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中年聖騎士は、気付かぬうちに武を極める  作者: 陽山純樹
第三章

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報告と要求

 その日の作業を全て終え、エリアス達は砦へと帰還。その足でエリアスはテルヴァの部屋へ赴き報告を行う。


「魔物の襲撃はあったが、怪我人もなく迎撃できた」

「そうか……霊木の主は人数が多くなったことで対応したわけか」

「戦術についても前回とは違っていた……が、前の時は敵わないと思った時点で魔物は退却していたが、今回は殲滅だ。もちろん、生成した魔物全てを投入したかは不明だが」

「……何かしら、考えがあるようだな」


 テルヴァの言葉に対しエリアスは小さく頷いた。


「魔物は目論見通り来たし、討伐隊の実力も確認し各々の動きについてもある程度把握した。こちらのやりたいことは全てできたんだが……前回の戦いでは霊木の主は斥候として小さな魔物を用いてこちらのことを観察していた。しかし、今回は分析もなく突然襲撃してきた」

「そこが気になっているというわけか」

「ああ、俺としては何かしらアクションがあって、多少なりともこちらの調査をした上で攻撃してくるものだと考えていたが……」

「これまでのことを考えると、何もなしにただ魔物を動かしてむざむざとやられているという形は変だと……こちらの動きから魔物の領域へ踏み込んでくることを見越し、罠を張っていると考えたのか」

「そんなところだ」

「……微妙ではあるが、不自然な点が多いのは理解できる……だが、それでも進むのだな?」


 テルヴァの問いにエリアスは頷いた。


「ああ、リスクはあるが倒した魔物は相当な数だった。好機なのは間違いない」

「……開拓最前線には護衛部隊も配置する。索敵も継続的に行うことにする。開拓に従事している者達を援護に回すことはしないつもりだが、危機的状況になったら――」

「いや、さすがに他の人間を魔物の領域へ向かわせるのはやめてくれ。二次被害が出る危険性が極めて高い。護衛はあくまでバート達を守るために、使ってくれ」


 エリアスの提言にテルヴァは何か言いたそうにしたが――やがて、頷いた。


「あなたの言葉に従おう……報告はこれで以上か?」

「いや、もう一つ……開拓を行う際に用いる結界魔法だが、あれって種類は一つしかないのか?」

「種類?」

「例えば、範囲を広くするとか、あるいは瘴気を大きく薄める効果があるとか……」

「ああ、そういう話か。この北部を開拓し始めた時は、様々な魔物がいたため、色々と結界魔法も種類があったみたいだが、現在では統一されている。それは今の結界魔法が最も効率的かつ、種類を一つに絞った方が習得も容易いためだ」


 そこまで言うと、テルヴァは腕組みをしながら続ける。


「中には大地の力を利用し広範囲に結界を構築する手法もあった。しかし、その準備には様々なものが必要だったこともあり、非効率的だと判断し今では使われていない」

「そうした結界魔法だが、資料とかはあるか?」

「……資料室にあったはずだが、何かあるのか?」

「いや、敵が罠を張って待ち受けているなら、こちらもやれるだけのことをやろうと思っただけだ……それと、魔石は砦内にあるか? 魔物の領域でも魔法が使えるように、魔力を大いに貯め込んだ物が欲しいんだが」

「霊木へ向かう際に使用するのか? 純度の高い物もあるし、必要分だけ持ち出して構わない」

「ありがとう、助かる」


 ――それで会話は終わり、エリアスは部屋を出た。そしてフレンを探し、程なくして廊下で遭遇した。


「フレン、一緒に資料室へ来てもらえないか?」

「何か調べものですか?」

「ああ。霊木の主との戦いだが――」


 エリアスが内容を語ると、フレンは「なるほど」と応じ、


「明日討伐開始ですが、資料があればすぐに対応できるかと思います」

「悪いな、ギリギリになってしまって」

「いえ、色々と対応策を講じていて、道具なども用意していましたが……エリアスさんの案も一つの手法として準備しておきたいですね」

「明日の討伐には間に合いそうか?」

「エリアスさんの内容については問題ありません。他の準備も……おそらく大丈夫でしょう」

「最後の最後で忙しくさせてしまったな」

「私は後方支援しかできませんし、このくらいの無茶はさせていただきますよ」


 そう述べたフレンを引き連れ、エリアスは資料室へと向かうことに。


「エリアスさん、色々と懸念しているようですが……」

「不確定要素が色々とある感じだな。とはいえ、今回の案が上手くいけば……罠があったとしても、多少なりとも対抗できるとは思うし、懸念は完全とまではいかないにしろ、ある程度は払拭できると思う」

「そうであれば何よりです……もっとも、資料探しに時間を食うかもしれませんが」

「俺も手伝うし、二人でなんとか……」

「エリアスさん、資料整理とか苦手ですし、無理はしなくても良いのでは?」

「いやいや、さすがに言い出したのは俺だし、少しは手伝わないと」


 そう言いつつ、確かにあまりこういうことをした経験はないな、とエリアスは思う。決戦を前にして、少なからず感情が高ぶっているのかもしれない――そんな風にも感じた。


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