その① スレイヤ・レイバーン
スレイヤ・レイバーン。
この物語の主要人物であり、私が転生したキャラクター。
本来の役割は、主人公フレアと敵対して、彼女の存在を際立たせる引き立て役だった。
私はそんな役割こりごりだ。
せっかく転生できたのに、悲惨な最後を迎えたくない。
だから――
強くなろうと思った。
ラスボスに唆され、裏切られて殺される。
そんな結末しか用意されていないのだとしたら、私がラスボスを倒せるくらい強くなればいい。
強くなって、私の邪魔をする人たちを薙ぎ払おう。
劇的なエンディングなんて求めていない。
私はただ、平凡ではなくとも、ちょっぴり刺激的な日々を送れたらそれでいいんだ。
「お父様! 魔法のお勉強がしたいです!」
「ん? 魔法の? 構わないが急にどうしたんだい?」
「将来は立派な魔法使いになりたいんです!」
「おお! もう将来のことまで……スレイヤは立派だな。よし、必要なものは用意してあげよう」
「ありがとうございます!」
親バカな両親のおかげで、特訓に必要なものは用意できた。
有名な魔法使いが講師に来てくれたこともある。
けど、それじゃ足りない。
私が超えなきゃいけないのは魔王……この世界のラスボスだ。
一般的な強さで満足できない。
私はこっそり夜中に出かけて、魔物と一人戦ったりして実戦経験をつんだ。
そんな日々を過ごして――
私は学園に入学した。
予想通りいなかいことのほうが多かった。
けれど、鍛え上げた魔法使いとしての腕は役に立っている。
◇◇◇
「なるほどな。それであれだけ戦えたんだね」
「ええ、あなたを倒せるように修行したわ」
「ははっ、怖い怖い。実際凄かったよ。俺……というか俺と交じり合った魔王サタンも驚いてた。これほど戦える人間がいるのかってね」
「そう? 驚かせられたのなら十分ね」
そうは言いつつ、私は満足していなかった。
魔王の依代ベルフィスト、彼との戦いはギリギリだった。
奥の手を使うことを迫られるくらいに。
「次は勝てるように修行しておくわ」
「もう必要ないだろ?」
「わからないじゃない。いつかあなたが裏切るかもしれないわ」
「信用ないなぁ、俺は」
「当然でしょう? あなたは魔王……私を殺すかもしれない敵よ」
もちろん、今はそれだけじゃないのだけど。
「だったらまぁ、その時が来ないことを祈るばかりだな」
「魔王が何に祈るのよ」
「それもそうか。うーん、じゃあ、君に期待しておくことにするよ」
「私に?」
何を期待するの?
そんな疑問の答えはすぐにわかった。
「そう。君は俺の嫁に相応しい。この先もそうあってくれることを期待する」
「上から目線ね」
「魔王だからな」
ここまで話して、私たちはクスリと笑う。
いずれ戦うかもしれないとか話しながら、お互いに本気にしていない。
この先も……こんな時間が続くような……予感がする。
不定期ですけど、こんな感じの閑話をアップしていきます。
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