厄介ごとの前の食事は楽しく食べよう!
(*´▽`*)
注・後書きが普段と違います。
視点・サファイア(食事中)
私は現在、マッスル・ホーンと呼ばれる動物のステーキを食べている。
マッスル・ホーンとは、全身が筋肉で角が大きい牛である。
全身が筋肉と言ったが、この牛は筋肉によって守られた極上の霜降り肉が隠れている。
それは心臓附近の肉で、一頭から取れる量は約10キロ以下とごく少量しか取れない。
あと、この牛はとても温厚で、家畜として飼われることがある。
ただ、赤いマントを見せると、白い角が黒くなって襲いかかってくる。
赤いマント限定で、凶暴化する。
マント以外の赤だと何もない。
で、この牛の肉はとんでもなく美味い。
ステーキにした肉に、ナイフを滑らせるだけで簡単に切れ、フォークを刺せば肉汁が溢れる。
噛めば弾力があり、香ばしい肉汁が口いっぱいに広がっていく。
噛まずに舌で味わうと、あっさりと溶けてプルプルとしたゼリーのような食感で食べることができる。
メルノ領で何故か食べ慣れてしまった竜の肉と互角の美味さである。
ちなみに、竜の肉は歯ごたえがはっきりしていて―――
「その肉貰ったぁぁぁぁぁ!!!」
「私の肉ぅぅぅぅぅ!?」
「肉は、食った者の物だ。これ、弱肉強食!!」
「食い物の恨み、地獄の業火より激しいと知れ!!」
◇◇◇
視点・アリア(主人公は、俺だ!!)
高級レストランの個室にて、サファイアとの肉争奪に勝利し最後の一切れを目の前で味わってやった。
他人の幸せを奪うのは最高だなぁ♪
「うぅ……私の肉が……」
「脳内でレポーターみたいなことやってるから、弱者になるんだよ」
いや~愉快愉快。
面白すぎて笑っちまうな。
あ、祭典二日目の朝です。
メルノ領の住人は、朝にガッツリ肉を食べても胃もたれしない胃袋を所有しているのです。
舌も肥えてます。
エルフ達の御蔭で最高の野菜とフルーツが食べられ、肉は竜クラスが多くなってきたからな。
まあ、舌が肥えたって言っても何でも食うんですけどね?
それはさておき、今日は教皇様の相手をしなければならない。
アメリアさんは、昨日の仕事での優秀さ広まってしまったようで、いろんなところから協力要請が来てしまい、今日も忙しそうだった。
仕事に行ってしまうと聞いて、俺はアメリアさんに抱き着いた。
何で自分でもそうしたのかわからず、何時もの様なエロがなりを潜めていた。
五分ぐらい抱き合って、アメリアさんは俺から目を逸らしながら仕事に行ってしまった。
なんか、恥ずかしかった。
で、ファリエナ達は領民達からの買ってきて欲しい物を買い集めに行った。
「領主様、今日はどこに行くんですか?」
「……ん?あぁ、今日は教皇様の相手をしないといけないんだよ」
「へ~そうなんですか」
「うん、そうなの」
「……」
「……」
「……ッ!!」
サファイアは机に手をついて軽く跳び、両足を椅子に乗せる。
足に力を入れて跳び上がる。
サファイアは個室の扉の前に着地し、逃走を計った。
「フッ……残像だ」
「なん、だと!?」
「サファイア、ボス戦では逃走不可の法則って知ってるか?」
サファイアが逃げることは分かっていたので、いつぞやの使い捨て転移道具(現在所持数2個)を使い扉の前に転移したのだ。
無駄使い?それがいいんジャマイカ!
あと、領民から見たら、領主ってボスだよね?
「わ、私、忙しいんで!」
「ほぅ……そう言えばさ、昨日大神殿を襲撃した輩のことって知ってる?」
「は?いきなりなんですか?」
「一瞬で大神殿を氷漬けにしたらしいんだよ。魔法使いの人達の話だと、あの規模の魔法を使用したのに、魔法が発動するまで一切魔力を感じられなかったんだって。不思議だよね~」
「……」
サファイアが汗を大量に流しながら、顔を必死に逸らす。
「アメリアさんの御蔭で氷雪の女神の天罰ってことになったんだけどさ、もしもし犯人が氷雪の女神じゃないなんてことになったら、どうなるのかな?かなぁ?」
「……」
「あれぇ?そういえば、サファイアも特殊な氷魔法使うよねぇ~もしサファイアが犯人だって、誰かが言ったら、どうなっちゃうのかなぁ?」
「わかりました!!行きますよ!行けばいいんでしょ!?」
「じゃあ教祖の相手よろしく」
「……ゑ?」
教皇様の話だと、今日はお偉いさんが集まっていろいろ話し合うらしいからな。
そしてお偉いさんと言えば教祖だろ?
