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中年聖騎士は、気付かぬうちに武を極める  作者: 陽山純樹
第三章

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順調な開拓

 テルヴァが霊木周辺を調査すると明言してから数日の間は、通常通りの開拓が行われた。

 エリアスはそれに参加し、魔物の領域から敵が来ないかを監視し続けた――初日、多少なりとも疲労していたが、少しずつ慣れ周囲の状況をより正確に把握できるくらいには余裕ができた。


 騎士バートは木を伐採し続け、さらに後方では結界魔法によって人間の領域を広げていく。作業そのものは非常に順調であり、結果的に魔物が襲い掛かってくることもなかったため、予定以上に領域を広げることができた。


「逆に順調すぎるのも怖いが、な」


 しかしバートは昼食時、そう述べた――昼を迎え休憩となり、伐採した丸太に腰を下ろした彼の発言であった。


「聖騎士エリアス、確認だが魔物はこちらを観察しているんだな?」

「ああ、危険度一にも満たないような魔物が色々と森の中で動いている。こちらに干渉してくる気配はない。まず間違いなく、俺達の様子を窺っているんだろうな」


 エリアスはここ数日でさらに魔物の領域における気配探知の精度を上げた。それにより小さな魔物の動きも捉えることができるようになっており、その結果、作業中に小さな魔物がエリアス達を観察していることが明瞭となった。


「霊木にいる魔物は、こちらの動きを常に観察している……かといって、積極的に仕掛けて来ようとはしていない。おそらく俺が熊の姿をした魔物を迎撃したからだと思うが」

「……霊木周辺にはあのくらいの魔物はもっといそうにも思えるが」

「いるとは思うぞ」


 そうエリアスが言うと、バートは眉をひそめた。


「いる……が、攻撃はしてこない?」

「というより、生半可な戦力ではまた迎撃されるだけだと、霊木の主は考えているって話だ。こちらの能力などを推察し、今度は撃退できるだけの魔物を使って攻撃を行う……敵はそういう算段を立てるために、偵察用の魔物を用いている」

「……次はかなり大変な戦いになりそうだな。で、その戦いは――」

「場合によっては索敵魔法を行使した際に、始まるかもしれない」


 エリアスの言葉にバートを含め、伐採作業を行っている騎士達は重い表情を見せる。


「俺達が霊木周辺の詳細を得ようとしたら、敵は警戒するだろうからな……作業開始は明日らしいから、今日中にいけるところまで進もう」

「そうだな……索敵には地底調査を行う面々が来るはずだが、そっちはどうなんだろうな。何か聞いているか?」


 ――地底調査は『ロージェス』のことを調べるのが主な目的だが、表向きの理由は地竜が出現したことにより、地底に関して調査をしようというものだ。


「順調に調査はしているとは聞いた。成果はあんまりないみたいだが……まあ、地底の魔物を刺激しないよう慎重にやっているみたいだし、短期間で結果は出ないだろうな」

「そうか……地底調査とは違って霊木を狙い撃ちする調査だ。霊木の主を刺激した場合は……」

「戦闘に入る心構えだけはしておくべきかな」


 エリアスの言葉にバートを含めた騎士は深々と頷いた。






 その日の作業は滞りなく終了し、エリアスは砦に帰還し部屋へ戻ろうとする。だがそこで騎士メイルに呼び止められた。


「テルヴァさんがお呼びです」


 そう告げられ、彼の部屋を訪れる。何か地底調査で進展があったか、と考えたが今回呼ばれたのはまったく違う理由だった。


「少し遅れてしまったが、剣を取り寄せた。武器庫に案内するから、使いやすそうな物を選んでくれ」

「……そういえば、頼んでいたっけ」


 エリアス自身すっかり忘れていた。


「武器庫に行けばいいんだな?」

「私が案内するよ……あなたに良さそうな物を見つけたため、それならどうかと確認を取りたかったんだ」

「俺は強化魔法を使うから、どんな剣でもあまり関係ないと思うんだが」

「その強化魔法の効果を増幅できる特性を持つ剣だ」


 テルヴァの言葉を聞き、エリアスの口が止まる。


「耐久性なども十二分にある」

「……どういう経緯でそんな剣が?」

「単純に稀少な素材を用いた剣だ。ルーンデル王国外に存在する素材で、魔物の領域から発見された鉱石らしい」

「へえ、そうなのか……もしかすると今後、そうした素材がこの北部から出るかもしれないのか?」

「かも、しれないな。国は魔物の領域から得られる素材による武具をサンプルとしていくらか他国から購入していたんだが、その内の一本だ。他に使用者もなく、王城の宝物庫に置かれていた物を、特性を考慮し私が取り寄せた」

「……なら、早速ためしてみようか」

「いいだろう。それでは案内しよう」


 テルヴァが先導する形で部屋を出る。そしてエリアスは彼と共に砦内に存在する武器庫へと歩を進めたのだった。


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