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中年聖騎士は、気付かぬうちに武を極める  作者: 陽山純樹
第三章

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縄張り

 エリアスとテルヴァは砦から出て、中庭で状況を改めて確認。砦内にいる魔術師が報告よりも詳細を確認し、テルヴァへと伝えた。


「魔物の形は熊のような姿をしています。人を超える大きさであり、二本の足で直立した状態で迫っています」

「数は?」

「全部で四体」

「危険度の判定は?」

「おそらく二……魔力の総量から考慮すると、三に片足入っているかもしれません」


 魔術師の報告にテルヴァは渋い顔をする。


「かなり強力な個体だな……霊木の影響を受けて強化された魔物かもしれない」

「……霊木により、魔物は強化されるのか?」


 エリアスが問う。それにテルヴァは表情を変えないまま答える。


「魔力が集まる場所に魔物は多く、その魔力を糧にして魔物は強くなる……霊木周辺を根城としている魔物は、他の場所と比べても強い魔物が多い」

「……まあ、当然の話か。テルヴァはそうした場所を目標としているわけだが……」

「魔物の領域へさらに踏み込むためには、霊木周辺のような魔力が多い場所を制圧し、強力な魔物の発生を抑えつつ、こちらが魔力の恩恵を受け開拓を進めるのが理想だ。無論、非常に大がかりな戦いになるだろうし、苦戦も予想されるが、開拓を今以上に進めるためには避けては通れない」

「確かに、な。で、霊木周辺から魔物がやってくるという事例は多いのか?」

「正直、そこまでは……霊木の魔力を受けている魔物は、その周辺にすみかを形成し、その周辺を離れることは少ない。霊木が糧となる魔力を吸い上げる以上、その周辺に留まっていれば勝手に飯にありつける。そんな環境を魔物が手放すことはないはずだ」

「しかし、今回は少し様子が違う。考えられる可能性は?」


 さらにエリアスが質問した時、返答したのはテルヴァではなく報告を行った魔術師だった。


「騎士バートが行った開拓は、今まで以上に霊木に近しい場所でした。もしかすると魔物の縄張りに入ったのかもしれません」

「つまり、霊木の影響下に入ったと」

「あくまで可能性の話ですが」

「それが一番ありそうな話か。ただそうなると、今後開拓を進める場合は霊木の周りにいる魔物が人間の領域へ攻撃を仕掛けてくる可能性があるな」

「かもしれませんね……いずれ、魔物達との大規模な交戦は避けられないと考えていましたが……」

「ただこれは、好機でもある」


 と、今度はテルヴァが口を開いた。


「魔物が人間の領域に吸い寄せられるのであれば、各個撃破ができる」

「そういう見解もあるか……もしかすると、霊木へ近づく間に魔物を片付けることができるかもしれない、と?」

「さすがに魔物をゼロにするのは不可能だろう。それに、魔物がいなくなればその代わりに霊木の魔力を狙って別の魔物が縄張りにするだろう……しかし、霊木の影響を受け続け強化された魔物の数は確実に減少する」

「そういった個体を倒していけば、霊木周辺を制圧する際、想定よりも戦いそのものが楽になるかもしれない、と」

「ああ、そういう流れにもっていければ……ただ、今回人間の領域に踏み込んだ魔物は相当手強い。地竜ほどではないと思うが――」

「確認だが」


 と、エリアスは索敵を行った魔術師へ尋ねる。


「そういった魔物は、まだ霊木周辺に存在しているのか?」

「断言はできませんが、似た魔力量の個体は確認できています。ただ、姿形が同じなのかはより調査を進めないと判断できません」

「わかった……テルヴァ、霊木の魔力を受けた魔物は、元々の形が異なっていたとしても、同じ樹木から発する魔力を受けて強化されている。となれば、その性質も多少なりとも似通ってくると思う」

「ああ、それには同意する。実際、過去の開拓で霊木のような場所にいる魔物は、形状が違うにしても保有する魔力の質は似たものへと変化することがわかっている」

「ならこれまで、霊木周辺にいる魔物と交戦したことは?」

「ゼロではないが、そこまで強力な個体はいなかった。おそらく霊木の影響を受けた時間が浅い魔物が、縄張りにできる場所を探して人間の領域に迷い込んだものと予想される」

「ならまず、今回俺が交戦してみよう。それで霊木の影響を受けた魔物がどれほどの力を持っているのか……それを調べ、今後の役に立てればいい」


 その言葉で、周囲で話を聞いていた騎士がにわかにざわついた。地竜と単独で戦った聖騎士――その実力が遺憾なく発揮されるのか。

 テルヴァは地竜との戦いぶりを目の当たりにしているため、エリアスの言葉自体はすんなり受け取った。しかし、


「……いけるのか?」

「能力が地竜よりも低いにしても、四体いる以上は単独で戦うのは多勢に無勢だ。よって多少なりとも援護はしてもらいたいが……俺はこの砦でもっとも魔物と戦ってきた人間だと断言できる。引き際はちゃんと把握しているし、危なかったら引き下がる。テルヴァには、そういった可能性を考慮し、迎撃態勢を整えてくれれば」


 エリアスの言及にテルヴァは一時沈黙し――やがて、


「……わかった。あなたの考えに乗ろう。そして私はあらゆることを想定し、早急に迎え撃つ人間を選定する――」

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