サファイア抜きであの人と一緒にいると、サファイアのこと聞きまくってくるから、うぜぇんだよ。
でも、今日はサファイア有りだから楽が出来るな♪
「残念だったな!!」
「はめられたぁぁぁぁぁ!!!」
「……お客様、他のお客様の御迷惑になりますので、お静かにお願いします」
「「すいませんでした」」
怒られちった。
◇◇◇
「ハッハー!アタイ、参上!!」
「ゴートゥハウス」
「きゅーん」
「く……そんな捨てられた子犬みたいな目で見られても、私は何度でもいいます!!こっちくんな」
クィールが手紙を持ってサファイアににじり寄っている。
間違いなく、あの手紙は厄介事だろう。
サファイア狙いみたいだから、俺は関係ないな。
そこら辺の屋台で買った串焼きを食べながら眺めた。
「アタイ、前払いで報酬貰ってるから、仕事は完璧にこなすよ!」
「うるさいわ!帰れ!それ捨てろ!」
「仕事をやめるなんて、アタイの選択肢にはないわ!!与えられた仕事は完遂する!それがアタイの生き様よ!!」
「馬鹿なこと馬鹿みたいに言って、カッコいいとか思ってんじゃないわ!!」
「まじぃ、めんどいけどぉ、報酬貰っちゃったしぃ、やりしかないみたいなぁ?」
「言い方変えればいいってもんじゃないでしょ!?もういいよ!わかったよ!手紙貰うよ!貰えばいいでしょ!?」
「オフコース!」
「キィ!私よりも犬娘にツッコム方が良いっていうのね!今まで散々私にツッコンでたくせにぃ!!」
「言い方ぁぁぁぁぁ!!!」
寂しかったから混ざったら、サファイアがブチギレた。
クィールと逃げる様に、教皇様のいる大神殿に走る。
「氷の剣振り回すのは反則だと思います!!」
「せめて雪玉が良いと思います!」
「うるせぇぇぇぇぇ!!!」
「「わ~い」」
「ウガァァァァァ!!!」
教皇様に会う前に、戻るかな?
祭典初日の夜の出来事
満月の光が闇夜を照らす。
そんな夜の屋根上を移動する、黒いローブを纏った五人の集団がいた。
「教皇が若返ったってホントなのかね?」
「んなの知るかよ……」
「どうだって良いだろ?依頼されたことを依頼されたようにやる、それが俺達の仕事だ」
「でも、祝福したっていう女神が邪魔してくるんじゃないか?」
「そんなの別にどうだって良いだろ!教皇だろうが女神だろうが、殺せば同じだ!」
彼等は金さえ貰えばなんでもする、裏家業のベテラン達。
彼等は教皇暗殺の依頼を受け、大神殿に向かっている最中だった。
しかし、彼らは知らない。
教皇はどこぞの辺境領主と一緒に寝ており、とあるメイドが護っていることを。
そして、異常な力を持った魔法少女達がここら辺一帯を護っていることを。
あと少しで大神殿にたどり着くというところで、謎の音楽が響き始める。
笛と三味線と小太鼓の音が屋根上に響き渡る。
「な、なんだ!?」
「誰だ!!」
彼等は移動をやめ、各々武器を構える。
そんな彼らを三角形に囲む様に、銀髪の女性と赤と緑の髪の少女の三人が楽器を奏でながら立っていた。
彼等はその姿を見て、余裕を取り戻す。
三人、それも女子供だと油断し、奴隷商にでも売れば臨時収入になると考える者もいた。
しかし、この時彼等は何をおいても逃げるべきだった。
それこそ、這い蹲ってでも。
「ひと~つ!人の世、生き血をすすり!」
「ふた~つ!不埒な悪行三昧!」
「みぃ~つ!醜い浮き世の鬼を!」
「「「月に代わって、お仕置きよ!!」」」
なんか混ざってる。
三人は楽器をその場に置き、彼等に少しだけ近づく。
「ハッ!中々上玉じゃねぇか、良いボーナスになるぜ!」
「あの銀髪の女は俺達で楽しもう」
「誰が最初にヤルよ?」
「ま、待て!なにか、ヤバい……!」
「なんで女子供がこんなところにいるんだよ……しかも、今まで気配すら感じなかったぞ」
三人はすでに勝ったつもりで好きなことを言い、二人は微かな異常を感じ初めていた。
しかし、全ては遅い。
「己が私腹を肥やし、他者を食い物にし、悪を悪とも思わぬ言動!見逃せないわ!!」
銀髪の女が彼等を指差し、そう言い放つ。
そして、親指と中指を合わせ、パチンと弾いた。
「さぁ、狩りの始まりよ」
「ずっと私達のターン!!フレアサークル♪」
「全速☆前進☆DA!!エアフィールド♪」
赤と緑髪の少女が手を振るうと、炎が屋根上の五人全員を囲むように円形に広がり、不可視の風の結界が一切の逃げ道を塞ぐ。
ここまでされてやっと喜んでた三人は何かヤバいと感じ始め、何かを感じていた二人はもうダメだと悟った。
「フフフ、死にたくなければ抵抗なさいな♪」
両手を広げ、彼等の前に立つ銀髪の女性。
その両手には鎖が握られている。
彼等は叫びながら銀髪の女性へと襲い掛かった。
銀髪の女性は楽しそうに嗤い、舌なめずりをして言った。
「正義、執行♪」
◇◇◇
サファイア「あれ?外に何しに行ってたの?」
シルバー「ん~正義の味方ごっこ♪」
ルビー「五人やっつけてきた!」
エメラルド「楽しかった!」
サファイア「へ~あんまり夜遅くまで騒がない方がいいですよ?」
三人「「「は~い♪」」」




