考えるより先に行動すると、ロクなことが起きない。
なんでこうなったのかさっぱりわからない。
ホントに、どうしってこうなった?
視点・アリア(それはさておき火炙りである)
昨日謎の喧嘩別れした後、宿に戻ったらアメリアさんが凄い不機嫌だった。
提出された書類に誤字脱字のミスオンパレード、決められた場所での出店への苦情、出店に良い場所の取り合いで喧嘩、アメリアさんの美貌に釣られたクソ虫共の求婚、結果とても不機嫌。
そして俺と添い寝したことで、今日はとてもご機嫌。
俺はとても寝不足。
あんなの、無理、寝れない。
なので俺は、宿の庭でサファイアを貼り付けにして火炙り準備中。
「何故に!?私何かしました!?昨日はずっと教祖様の相手で忙しかったんですけど!?」
「オマエ、ヤク。オレサマ、オマエ、マルカジリ」
「領主様が壊れてる!?」
「着火!」
「ホントに火付けやがった!?ギャァァァァァ!!!」
燃えるサファイアを俺、ファリエナ、アリス、モルドレットで眺める。
「も~えろよもえろ~よ~ほのおよも~え~ろ~」
「火達磨、です」
「もえもえ~」
「……いや、死ぬっすよ?」
バカ言うな、サファイアだぞ?
最近変身無しで、魔法の練習してるサファイアだぞ?
未だに成功してないけど、命が危険になればきっと成功させるさ!
「私をなんだと思ってるんだぁぁぁぁぁ!!!」
『あ、脱出した』
荒縄で手足を二重8字結びしたのに……流石サファイアだ。
服が焦げて全体的に布が減っていて、髪がアフロになっているが数分で元に戻るだろ。
「殺す気か!?私領主様に何かしましたか!?」
「俺達が見捨てた後、教祖に俺のこと売っただろ?」
「……なんのことか、さっぱりわかりませんね?」
「隠す必要はない。教皇が今日の祭典に来るんだろ?そして、教皇の話し相手にでもさせるつもりなんだろ?そしてサファイアはエスケープか?」
「……」
サファイアは冷や汗が止まらないようだ。
情報源はアメリアさんである。
そして、アフロが治ってやがる。
「ククク……お前の母親は、全て見ていたぞ?」
「母親は見た!?」
「ふざけていられるのも今の内だけだ!」
「ふざけてるのは領主様でしょ!?」
「今日、お前は貸し切りだ」
「……………ゑ?」
「朝、サファイアが起きる前に教祖の使いが来てな、今日の祭典を一緒に過ごしたいってさ。俺とシルバーが許可しといたんだZ☆E♪」
「なにしてんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
殺気を感じたので、鬼の形相で向かってくるサファイアから逃走する。
数分追いかけっこした結果、変身したサファイアに氷漬け頭出しバージョンをくらった。
「とても、寒い……」
「シルバーどこだゴラァ!!」
サファイアがシルバー探しに行ってしまった。
誰か、助けて……
アリスが手刀で氷を砕いてくれた。
「ほわぁぁぁぁぁ……空気が、暖かい……」
「だいじょぶ?」
「二人ともやることが過激っすよね~」
アリスに感謝のなでなでをしていたら、ファリエナがキョロキョロしだす。
そして、俺の後ろを見て止まる。
なんか、スンゴイ怖い。
振り返ってみると、そこにはシワシワの老婆がいた。
なんだ、ただのおばあちゃんか。
「君がアリア・メルノ君でいいのかしら?」
「何故俺の名を!?」
「ふふ、私はクロムウェル・A・F・エミティア・M・セルフィルク、教皇をしているわ」
「……ふぁ!?」
名前なげぇ!!
いやそうじゃなくて、教皇おばあちゃん!?
ニッコニコしてる近所の優しいおばあちゃんにしか見えない!
そして俺は、選択を迫られている。
一つ、このまま普通に接する。
二つ、頑張って怒らせる。
三つ、甘える。
四つ、とりあえず若返らせる。
……よし、四つ目にしよう。
今日来ている服の内側の収納ポケットから、どこぞの回復薬の様なコバルトブルーの透明な瓶を取り出す。
教皇様に、その瓶を差し出す!
