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6.正直に伝えよう

新規エピソードです!

 学園に入学したスレイヤは、主人公のフレアに婚約者を奪われる。

 それをきっかけに、彼女はフレアを陥れるために行動する。

 権力を使ってイジメたり、彼女より自分のほうが優れていることを証明しようと画策する。

 しかし目論見は全てハズレ、結果的にフレアと彼らの親密度上昇に貢献してしまう。

 そして物語序章の最後……。

 スレイヤは魔王に利用され、裏切られて殺される。

 物語の中で経過した時間は、約半年程度だった。

 最低でも半年、主要人物たちから離れ、魔王と関わらず平穏に過ごす必要がある。

 そのための最初の関門は……。


「フレアと関わらないことね」


 帰宅した私は、改めて状況を整理した。

 フレアや他の登場人物たちの存在は確認済みだ。

 アルマの件も、向こうから言われる前に婚約破棄をしてあげた。

 あれはちょっと気持ちよかったな。

 浮気男には相応の罰を与えなきゃね。

 もっとも、この世界ではまだ浮気はしていないでしょうけど。


「さてと……」


 そろそろ夕食の時間だ。

 椅子から立ち上がると、トントントンとドアをノックする音が響く。


「お嬢様、お食事の用意ができました」

「今行くわ」

「はい。旦那様と奥様がすでにお待ちしております」


 私は自室を出て、二人が待っている食堂へと足を運ぶ。

 道中、いろいろと考える。

 注意すべきは学園の中だけじゃない。

 屋敷の中での行動も、よく考えて動かないといけない。

 食堂にたどり着いた私は、にこやかな両親と目を合わせる。


「さぁスレイヤ座ってくれ」

「食べながらでいいわ。学園のことを聞かせてちょうだい」

「はい」


 私は二人に、食事をしながら学園での様子を簡単に伝える。

 スレイヤは主要人物の一人だけど、敵役だ。

 物語は基本的に、主人公の視点で語られていた。

 それ故に、主人公が近くにいない場面で、スレイヤや他のキャラクターが何をしていたのか。

 行動も、考えも、感情も描写されていない。

 特にスレイヤは、フレアに嫌がらせをするタイミングばかり登場して、私生活は描かれていなかった。


「友人はできそうかい?」

「はい。とても親切な方ばかりでした」

「そうかそうか!」

「それが聞けて安心したわ」


 嬉しそうにする二人。

 和やかな会話だけど、私は常に頭を回転させる。

 フレアとは関係ない場面での行動が、物語に大きく影響することだって考えられる。

 私はスレイヤに転生しただけの別人だ。

 本当の意味で彼女を演じることなんて不可能だから。


「そういえば、学園にはアルマ君も入学していたはずだね?」

「――!」

「彼とは上手くやれているかい? 最近あまり会っていないようだったけど」

「……」


 予想はしていたけど、やっぱり確認された。

 私は一瞬ためらう。

 二人も私の表情の変化に気付き、訝しむように見つめる。


「どうかしたのかい?」


 さぁ、よく考えないと。

 彼との婚約破棄は、物語にも大きく関わる重要なポイントだ。

 原作では両親との絡みは描かれていない。

 スレイヤが怒り、悲しみ、感情的になって行動する描写だけがあった。

 二人は物語の本筋に登場していない。

 私のことを溺愛する二人だ。

 言い方次第で、今後関わろうとする可能性はあるだろう。

 それは困る。

 物語の流れを大きく外れると、私がフレアたちの行動を予測できない。

 どう答えるのが正解か……。


「……実は、彼との婚約は解消することになりました」

「――! 解消? 婚約を破棄したのか?」

「はい。私のほうからお願いしました」

「どうしてなの? スレイヤ」


 二人は疑うより心配そうな表情を見せる。

 考えた結果、正直に話すほうが一番いいと判断した。

 二人との……今の関係性ならば。


「アルマ様はいいお方です。私も嫌いではありませんでした」


 もちろん、適度な嘘は紛れさせる。


「ですがやはり、男女の好意があったというわけでもありません。それでも関係を続けたのは、お互いに決まった相手がいなかったからです。ですが、アルマ様は運命の相手を見つけたようでした。口には出しませんでしたが、表情でわかったんです」

「アルマ君が……他の女性に惚れこんだというのかい?」

「そこまでハッキリとは。ただ、よい機会だと思いました。アルマ様にそういう相手ができたのなら、私は応援したい。婚約は、愛し合う者同士がするものです。お父様とお母様を見て、そう思いました」


 二人は私と同じ、家同士が決めた婚約者だった。

 決められた相手だが、幼馴染でお互いのことを好きだった二人にとって、婚約などなくても結婚していただろう。

 結婚し、私が生まれてからも仲睦まじい様子を見ている。

 二人の結婚には、真実の愛があるのだろう。

 本の知識ではない。

 スレイヤの記憶と、今日までの経験からそう思っている。

 間違ってはいないはずだ。

 二人とも、恥ずかしそうに互いの顔を見て確認しているのだから。


「そうか。スレイヤが決めたことなら、私たちは何も言わん」

「ええ、一番はあなたの幸せよ」

「ありがとうございます」


 二人はあっさりと納得してくれた。

 これこそ、私がこの一年で培ったスレイヤとしての信頼だ。

 二人とも私のことを心から信じてくれている。

 それ故に、私の発言や行動に、一々口を挟んだりはしてこない。

 これから先の展開に、余計な茶々を入れられないように。


「アルマ君に好きな人か。あ、ひょっとして、スレイヤも見つけたのかい?」

「え?」

「あら、そうなの? ぜひ紹介してほしいわ」

「そういうわけではありません」


 二人の早とちりに首を振る。

 否定はしたけど、二人とも勘違いしやすい性格だから心配だ。

 私にそういう相手はいない。

 少なくとも生き残るまで、色恋とは無縁だ。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] ≫これこそ、私がこの数年で培ったスレイヤとしての信頼だ。 転生して1年しか経ってないのでは?
[一言] 連載して頂きありがとうございます☆ とても大好きな小説なので、連載が始まってとても嬉しいです♫
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