを実験するためであり、この事実を踏まえ国は東部の状況などを詳しく聞くために動いたらしい。


 その結果、東部では連携を駆使して危険度の高い魔物も倒せている――そういった事実が王都に広まり、それを開拓に使えないかと、色々考え始めたらしい。


「あなたの目論見は、王都側が動いたことでご破算になった……まあ、良い意味ではあるのだが」


 そうテルヴァは一日の成果を報告しに来たエリアスに対し告げた。


「今後、東部の騎士達が開拓の最前線へ異動になる可能性があるらしい。無論、馴染めるかどうか不安もあるわけだが、東部で戦い続けていたあなたがいれば、混乱も少ないだろうと」

「なるほど……東部の面々が来るのは純粋に嬉しいな。ああ、別に性格に難があるような人材はほぼいないし、問題児が来ても俺がどうにかするから心配しなくていい」

「頼もしい限りだ……とはいえ、北部最前線の仕事は地味だからな。つまらないと不満を言われるかもしれないが」

「東部だって人間の領域にやってくる魔物を迎え撃っているだけだ。仕事内容的に開拓以外は魔物の領域に対する監視だし、そんなにやっていることは変わらないから問題はないさ」


 そう応じたエリアスは、小さく肩をすくめた。


「俺については……召喚命令とか来ていたりするか?」

「ああ、そこについて連絡がある。国は交戦した人の姿をした魔物について、色々情報を知りたいらしい。今後開拓で同様の魔物が出る確率は低いが……記録はしっかりと残しておきたいらしい」

「わかった。それには応じる……が、北部には戻ってくるぞ」

「東部から人が来るのであればそれが望ましい……まあ、国側としてもあなたを王都に留めるようなことはしないだろう」


 テルヴァはそう言った後、小さく息をついた。


「私達は淡々と開拓を進めているが、おそらく王都側は相当な変化を強いられる……影響が出ないよう尽力するつもりだが、もしかすると人事なども何かしら影響があるかもしれない」

「あなたがこの砦を去るとか?」


 エリアスの問いにテルヴァは「どうかな」と応じた。


「現段階ではまったくわからない……まあ、北部の開拓に成功している以上、無理矢理人事に介入して混乱を引き起こすようなことはしないだろう」

「であれば理想的だが……俺は召喚命令が来るまで待つってことでいいか?」

「ああ、それで構わない」


 ――報告は終了し、エリアスは部屋を出た。一つの戦いに決着がついた。とはいえ、ノウェト公爵の結末を直接したわけではないため、自覚は薄い。


「……ま、戦いに決着がついた。全部終わったと東部に一度墓参りでも行くかな」


 ロージスを相手に散っていった仲間達。それを思い出し、ちゃんと報告はしないと、と考える。


「フレンにも伝えるかな……これで当初の目標は達成。残っているのは武を極めるという本来の目標だが――」


 エリアスはそこで立ち止まる。少しの間、沈黙し――やがて、再び歩き始めた。

 部屋へ戻ろうとしたのだが、その途中でフレンと顔を合わせる。


「あ、エリアスさん」

「フレン、王都の情勢は耳に入っているか?」

「はい、ある程度は」

「そうか……いずれロージスに関しての報告を行うため王都へ向かうかもしれない」

「わかりました」


 そこで、エリアスは沈黙した。突然無言となったためフレンは眉をひそめ、


「どうしましたか?」

「……フレン、少し話をしたいんだが。いいか?」

「はい」


 明瞭な返事にエリアスは歩き出す。そうして進んだ先は、砦の城壁上だった。

 見張りの騎士がいる中で、エリアスは周囲を見回す。時刻は夕刻で、いよいよ日が沈みそうな中、世界は茜色に染まっていた。


 そうした中、エリアスは声を発さない。フレンはどうやら言葉を待つ構えで、何も喋らず――およそ一分ほど経過した後、エリアスは口を開いた。


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