表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
中年聖騎士は、気付かぬうちに武を極める  作者: 陽山純樹
第三章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

156/179

勝利条件

 決闘を行った翌朝から、エリアスが指揮官となって討伐へ向けて訓練を始めた。といっても個々に能力が高い者達が集まっているため、やることとしては連携の確認と、どのように隊が動くのか、という方針決めなどであった。


「……というわけで、この三人はそういう形で動いてくれ」


 エリアスの指示により、騎士三名は小さく頷き承諾。事前に渡された隊員のリストを参考に、エリアスは各々の役割を決め、連携を確認していく。

 基本的には共同で作戦を行ったことがある面子を組ませ、少しでもやりやすいようにする。北部で仕事をしている者達は親交があったりするため、想定以上に連携については上手くやれそうな雰囲気となっていった。


(ひとまず、俺の指示で不和が起きているようなこともなさそうだし……)


 決闘を行ったことが効いたか、反発するような人間もいない。中には「こうした方がいい」という意見を出した者はいたが、それもエリアスの能力を疑っているわけではなく、エリアス自身の方針に従い、生存率を上げるために色々と打診をしているという形だった。


(この中に『ロージェス』と関わっている人間がいたとしても……なんとか対応できるよう立ち回れそうだな)


 エリアスは頭の中で色々と算段を立てる。とはいえ、話をしてみた感じ直接的に『ロージェス』とやりとりをしているような雰囲気の人物はいない。


(まあノウェト公爵と縁があって、彼から色々指示を出されている、みたいな可能性はあるな……それは結果的に『ロージェス』にとって利になる指示だったとしても、その人物には自覚がない)


 ただ、そこまで考慮に入れようとすると、さすがに隊としての動が歪んでしまう――


(完璧に対策はできないが、とりあえずどうあっても立ち回れるようにはできそうだし、これでやるしかないか)


「……上手くいきそうか?」


 後方からテルヴァの声。振り返ると、討伐隊の面々を見据える彼の姿があった。


「少し様子を見に来たが……昨日の決闘が効いているようで、喧嘩をするようなこともなさそうだな」

「俺としては非常にありがたいな……魔物の領域へ向かう日までこの調子でいてくれると助かるんだが」

「砦に滞在している間は、問題がないよう私が取り計らおう」

「本当か? 助かるよ」


 そこでエリアスは勇者オルレイトへ目を向けた。


「勇者オルレイトと知り合いらしいな?」

「ああ、そこは報告をしていなくて申し訳ない。実のところ、彼が本当に来るのかは不明であったため、さすがに語ることはできなかった」

「いや、そこは問題ないさ……知り合いというのなら、顔を合わせないのか?」

「昨日の段階で彼から挨拶にやってきたからな」

「そうか」

「……彼の助力があれば、犠牲なく討伐を果たせそうか?」


 テルヴァからの問い掛けに対し、エリアスは一時沈黙した。


「その表情だと、厳しいという回答か」

「魔物の領域では何が起こるかわからない。例え人間における最強格が味方でも、断言することはできないな……ただ、大きな助けになるのは事実だ」

「彼には何か役割を持たせるか?」

「色々話し合ったんだが、さすがにネームバリューがあって他の人が言うことを聞くにしても、指揮能力などはないと語っていた。よって、最前線で遊撃として動いてもらうことにした」

「そうか……彼の実力は知っての通りだ。私自身の縁で半ば無理矢理呼んだが、討伐を成功させるための大きな役割を担ってくれると思う」

「彼ほどの人物を呼び寄せるとなった以上、結構無理をしているのか?」


 エリアスの問いにテルヴァは頷いた。


「ああ、それなりに」

「作戦が成功しなければ、代償がそれなりにありそうだな」

「失敗、もしくは犠牲が出た時点でも私は更迭される可能性があることを考えれば、今は多少無理すべき時だろう……まあ、強引な手法であったことは認めるし、作戦が成功しても尾を引くかもしれないが」

「おいおい」

「しかし、作戦が成功してさらに大きな成果を上げれば、この程度の強引さは帳消しになるさ」

「……テルヴァが言う、大きな成果とは何だ?」


 エリアスは問う。それにテルヴァは一度討伐隊の面々へと目を向け、


「霊木周辺にいる魔物の討伐だけではなく、霊木周辺の制圧だな」

「制圧……それはつまり、魔物を倒し霊木周辺に結界を形成し、人間のテリトリーにするということか」

「ああ。無論、道は繋がっていないだろうから飛び地になることは確定だ。しかし、人間の領域であることを大地に刻めば、魔物が来る可能性は非常に低くなる」


 そこまで言うとテルヴァは、中庭の隅の方に目をやる。そこには何やら作業をしている魔術師達の姿が。


「現在、飛び地になっても効果が維持できる通常よりも強固な結界を構築できる魔法を開発している。非常に困難な作戦かもしれないが……そこまでいって、私達の大勝利と言えるだろう――」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