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中年聖騎士は、気付かぬうちに武を極める  作者: 陽山純樹
第三章

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解決法

 テルヴァがノウェト公爵へ霊木周辺の制圧を行うため討伐隊を編成する――という旨を伝えると、彼は上機嫌に賛同した。


「ああ、非常に良い動きだな。ならば私としてはその旨を陛下にも報告しよう……無論のこと、勝算はあるだろうが、魔物との戦いは危険なものだ。注意を払うように」


 あっさりと引き下がったため、テルヴァ自身拍子抜けしたほどだった。

 とはいえ、この事実からわかったことがある。公爵は間違いなく討伐隊を霊木へ送り込むことを目的としていた様子――となれば、そこに何かあるのだろうとエリアスもテルヴァも予想した。


 結果として、公爵の滞在はほとんどなく、表面上開拓最前線に影響は少なかった――が、公爵の要請に従い霊木周辺の魔物を討伐するために隊を編成することとなった。


「人選については、最前線以外の人も候補に入れる」


 エリアスが開拓作業を終えたある日、彼に呼ばれ部屋を訪れた。同行者としてはフレンがいて、部屋にはテルヴァに加え騎士メイルの姿もあった。


「実力的なものを考えると、最前線でも今回の討伐に加われる人材はそう多くない」

「現時点で候補は誰だ?」

「筆頭にあがるのは勇者の二人。勇者ルエインと勇者ミシェナの二人だな」

「勇者か……」

「彼らは普段、砦周辺の警備や魔物の討伐をやってもらっている。最前線で危険度の高い魔物が出る頻度も多いが、それでも最前線と比べればまだ少ないかもしれない」

「……彼らが最前線で仕事をするわけじゃないんだな」

「地竜が出現する前は色々とやってもらっていたんだが、地竜出現後は、周囲の警戒が必要だと判断して、だ」

「なるほど……それで、勇者二人をまず動員すると」

「筆頭な戦力を言われればそうだな。他には――」


 テルヴァは幾人もの騎士の名を上げていく。そこでフレンが逐一どういった人物かを語り、その様子に他ならぬテルヴァが驚いた。


「仕事をしていながら情報収集をしていたのか?」

「最前線である以上、人間関係などを調べておくのも必要かと思いまして……あ、問題が出るようなやり方はしていませんのでご心配には及びません」

「そこは気にしていないが……騎士フレン、君は今回の件、どう思う?」

「私はあくまでエリアスさんの従者という立場ではありますから、この砦の方針について口を挟むことはありません。ただ」

「ただ?」


 フレンはチラッとエリアスを見る。


「……さすがに私に一言相談してくれても良かったのではないかと思いますが」

「そこは悪かったよ、俺としてもさっさと話を進めた方がいいかな、と思ったんだ」


 エリアスはばつが悪そうにそっぽを向くと、テルヴァやメイルは小さく笑った。


「良い従者だな」

「俺にできないことをやってくれる従者だ……というより、俺にできるのは戦場に立って犠牲者を減らすくらいだ。それだって、フレンやテルヴァみたいに色々と作戦を立案した上でのことだ」

「ずいぶんな謙遜だな……まあいい。勇者を始め、可能な限り戦力を整える。文字通りかき集めるという表現で討伐隊を編成することになるだろう……それはつまり、様々な人間が入り込んでくることを意味する」


 そう述べた後、テルヴァは難しい顔をした。


「隊として混じれば厄介な人物、というのはさすがに弾くし、身体検査などもきちんと行うが、それでも厄介者の一人や二人、入り込んでもおかしくない」

「腕っ節自慢を集めるなら、騒動の一つや二つ起きてもおかしくないな……ちなみにだが、人を集めるのにどの程度の時間が必要なんだ?」

「こればかりはやってみないとわからない……そして、さすがに連携訓練くらいはやっておく必要があるだろう。実際に霊木へ向かうのはいつの日になるのか不明だが……公爵の様子から、あまりにも時間が掛かれば非難の一つや二つ出てくるだろうから、速やかに討伐できる状態にする」

「……そちらの負担が大きそうだな」

「お互い様だ。あなたは道ができていない魔物の領域に踏み込むわけだから、な……最大の問題は、あなたがきちんと指揮できるかどうかについてだが――」

「ま、その辺りは上手くやるさ」

 エリアスが言う。それにテルヴァは眉をひそめ、

「上手くやる、とは?」

「東部でも、外部の人間が加わって魔物討伐を行った事例はある……北部では人選ができるだろうけど、東部は生憎人がそんなに多くなかったから、問題児が入り込むケースは多々あった……そういった場合の解決法を、俺は知っている」


 ――エリアスの言葉にテルヴァは何なのか理解したらしい。彼は苦笑し、


「ずいぶんと力押しだな。しかしそれは、失敗した時のリスクが高いのでは?」

「そうだな。だが、今回の討伐そのものがリスクの塊だ。少しくらい、勝負のために賭けはやらないと」

「……わかった、失敗した時のフォローなども考えておく」

「助かる」


 エリアスはテルヴァに礼を述べ、どうするかを頭の中で思考を始めたのだった。


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