表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
中年聖騎士は、気付かぬうちに武を極める  作者: 陽山純樹
第三章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

152/179

正面突破

「元々テルヴァとは知り合いで、彼がこの北部へ来る前に、幾度か共に仕事をしたことがある」


 勇者オルレイトはそうエリアスへ話す。


「彼は元々王都から南にいて、私がそこにいた当時、魔物が大量に発生していてな」

「そうした縁で、テルヴァがあなたを呼んだのか」

「ああ。討伐隊のリストに入っていなかったのは、私が来るのかどうかわからなかったためだろう。私的な交流によってここへ来た人間であるため、あなたも把握していないのは無理もない。そもそも、ここへ来ることを決めたのもつい三日ほど前だからな」

「……それまでは、引き受けるつもりはなかったのか?」

「ギリギリまで悩んでいた。とはいえ、共に仕事をした人物からの依頼だ。最終的にはその縁でここへやってきた」


 勇者オルレイトは説明を終えると、エリアスを見据えた。


「私自身は指揮能力などないため、仮に勝利したとしても別に指揮権を奪うつもりはない。私はテルヴァとの知り合いだからな。不和を引き起こして場を混乱させるのは避けたい。しかし」


 オルレイトが放つ視線に、熱がこもる。


「実力者達が真正面からなぎ倒す姿を見て、さすがに私も血が騒いだ。是非、相手をしてもらおう」

「……あなたほどの実力と名声がある相手はさすがに初めてだ。俺がちゃんと受け答えできるかは、わからないぞ」


 エリアスは剣を構えつつ――呼吸を整え、思考する。


(俺が指揮官として、討伐に挑むための最後の試練というやつだな……負けるにしても善戦しないと評価を落としそうだ。とはいえ名うての勇者が相手だからな……)


 そう思いつつ、エリアスの体には高揚感が生まれていた。


(だが、またとない機会だ。現役でも最強クラスの勇者が相手……人間相手としては、俺の経験の中で一番だ)


 ここで騎士メイルがエリアスとオルレイトを見据える。準備はいいかと促している様子であり、エリアス達は同時に頷いた。


「……おそらく、これが最後の勝負になるでしょう」


 そして彼女は言う。周囲にいる人間も首肯していた。実績などを考えれば、オルレイトを超える力を持つ者は間違いなくこの場にいない。となれば、事実上北部最前線でどちらが最強か――それを、示す戦いとなる。


 あくまで決闘形式ではあるが――誰もがあることを理解していた。エリアスもそうだと考えていたし、オルレイトも同様に考えていると容易に推測できた。

 それは、この決闘が間違いなく双方の全力で行われるものだろうと。


「――始め!」


 メイルが叫ぶ。そしてエリアスとオルレイトは、同時に足を前に出した。

 それまでの戦いと同様、正面からの激突。エリアスの目からはオルレイトが持つ剣に相当な魔力が存在していると把握する。


 両者の刃がかみ合った瞬間、周囲に魔力が拡散した。どよめきが上がり、エリアス達は――双方の実力を、一度刃が重なったことで、ある程度理解する。


(武器の能力は……さすがに互角というわけにはいかないか?)


 エリアスは胸中で呟きつつ、どう攻めるか思案しようとして、


(いや、ここは正面突破……それ以外にない!)


 それは、指揮官としての実力を示すという意味合いもあるにはあったが――本心では、この戦いを全力で行い、悔いのないものにしたいという考えからだった。

 自分は、果たして最強格の勇者相手にどこまで戦えるのかという興味が、エリアスの頭の中を支配していた。剣戟が幾度となくぶつかり、相応の魔力が周囲に渦巻く。単純な剣の攻防では完全に互角であり、周囲はエリアスが勇者オルレイトと勝負できている、という事実により驚愕の声が響いている。


 おそらく誰もがオルレイトが圧倒すると予想していただろう――エリアスは聖騎士だとしても東部出身かつ、年齢的なハンデもある。オルレイトの武器も実績に裏打ちされた力を持ち、彼の技術についても誰もが理解している――エリアスが勝てる要素は、ないはずだった。


 けれど、唯一例外的な評価をする人間もいる。エリアス自身は戦っているオルレイトの背後にいるフレンに一瞬だけ視線を向けた。彼女はどこか淡々とした様子で戦いの行方を見守っている――もしかすると彼女だけは、勇者オルレイトの情報を持ち、互角の戦いをしているという状況を予想していたのかもしれない。


 そうした中、エリアスは一度剣を弾く。オルレイトは一度後退して、体勢を立て直した。

 そして、再び激突。完全に互角であり、単純なやりとりでは間違いなく勝負がつかない。


 ならば、勝負の行方は別の要素――オルレイトの魔力が高まる。エリアスは魔法が来ると予想したが、どうやら彼は合わせた剣を離さないつもりらしい。


(ゼロ距離で魔法を放てば、自分にも跳ね返ってくるが……何か手があるのか?)


 考えながら、エリアスは魔力を全身にまとわせる。魔法が来ようとも対抗できる――という意思表示であり、それはオルレイトも理解した様子。

 だが、それでもオルレイトは魔法を放った――直後、彼の放った魔法により、周囲に光が生まれた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