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第51話 ツーショット

 長いようで短かった準備期間が終わり体育祭当日を迎えていた。競技の練習に生徒会での仕事日々忙しい日々だったが、バイトに追われときと比べるとずっと楽しかった。


 結依がやることがあるため他の生徒たちよりも早く学校に来ていた。学校についてそうそう結依は仕事があると言って行ってしまった。結依に合わせて来ただけなので特にやることがない。学校の敷地内を歩きながら俺は何かやれることは無いかと探していて。そして、ふと人影が視界に入りそちらの方を見るとそこには陽菜ちゃんの姿があった。

 俺はそちらの向かって歩き出すと声をかける。


「おはよう」


 声をかけると少し驚いた反応をし、こちらを向く。そして俺の姿確認すると笑顔を向けてくれる。


「おはようございます!」


「朝早いね、何やっているの?」


「早いのはお兄さんも同じですよ」


「まぁ、俺は結依に合わせて来ただけだけどね」


「そうなんですね。私の方は最終確認の見回りみたいな感じです。せっかく体育祭実行委員になったのでちゃんと頑張りたくて……」


 そうは恥ずかしそうに言う陽菜ちゃん。


「すごいよ。俺も見習わないと」


「そんなたいしたことないですよ。ただ早く起きてきちゃっただけなので」


 手をパタパタさせながら照れ隠しなのか言い訳のような事を言う。そして少し無理やりに話を変えてきた。


「そうだ! せっかくの体育祭なので写真撮りましょうよ!」


 そう言ってスマートフォンを取り出すとこちらに体を寄せてきた。


「ほら、撮りますよ!」


 勢いに押されてカメラの方を見る。ぴったりくっついているせいで陽菜ちゃんの体温が伝わってくる。動揺をごまかすようにカメラに向かって笑顔を向ける。


「撮りますね」


 その言葉と同時にシャッター音が数回なる。

 撮り終えた写真を確認すると満足そうな表情になる。


「ありがとうございます。いい写真が取れました! 体育祭が始まったから摸たくさん写真撮りましょうね! それだは失礼します!」


 そう言って駆け足でいなくなってしまった。途中から陽菜ちゃんの勢い日ほんろうされっぱなしだった俺は遠ざかっていくその後ろ姿をただ見送った。陽菜ちゃんの姿が見えなくなったところでスマートフォンから通知音がなる。


 確認の為に画面を見るとそこには陽菜ちゃんのからメッセージが届いていた。開くと一枚の画像が送られてきていた。

 自然に頬が緩むのを感じる。送られてきたのはさっき撮った写真だった。陽菜ちゃんの方は撮り慣れているのかとても可愛く映っているが、一方で俺の方はぎこちない笑顔だ。

 これまでスマートフォンを持っていなかったのでこうやって思い出の写真を共有することにあこがれていた。ここでその夢が叶い嬉しさが込み上げてくる。

 きっと今日の体育祭は思い出に残るいい日になるに違いない。そんな予感がしてわくわくしてきた。


 結依や陽菜ちゃんの、生徒会のみんななどたくさんの人たちと一緒に準備してきた体育祭を楽しむとき心に決めみんながいるところに足早に向かった。


 体育祭がいよいよ始まり周囲は熱気包まれていた。友人同士で集まり話盛り上がっているところもあれば、仕事がありせわしなく動いている人など様々な人がいる。


 俺はもうすぐ始まるリレー競技に参加するために待機場所にと向かっていた。今やっている競技を横目に歩いていくと成瀬たちの姿が見えてきた。駆け寄ると俺以外の人たちはもうすでに集まっていた。どうやら俺が最後だったようだ。


「悪い遅くなった」


「いや、時間までまだあるから問題ない。走る順番に並んで欲しいそうだ」


「了解」


 走る距離はトラック半周であるため入場と同時に二手に分かれるため、男女わかれて二列で走る順で待機する。最初に女子が走りそのあとに男子と男女が交互に走っていくのだ。

 自分の走る順番で並ぶと隣に結依がいる。


「いよいよ私たちの出番ですね。一位目指して頑張りましょうね」


「あぁ、頑張ろう」


 少し待ち一つ前の競技が終わるとアナウンスの声が聞こえる。


「次の競技は男女混合リレーです。競技に参加する人たちは準備をお願いします」


 案内係の人の指示に従った入場する。

 うそ路に並んでいたアンカーの成瀬から声を掛けられる。


「緊張しているのか?」


「少しだけ……こういった事にはあんまり慣れていないから……」


「頻繁にあることじゃないからな」


「バイトで人前に立つことは数えきれないくらいあるのに不思議だな」


 俺の言葉に何とも言えない笑みを浮かべる成瀬。


「気楽に頑張ろうぜ。楽しむのが一番だ」


「そうだな」


 みんなが定位置についた。一番目に走る人たちがすでに並んでいるのが見える。

 スタートの合図をする人が出てくる。

 よく見ると陽菜ちゃんでその手にはピストルが握られており、頭には大きな音への対策としてヘッドホンがつけられている。

 みんなの準備が整ったことを確認するとピストルが握られている手の方を高く上げる。そして陽菜ちゃんの声絵が聞こえてくる。


「位置について、よーい――」


 パンッ


 ピストルの音が鳴り響く。リレーがついに始まった。

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