彼は舞い戻る7
突如起こった学院占拠事件。
しかしその首謀者であるマクシミリアンは死亡。命令に従っていた学生たちや外部の人間も混乱の中で駆け付けた警察隊にあっさりと取り押さえられた。
これにて一件落着。
……なんてなるわけもなく。
「もう一度聞くぞ。本当に奴らの仲間ではないんだな」
「違うって。しつこいな」
王都の警察署にて。
俺はルガードという警察官に取り調べを受けていた。
歳は俺とそう変わらないだろうに、顔色は不健康そうで髪も神経質そうな性格を表すようにぴっしりとオールバックにされている。
まあこの通り元気いっぱい俺の取り調べをしてくれているし、不健康そうなのは見た目だけなのかもしれないが。
「アンタも大変だなあ。俺が白なのくらい少し調べりゃ分かるだろうに、はいそうですかと解放するには事が大きすぎるもんなあ」
「分かっているならもう少し真面目に答えてくれ。筆記官が苛立ってうっかり君の言葉を書き間違えるかもしれないぞ」
「そりゃ恐い」
そんな脅しとも取れることをその筆記官が居る前で冗談交じりに言うという事は、俺のことをそれほど疑ってないのは確かだろう。
確か筆記官は警察に所属していない外部の人間のはずだ。
そんなにほいほい警察側の有利になるよう記述を捏造してくれたりはしないだろう。
「しかし本当に俺は今回のことはよく分かってないぞ。あのシスターに引っ付いてただけだし」
「そのことだが。何故君がそのシスターと一緒になって容疑者たちを相手に大立ち回りを演じている。記録が確かなら、君は足の怪我による後遺症が原因で軍学校を中退しているようだが」
「あのシスターが治してくれたんだよ。今はまたこの様だけどな」
「ふむ」
俺が取調室に連れて来られた時に足を引きずっていたのを思い出したのか、納得して見せるルガード氏。
しかし事実とはいえ責任全部マキにおっかぶせる形になるなあ。
実際俺は知らない事だらけなので仕方ないが。
「足が治ったなら学院の卒業後に警察に来ないか。君のように正義感があり力と体力もある若者は是非欲しい」
「そいつは嬉しいお誘いだが。生憎と財務部の方から先約があるんでね」
「なんだと。財務部にコネがあるなら最初に言わないか。君の潔白を証言してくれるだろうに」
「まだ入ってないのに迷惑かけらんねえだろ。誰の推薦だとか絶対言わねえからな」
まあ俺が黙ってても少し調べりゃ分かるだろうが。
そもそも大して頭が良くない俺が財務部にスカウトされたのは、それだけ信用できる人間だと財務部に所属している知り合いから太鼓判を押されたからだ。
何かと金が絡み公平性が求められる仕事だ。
一定の能力は必要だが、それ以上に信用できる人間を揃えたいらしい。
逆に言えばそれくらい人員を厳選していて人手不足な所だ。
こんなことで時間と手間を取らせたくない。
「しかし……どうした?」
何だか取り調べが雑談になり始めていると思ったら、ルガート氏の部下らしい警官が入ってきて何やら耳打ちを始める。
そして次第に眉間の皺が深くなっていくルガート氏。
何があった。
「……君たちを釈放することになった」
「ええ。随分と早いな。事が事だけに何日も拘束されると思ってたんだが」
何せ表向き大逆罪で処刑されたはずの男が、王のお膝元で将来を担う若者たちのいる学院を占拠したんだ。
それこそ大逆罪でもう一回処刑されてもおかしくない罪状が並ぶだろうし、関わった俺たちも下手なことを漏らさないよう念入りに口止めされると思っていたのだが。
「君からすればいいことだろうが……あのシスターとんだ食わせ物だったらしい。君も今後付き合いを続けるつもりなら気をつけた方がいい」
「はい?」
それはどういう意味なのか。
聞き返す前にルガート氏は取調室から出ていってしまい、俺も他の警官に促され足の調子に難儀しながら外へと向かう。
とんだ食わせ物とは。
まさかマキが何かしたせいで釈放が早まったのか。
本当に何者だあのシスター。




