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中年聖騎士は、気付かぬうちに武を極める  作者: 陽山純樹
第二章

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必要なもの

 数日後、エリアスは最前線の砦へ向かうために動き出した。同行者としてはフレンが帯同し、他にはいない。


「ジェミーなんかは連れて行っても良かったかもしれないが……」

「ご本人が辞退したので、私達が何か言うことはできないでしょう」


 フレンが言う――彼女の言う通り、最前線の砦へ向かい聖騎士テルヴァと話をする、ということでジェミーも来るかどうか話を向けた。だが他ならぬ彼女自身がそれを辞退した。


「地竜の力を見て、私にはまだ最前線が遠いことはわかった。それに、この場所でやれることもあるしね。ノークさんは当面魔術師達への指導を、と言ってくれるから私自身修行しつつ、次の機会を待つことにするわ」


 そう述べ、残ることにした。そして残る以上は最前線の話を耳に入れることもしない、というわけで今回エリアスとフレンの二人で出発した次第だ。


「エリアスさん、話というのは具体的になんでしょうか?」


 道中でフレンが問い掛ける。それにエリアスは、


「色々と可能性はあるけど……地竜との戦いの際に俺を評価していたし、最前線へのスカウトは間違いなくするだろうな」

「エリアスさんは受けるのですか?」

「うーん……俺達の目的の一つは発言権を得て東部の実情を説明することだろ? フレン、最前線に異動となったら、その辺りについてはできると思うか?」

「……現在時点で、地竜討伐の功績などの詳細はまだつかめていません。しかし、聖騎士テルヴァが報告をした以上、エリアスさんの名前が上がったのはほぼ間違いないでしょう」

「だろうな」

「その上で、一定に評価は得て最前線へ異動……と国側が考えてもおかしくありませんが、だからといって発言力に結びつくかと言われると……」

「微妙だよな。俺達は一定の権力を求めているわけで……まあ、話を聞いて欲しいだけだから、最前線へ向かうことがそれに繋がるのであれば、目標の一つは達成になるんだが」

「成功するのであれば、想定以上に早く実情を訴えることができそうですが……」

「ここは国の反応待ちかな……それで、フレン」

「はい」


 彼女が返事をすると、エリアスは少し間を置いて口を開く。


「最前線へ向かうとして、何か必要なものはあるか?」

「何より情報収集が最優先ですね。北部の最前線ではどのような魔物が出るのか……危険度の高い魔物や、魔獣と呼ばれる存在がどれだけの頻度で出現するか。そこについて調べなければ、必要な物は揃えられません」

「例えば結構な数、凶悪な魔物が出現する場合は?」

「エリアスさんの武具なども新調した方が良いでしょう」


 言われ、エリアスは腰に差す剣を一瞥する。東部でも共に戦ってきた相棒であり、地竜相手にも討伐に大きく貢献したが、


「……メンテしていて思うが、さすがに限界が近づいているのは確かだな」

「エリアスさんは剣に魔力を付与させて戦うので、そこまで武具の耐久力などは必要ありませんが、そろそろ交換するべきでしょう」

「まあそうだな……最前線の武器の供給なんかは、国がやっているんだろうか?」

「おそらくそうではないかと。よって、聖騎士テルヴァなどを介し要求することになるのでは?」

「異動するのであれば、そこについて条件を加えればいいかな?」

「可能であれば剣以外にも要求したいところですが……話し合い次第ですね」

「他に必要な物はあるか? 例えばフレンは?」

「私ですか……後方支援役ですし、そこまで必要性はないですね……ただ、情報収集しやすい環境があれば嬉しいですが」

「それはさすがに要求してもどうにもならないだろうな……」


 エリアスは苦笑しつつ応じる。


「最大の課題は北部にいる騎士達とちゃんと連携できるのか……だな」

「エリアスさんならあっさり馴染めると思いますよ。地竜討伐で大きく活躍したことを踏まえれば、多くの騎士がエリアスさんに対し教えを請うような形になるのでは?」

「教え、ねえ。ルークやレイナ相手なら問題なくできたが、最前線で戦うような人間相手に、教えることは何もなさそうだけどなあ」

「そうは思いませんが……聖騎士テルヴァが話を持ちかけてきた以上、エリアスさんの実力は相当評価が高いと思いますし、色々知りたいと思う人は多いのでは?」

「……技術的なことを問われたら、どこまで解説できるかはわからないけど……まあ、心構えはしておくか」

「それが良いかと思います」

「とりあえず確実なのは、もし異動となったらやっぱり心休まる日は少なくなるんだろうな」

「そこは間違いなさそうですね……そもそも休暇を取ろうにも、町だって遠くなりますからね」

「俺の場合、行くのも億劫で一日中自室で寝ているとかありそうだな……それはそれで俺としてはいいんだけど」


 フレンはここで小さく頷いた。どうやら彼女も同じ事を考えている様子だった。


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