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中年聖騎士は、気付かぬうちに武を極める  作者: 陽山純樹
第三章

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最前線へ

 数日後、エリアスへ正式に北部最前線へ異動する旨の辞令が届いた。エリアスはそれを受理し、早速拠点としていた砦を出ることに。


「いつかあなたの所へ行くから待っていて」


 見送りにはジェミーがいた。彼女の微笑を伴う言葉にエリアスは頷いた。

 結局、ミシェナとの関係性については尋ねることはしなかった――それはいずれ彼女が最前線へ来たときに、改めて訊こうと決めた。


 さらに見送りにはルークとレイナの姿も。二人はエリアスが指導をするより前とは比べ明らかに顔つきが違っていた。


「二人は今後、この砦に重要な人間になる……その実力をここで発揮するか、それとも最前線を目指すか……どうするかは、二人がゆっくり決めればいい」


 同時に二人は頷いた。それを見て大丈夫だと思ったエリアスは、フレンと共に歩き出した。


「さて、いよいよ最前線だな」

「とはいえ地竜討伐などで幾度となく赴いていますし、それほど緊張はありませんね」


 フレンが言う。彼女は背中に大きな荷物を背負っている。


「……それ、以前購入したポーションだろ?」

「はい。しかし全部ではありませんよ。ノーク殿にもポーションを託しましたし」

「そうか……残りは最前線への土産か……持とうか?」

「いえ、魔物がいないとも限りませんし、私が持ちます」


 エリアスは頷き、二人は歩を進める。その道中で、今後のことについて色々と話し合いを行う。


「フレン、情報収集についてはどうする?」

「正直、情勢が大きく変化していますし、最前線へ到達したわけなのでそこまで必要性はないのでは?」

「なら、魔物の領域について調べる方を優先かな」

「わかりました」

「フレンの専売特許だな」

「さすがに言い過ぎだと思います……ただ、やりやすい仕事ではありますね。それに、政争のドロドロとした事情を調べなくて良かったですね」

「ストレスが溜まっていそうだな」

「多少なりとも」

「そうか、厄介な仕事悪かったな」

「いえ、これが私の役目ですから」


 笑みで応じるフレン。


「私は戦闘でほとんど役に立ちませんからね……かく乱はできますが」

「戦闘面は大丈夫。ここまで色々と頑張ってくれたし、何か要望があれば聞くけど……」

「大丈夫ですよ……というより、急にどうしましたか?」

「いや、俺は休んだのにフレンはずっと働きっぱなしで悪いなと今思って」

「ご心配なさらず。適度に休息はしていますから」


 そう返答するフレンにエリアスは「そうか」と答えた。本人がそう述べているので、引き下がるしかない――こう見えて彼女は、中々に強情だったりする。


「そういうことなら、この話は終わり……とはいえ、何かあればすぐに言ってくれよ」

「はい」


 なおも笑顔で応じる彼女に、エリアスは作り笑いではないなと思いつつ、先へ進むことにした。






 そうしてエリアス達は最前線の砦へと辿り着く。時刻は昼過ぎで、砦内にいた騎士達はエリアス達を歓迎した。

 挨拶としてフレンは荷物のポーションを渡し、エリアス達はまず聖騎士テルヴァへと挨拶へ向かう。その道中、エリアスは勇者ミシェナとすれ違った。


「あ、来たんだ」

「どうも……今後ともよろしく」

「うん、こちらこそ……ちなみにジェミーは?」

「当面は俺がいた砦に所属して、仕事をするらしい」

「そっか」

「何か思うところがあるか?」


 問い掛けに、彼女は首を左右に振った。


「ううん、ジェミーも頑張っているんだな、と思って」

「場所は違えど、同じ北部で仕事をしている以上、いつか一緒になる日だって来るかもしれない」

「そうだね……その時を楽しみにしてる」


 ミシェナは応じた後にエリアスへ、


「まずは挨拶に行くんだよね?」

「ああ」

「ただ、今はちょっと不機嫌かもよ」

「何かあったのか?」

「聖騎士テルヴァは少しばかりピリピリしてる」

「……新たな魔物が出たとか?」

「そういう報告はないね。むしろ、何もないからピリピリしている可能性もあるのかな?」


(……成果が上がらないとか?)


 そういう疑問を心の中で呟いたが、挨拶をする必要はあるとして、ひとまずテルヴァのいる部屋へ向かうことにした。

 ミシェナと別れ、エリアスとフレンは廊下を進む。そして辿り着いた部屋をノックすると、テルヴァと思しき声が聞こえてきた。


 扉を開ける。部屋の中では彼と騎士メイルが机を囲み、立って話をしていた。


「軍議中だったか?」

「……丁度良かった。入って欲しい」


 言われ、エリアスとフレンは入室。扉を閉めた直後、テルヴァは深いため息を吐いた。


「……着任早々、こういう話をしたくはないんだが」

「ずいぶんとネガティブなニュースが届いたみたいだな」


 エリアスはそう言いつつ、テーブルへ視線を向ける。そこには開拓を行う北部の地図が広げられていた。


「今後の方針でも決めていたのか?」

「ああ、そんなところだ……悪いニュースについてだが、テーブルの資料とは少し逸れた内容になる」


 そう前置きをした後、テルヴァはエリアス達へ語り始めた。


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