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44.よく見てください

 夢から覚めた私は目を空ける。

 雲が流れる青空が見える。

 すぐ視界の横には、心配そうに私を見守るフレアがいた。


「スレイヤさん! よかった……気が付きましたか」

「……」


 私は視線を向ける。

 彼女の背後に立っているベルフィストに。

 彼の力で精神世界に誘われ、本体は眠っていたらしい。


「いい夢は見れたかな?」

「……よくはなかったわ」

「へぇ、じゃあ、わかったんだな?」

「ええ」


 私はゆっくりと起き上がる。

 

「大丈夫ですか?」

「……」

「スレイヤさん?」

「違うわ……フレア」

「え?」

「私はスレイヤ・レイバーンじゃない」


 それこそが、私が抱える問題。

 心の隙間を生み出す要因。

 精神世界で自分の姿と感情を客観的に見ることで、私は理解した。

 理解させられた。

 私はただ、スレイヤ・レイバーンを演じているだけの他人だということを。

 そんな私が、フレアの……彼らの未来を変えてしまった。

 本来訪れるずだったエンディングから遠のき、彼らの運命を歪めてしまった。

 私自身が生き残るために。

 破滅エンドを回避するために……。


「私の中にはいつも罪悪感があったわ。自分では気づいていないだけで……いいえ、気づかないように目を背けていた」

「スレイヤさん……」

「私は、私の目的のために多くの人の運命を歪めたわ。きっと一番影響を与えたのは……あなたよ、フレア」


 この世界が、私の知る物語通りの運命を辿ると言うのなら……主人公であるフレアが成すべきことを、私が勝手に代わってしまった。

 結果的にフレアは私の友人になり、私の計画に協力してくれている。

 そんな未来、用意されていなかったはずなのに。

 今さら後悔しても手遅れだ。

 一度進みだした時計の針は巻き戻らない。

 過去に戻ってやり直すことも、今から全部なかったことにもできない。

 だからこそ、後悔するんだ。

 今の私にできることは、ただ……謝ることだけ。

 

「……ごめんなさい、フレア。私は……」 

「――はぁ、スレイヤさん」

「……」

「そんなどうでもいいこと気にしてたんですか?」

「……え?」


 呆れるフレアが視界に映る。

 キョトンとした私は、彼女を見ながら立ち尽くす。


「いいですか? スレイヤさん、私は私です。スレイヤさんが知っている物語の主人公と同じ名前、同じ境遇、同じ容姿でも、今いる私が私なんです」


 フレアは自分の胸に手を当てる。

 優しく、心の在りかを確かめるように。


「よし! 確かめに行きますよ!」

「え、何を? どこに?」

「決まってます! スレイヤさんが助けた皆さんを見に行くんです!」


 そう言って、彼女は私の手を握る。

 強引に引っ張り駆け出す。

 私は転ばないように足を動かし、彼女について行く。


「ベルさんも行きますよ!」

「ふっ、やれやれ」


 ベルフィストも呆れながら後を追う。

 私は言われるがまま、彼女と一緒に学園をかける。

 最初に向かったのは、ライオネスとメイゲンの元だった。

 二人を見つけたのは訓練室だった。


「どうしたメイゲン! こんなものじゃないだろ!」

「……はぁ、もちろん。まだまだいけるよ!」

「そうこなくてはなぁ!」


 私たちはこっそり二人の様子を観察する。


「知ってました? 最近あの二人、よく一緒に居残り訓練してるんですよ」

「そうだったのね」

「はい! 見てください。二人とも……楽しそうです」

「……」


 戦う二人は活き活きとしていて、開放的で。

 ライオネスの心の隙間は、強くなる意味を見つけられないことだった。

 目標としていた父の本心を聞き、彼は強さとは何かを知った。

 何のために強くなるのか。

 今の彼は見つけられたのだろうか?

 わからないけれど、以前に戦った時より成長している。


 一緒にいるメイゲンにとって、ライオネスは憧れだった。

 誰より強く、堂々と振舞う彼に憧れ、密かに劣等感を抱いていた。

 そんな弱い自分と向き合い、乗り越えることで彼は前へ進む勇気を得た。

 今では本当の意味で、彼らは友になれたのだろう。


「次に行きますよ!」


 フレアは私の手を引き、次の場所へ向かう。

 向かった先は図書室だ。

 ここにはいつも、彼がいる。


「あ、いましたね」

「ビリー、相変わらずここにいるのね」


 彼は以前から図書室にいることが多い。

 一人で黙々と本を読む姿は変わらない。

 けど、積み上げられた本のタイトルを見て私は気づく。


「魔法の本以外にもたくさん」

「新しい趣味を探してるみたいですよ。魔法以外のこと知って、楽しみたいからって」


 彼は天才魔法使いと呼ばれている。

 そうさせたのは、亡き両親の影響だった。

 呪いだと彼は勘違いしていたみたいだけれど、子に呪いをかける親なんていない。

 ビリーの両親は、彼に自分たちの分まで幸せになってほしかった。

 ただそれだけだった。

 二人の想いを知ったことで、彼の心は満たされた。

 魔法だけに執着した彼は、もういないらしい。


「次の人です!」


 そう言って有無を言わさず、フレアは私を引っ張る。

 抵抗なんてしない。

 彼女が何を伝えたいのか、少しずつわかってきたから。


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