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その② フレア

 ある人が言っていました。

 この世界は、とある本の中の物語をなぞっているのだと。

 主人公は女の子。

 彼女の周りには、個性豊かな男の子たちがいて、一緒に邪悪な魔王を対峙するそうです。

 そんなお話を聞くだけ、夢物語のように感じてしまいます。

 私も、そんな世界の一員だったら……と思いました。

 

 そしたら、ある人は私に言ったのです。


 あなたが、この世界の主人公だと。


 そう、私のお友達は普通の人ではありませんでした。

 別の世界からやってきた彼女は、主人公と敵対するヒロインに生まれ変わった彼女は……私がお友達になりたいと思ったスレイヤさんだったのです。


  ◇◇◇


「おはようございます! スレイヤさん」

「ええ」

「今日もお昼に集まるんですよね?」

「そのつもりよ」

「じゃあ私も行きます!」


 スレイヤさんと出会ってから、一緒に過ごす時間が増えました。

 彼女はいつも何かを考えているみたいです。

 難しい顔をしている時、そっと横顔を見ると、ちゃんと私の視線に気づいてくれます。

 

「何?」

「なんでもないです!」


 そういうところに、彼女の小さな優しさを感じます。

 

 彼女は自分のこと、物語の悪役ヒロインだと言ってました。

 本来の役目、主人公をイジメて困らせて、魔王に手を貸してもっと困らせて、最後は裏切られて殺されてしまうそうです。

 私はそれを聞いて、そんなひどい役目は絶対に嫌だと思いました。

 スレイヤさんもそう思ったみたいで、そうならないように特訓したみたいです。

 だから彼女は、学園の中でも飛びぬけて強い。

 私は浅学で、難しいことはわからないけど、彼女がすごい努力をしたことは感じます。

 

 そういう努力家なところもすごいと思いました。


 昼休みになると、私たちは中庭に行きます。

 そこには先人がいて、私たちに気付いて手を振ってきました。


「やっと来たね、スレイヤと、ついでにフレアも」

「ついでじゃありません。ベルさんのほうが余計だと思います」

「ひどいな相変わらず」

「今のはあなたが悪いでしょ」


 この人はベルフィストさん。

 スレイヤさんの協力者さん……だけど、私は苦手です。

 なんだか顔が……性格が?

 表現が難しいけど、危険な感じがします。

 どうやら彼は、物語の中ではラスボスと呼ばれているそうです。

 つまり、主人公とは敵同士。

 だからきっと、精神的に距離があるのでしょう。


「そういえば、さっきセイカに釘を刺されたよ」

「へぇ、どこに? 背中?」

「物理的じゃない。言葉のほう」

「そう……」

「ちょっとガッカリしないでくれる?」

「ふふっ」


 スレイヤさんも、よくベルさんをからかって遊んでいます。

 やっていることは私と同じ……けど、なんだかちょっとモヤっとする。


「スレイヤさん!」

「ん? なに!」

「私はいつでも、スレイヤさんの味方ですよ!」

「……急にどうしたの?」

「別に、なんだか言いたい気分になりました」


 私のお友達は凄い人です。

 それを、もっと知ってもらいたいと思います。

 だけど……このままでもいいかなと、思う自分がいるわけで……。

 よくわかりません。


「変な子ね」

「変人だな」

「それはベルさんだけです」

「そうね」

「二人して酷いな」

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― 新着の感想 ―
 『どこに? 背中?』に笑った(笑)
[良い点] サクサク読めるし、程よくハラハラもして面白かったです! ありがとうございます!
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