「あら?これはなにかしら?賄賂なら受け取れないわ」
「ただの年齢反転薬ですので」
「年齢反転薬?面白そうね」
説明しよう。
年齢反転薬とは、飲んだ人の年齢が65~98だった場合、56~89になるというものだ。
だからと言って、69歳が飲んでも96歳というふうにはならない安全仕様だ。
ちなみに副作用らしい副作用は基本無い。
ただ、もし100歳以上の人が飲んだ場合は……
「ちょっと甘めのお水みたいだわ……ぅ」
永遠の16歳になる。
99歳以下だと一日から三日程度の効果だが、100歳以上だと永続する。
試したことはないが、眼の力で知っていた。
そして誕生したのが、目の前の美少女と美人の間の美女である。
綺麗な紫の髪を膝まで伸ばしてる髪の長さ、先ほどまで色を失っていた金の瞳、最近出会うことが増えてきたナイスバディ。
シワシワのおばあちゃんが、ピチピチの女子高生に!
いや、女子高生ちゃうけどね?
「ビューティフォー」
「綺麗デス」
「わかわかし~」
「……いろんな人に狙われそうな技術力っすよね」
「私みたいなおばあちゃん捕まえて綺麗だなんて……あら?あらあら?どうなってるのかしら?」
ぐるぐる回り始めた教皇様。
教皇様は混乱しているようだ。
まあ、いきなり若返ったら混乱もするわな。
シルバーがおかしいんだ。
奴も若返った一人だからな。
今更だが、周りの人達は教皇様を教皇として見れるのだろうか?
だって、老婆が若者になったんだぜ?
でもまあそんなことは一旦端っこに置いて、何しに来たんだろうか?
「はいはい、クク様に質問!」
「クク様?私のことかしら?」
「名前全体的に長いから、最初と最後でククです」
「まあ、なんだか若返った気分だわ」
「若返ったんです。で、質問なんですが、ここに何しに来たんでしょうか?」
「あら?言ってなかったかしら?アリア君に会う為よ。教祖の坊やが今日の祭典中、一緒に行動する人物の推薦があったの。だから、どんな人なのか自分の目で確かめようと思ってたのだけど……良くわからないわ。悪い子じゃないっていうのは分かるのだけど」
俺を物差しで測ろうって?そんなこと不可能!無駄無駄無駄!!
……さて、これからどうしよう?
「えっと、護衛とか連れてきてますよね?」
「えぇ」
「今自分が若返っていることを認識しましたか?」
「えぇ」
「じゃあ、これからどうしますか?」
「そうねぇ……護衛に説明しましょうか」
という訳で、宿の前で待機していた教皇様の護衛に説明タイム!
◇◇◇
教皇誘拐の容疑と教皇を騙った罪により、牢屋に入れられますた。
俺と教皇様の二人で、牢の中である。
ファリエナ達は、祭典を見学しにいってしまった。
「……へい、クク様」
「なにかしら、アリア君」
「出れるの?」
「ん~司教や教祖あたりの人になら、証明できる方法があるのだけど……」
「なるほど、つまり?」
「どうしましょう?」
やっちまったな……なんで若返らせちゃったんだろ?
どうしたもんか。
教皇と一緒に身動きが取れなくなり、祭典は始まった。
祭典終るまで放置ってことが無いことを祈る。
アリア「もしもし!俺俺!俺だって!」
サファイア「……彌蝦慧婁ですか?」
アリア「え!?あ、その、えっと、うん……彌蝦慧婁、です」
サファイア「そうですか。元気にしてましたか彌蝦慧婁?全然連絡よこさないから彌蝦慧婁のこと心配してたんですよ?彌蝦慧婁は今どこにいるんですか?彌蝦慧婁?彌蝦慧婁~」
アリア「……はい、すいませんでした」
サファイア「異世界でオレオレ詐欺とか、バカですか?」
ファリエナ「バカ、です」
アリス「かば?」
クィール「おっバカさ~ん♪」
アリア「皆がイジメるぅ!!クク様慰めて!」
クク「あらあら、いいこいいこ」
アリア「……お婆様」
サファイア「なんか尊敬し始めた!?」
アリア「よし、一旦落ち着こう。クク様の今後をどうするべきか考えるんだ。キュ○ティーハ○ー的な感じにするか、それとも月に代わってお仕置きしてもらうか、悩むぜ」
サファイア「この人誰か止めて!取り返しがつかなくなる前に!」
クィール「私のおもらし親友、昨日から元気ないんだ~」
ファリエナ「自然が足りないデス」
アリス「Zzz」
クク「みんな元気ね~私は体は元気でも心が疲れちゃって」
サファイア「ダメだこりゃ!また次回で!」




