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中年聖騎士は、気付かぬうちに武を極める  作者: 陽山純樹
第二章

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現場の声

 ――そして、事後処理が済んだことを確認しエリアス達は砦へ帰還した。事の一切はノークへ報告を行い、今後どうなるかについてエリアスは彼へ向け考察を行う。


「聖騎士テルヴァは、雰囲気からすると私に能力に興味を持っているようですが……」

「地竜を食い止めることができる実力ならば、喉から手が出るほど欲しいのだろう。特に、今後も魔獣討伐を行っていく可能性を考慮すれば」


 そうノークは述べる。


「私自身、戦闘技能によって聖騎士となった君が、いつまでもこの砦に居続けることはないだろうと思っていた。それが思った以上に早く到来するというだけの話だ」

「……あなたの立場が悪くなりませんか?」

「君に心配されるとは、な」


 と、ノークは笑う。


「そう心配しなくても構わないさ。報告内容としては、私の力で君のことを制御することができなかった……評価は下げられるかもしれないが、それでこの砦から異動、というのはさすがにないし、おそらく北部の人間が反対するだろう」

「北部の人間が……」

「この北部の開拓最前線は、君も理解しているとおり政争の場となっている。人によっては開拓そのものより、功績が何より重要で競争相手を出し抜くことしか考えていない人間も存在するが、聖騎士テルヴァのように国の意向で開拓を進めている者も多い。そういった人物の発言力は、君が想像している以上に重い」

「現場の声を国は汲み取ると」

「そうだ。今回の地竜討伐で、物資輸送にこの砦は大いに貢献した。評価的にも高かったため、私のことを追い払えば物流に支障が出る。まあ、誰かが止めてくれるだろう」


 楽観的な物言いをするノーク。エリアスとしては本当に大丈夫かと疑問に思うところだったが、彼の方が北部の情勢は詳しい以上、その言葉を信じるしかない。


「君の方は……そう遠くない内に辞令が来るかもしれないな」

「まだ最前線へ行くことが決まったわけではありませんが……」

「準備はしておいた方がいいだろう……何か必要なものはあるか?」

「いえ、実際に辞令が来るまでは普段通り過ごすつもりです。ルーク達に教えていないこともありますし」


 ノークは「そうか」と応じる。魔獣オルダーとの戦いから、間違いなくこの砦が持つ戦力はアップした。ノークはそれをどう扱うか――


「もし可能であれば、同行してほしい人間がいるなら一緒に最前線へ向かっても構わないが」

「……そこについては、今はひとまず考えておくとだけ」

「わかった」


 話はそれで終わり、エリアスはノークの部屋を退出。自身の部屋を戻ろうとした時、途中でフレンと顔を合わせた。


「フレン、ノーク殿への報告は終わった」

「問題はありませんでしたか?」

「特には。少なくともノーク殿が今回の件で何かしようということはないみたいだ」

「そうですか……北部最前線へ向かうことも考慮に入れ、準備をしておきます」

「わかった」

「それと話は変わるのですが」


 フレンはエリアスの目を見ながら、口を開く。


「地竜との戦いについて。交戦してみて、どうでしたか?」

「東部で戦っていた魔物と比べてどうか、という話か?」

「はい」

「……北部の最前線から先は、間違いなく魔物の領域だ。しかも地底にいた以上、力の大きさについては相当高かった。さすがに俺だけで対処しきれるような存在ではなかっただろう」

「もし東部の面々がいたならどうでしょう?」

「……東部では出現した魔物に対し徹底的な調査をしていた。その上で有効な魔法などを用いて拘束し、仕留めるという形にもっていった。今回のように突如出現して交戦、という形だとさすがに苦戦は免れないと思う……ただ」


 エリアスは口添えするように、続けた。


「東部の面々がいれば、もっと楽に対処できたとは思うぞ」

「そうですね……」

「北部の面々は戦果を求めて戦っているし、それを踏まえると連携する能力が低いからな。そこが欠点であり、開拓を進めていく原動力ともなっているわけだが……フレン、そこに言及するということは何かあるのか?」

「いえ、聖騎士テルヴァがエリアスさんの技能を求めているのだとすれば、東部の人材にも戦力になれる方がいる、と告げればあっさりと呼べるかもしれないと思いまして」

「今後北部最前線へ向かうとなったら、さすがに単独で行動というのは辛いだろうし東部から人を連れてくることも手ではあるんだが……」

「北部の方々と連携する方を優先しますか?」

「その方がしっくり来るとは思う……それに、東部でも確か色々とあるんだろう? あの場所だってきちんと押さえておくべきだとは思うし、戦力を引き抜くのもリスクがあると思うぞ」

「……そうかもしれませんね」


 エリアスの言葉にフレンは同意する。ただ表情はどこか不服そうではあった。そんな様子を見たことで、エリアスは少し気になり彼女へと尋ねた。


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