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中年聖騎士は、気付かぬうちに武を極める  作者: 陽山純樹
第三章

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霊木周辺

 魔物討伐を行ったその日、エリアスもそれ以上仕事をすることはなく、部屋に帰って休むことに。

 翌日、朝食を済ませた段階でテルヴァから執務室へ来るようにとのお達しを受け、エリアスは部屋へ足を運んだ。


「報告書の内容を確認したが、魔物については確かに挙動が変な雰囲気であるように感じた。まだ違和感程度でしかないが……」

「俺も同意見ではあるが、これが霊木に関するものであれば、何かしら調査が必要かもしれないぞ」

「……まだ霊木に到達するまで距離がある。当面の間は開拓を進め魔物の挙動を見るのが最善策だと考えている。そして再び交戦した際、今回得た違和感について再度検証することにしよう」

「わかった……現時点での推測で構わないが、どんな風に考える?」

「今回の魔物が何者かの駒であると仮定した場合、霊木に近寄ってきた人間に対する威力偵察……だが、それが『ロージェス』の仕業である可能性は低いな」

「そうだな。地竜との戦いでヤツは情報を得ているはずだ」

「となれば、霊木を住処にしている魔物の仕業……現時点で霊木周辺を精査できたわけでもない。どのような魔物がいても不思議ではないことを踏まえれば、斥候であった可能性は十分ある」

「……もしかすると『ロージェス』のような人の形をした魔物が?」

「可能性はゼロではない。だが、霊木周辺……人間の領域となった地点から索敵はしている。その結果では、人の形を持つ魔物というのは確認できていない」

「けれど、霊木の周辺を直接見たわけではないんだな?」


 エリアスの問いにテルヴァは頷いた。


「ああ、そうだな」

「……霊木における戦い、色々と想定しておく必要はありそうだな」

「だが、そう焦る必要はない。現在時点でもそれなりに距離があるため、実際に霊木へ到達するのはまだまだ先。加えて、近づけば情勢が変化する可能性は極めて高いし、今から対策を打ってもあまり意味はないだろう」


 そう述べたテルヴァは、さらに自身の見解を述べる。


「やはり目先の脅威は地底に存在していた『ロージェス』だな」

「そちらの方は……俺も参加するべきか?」

「やっていることは地上で索敵魔法を行使しているだけだ。開拓と比べてもさらに地味な仕事である上、魔物が跋扈するような場所で仕事をしているわけではないから、あなたの出番はおそらくないぞ」

「そっか。ならおとなしく開拓を手伝うとするか」


 エリアスは言うと、テルヴァへ一つ確認を行う。


「俺は昨日と引き続き……でいいな?」

「ああ、開拓に従事するのであれば、確認の必要はない。別の仕事をやるという時に、ここへ顔を出してもらえればいい。私が不在の場合は騎士メイルが対応しよう」

「不在……テルヴァがいない場合は、地底調査でもしているのか?」

「開拓の場合もあるが、基本的には後方に存在する砦の主と話し合いということも多いな」

「話し合い?」

「送ってくる物資の確認や、後方の状況を確認している。後方で魔物が発生しているのであれば、開拓をした場所で何か起きている可能性が高い。最前線は後方がきちんと機能しなければ物資が滞りマズいことになる。よって、後方で問題が発生したら優先的に対処するようにしている」


(ああ、それもそうか)


「大変だな」


 エリアスが言うとテルヴァは苦笑しつつ、


「だがこれも最前線の仕事だ」

「……現状では平和、なんだよな?」

「ああ、魔物の発生などはしていない。後方のどこかで『ロージェス』が出現したなどという報告もない。魔物の発生は抑えられているし、対処すべき問題は見受けられない」

「そうか……もし荒事なら遠慮なく俺に指示を飛ばしてくれ。後方の問題だろうと全力で対処しに向かうよ」

「ああ、いざという時は頼りにさせてもらう」


 そう述べた後、テルヴァは小さく息をついた。


「……現在、あなたのように優れた実力者を選抜し、戦闘に特化した隊を編成しようか考えている」

「それは開拓のため? それとも地竜のような存在が襲来してくるという可能性に備えて?」

「両方ではあるが、どちらかというと後者――迫る脅威に対し後方を守るためという意味合いが強い」

「そういう部隊は元々いなかったのか?」

「戦力は均等になるよう隊を編成していたからな……ただ、そういう専門的な隊を作ろうとすると、戦力的に厳しいというのが実情だ。だが王都から戦力を募ろうとも現状で十分だろうと言われる可能性は高く、増員して編成するというのも難しい」

「人員に目星はついていたりするのか?」


 エリアスが問い掛けると、テルヴァは一度目を伏せた後、


「ある程度は……もしそういう隊を作る場合、あなたがそれを率いるということはできるか?」

「うーん……指揮はできると思うが、そちらが満足するような動き方ができるかはわからないぞ」

「そうか、ひとまずこれは検討段階であるため、まだ他の騎士には秘密にしておいてくれ。今はひとまず開拓を進める。そして霊木周辺や霊木に関する情報を収集していく……聖騎士エリアス、頼んだぞ――」


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