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90 ダネルが見た人

「誰か、敵の根城に心当たりがありそうな者はおらぬか?」


 アドラダワー院長は、ギルド職員に向かって言った。


「院長、職員の人に聞いても」

「なんじゃ? お主、ここまで来て、黒幕が誰かわからんのか?」


 おれはまわりを見た。シーンとしてる所を見ると、おれだけ全容が掴めてないみたいだ。


「カカカ様、さきほどダネル様は、犯人は冒険者の格好だと言いました」

「ええ。言いました」

「冒険者と繋がりがあると言えば、ここギルドです」

「たしかに。でも、みんな関係ないんでしょ?」

「ひとりだけ、ここにいない職員がおります」


ひとり? おれは考えた。あっ!


「バルマー局長?」

「はい。私は何かの間違いだと思いますが」

「あの局長ってジモティ?」

「カカカ様、ジモティとは何です?」


 そうでした。ここは異世界でした。


「ああ、地元民。この島の生まれですか?」

「いえ、十年ほど前、島に来られました。大陸のほうの生まれだそうです」


 大陸、本州ってことだな。なら岡山県民か。うちの死んだじいちゃん、岡山県民は信用するなって言ってたな。


「地元民でもないのに、局長?」

「大変に優秀な方でして、当時のギルドはろくな職員がいなかったのですが、あっという間に生まれ変わりました。その功績もあり、二年前からギルド局長に抜擢されております」


 ただの職員が、途中からネクロマンサーになったとは考えにくい。小さな島なら牛耳れる。そんな狙いでやって来たのだろうか。


 おれは、ガレンガイルのほうを向いた。


「隊長、バルマーの家に行こう」

「待てよ。相変わらず気が早え」


 ダネルが口を開いた。


「冒険者じゃねえ格好のやつが、ひとりいたぜ。おめえから過去の戦闘を聞いといて良かった。じゃねえと見過ごすとこだった」

「どんな格好だ?」

「仕立てのいい背広に、蝶ネクタイ」

「執事! ヨーフォーク邸か!」

「おれは、その執事の顔は知らん。だが、おめえの話を聞いた時に変な話だとも思った」

「カカカ殿、ヨーフォーク邸とは?」


 横からガレンガイル隊長が聞いてくる。


「ほら、二回目の酒場で話したやつです。二度にわたる死霊退治の」

「あそこか!」


 立ち上がろうとしてふらついた。ガレンガイルが手を貸してくれる。


「すぐに部下を集める。ひとりで行くな。いいな?」


 おれはうなずいた。


「道具屋の言う通り、せっかちじゃの。お主ら、せっかく治療師がおるのに、その身体で出かけるつもりか」


 振り返ると、アドラダワー院長が数珠の首飾りを持っていた。


 おれらに向けて手をかざす。全身から筋肉痛のような疲れが消えた。隣のガレンガイルは、包帯を巻いていた腕を動かす。


 おれとガレンガイルは、うなずき合って駆け出した。


「これじゃ。困る患者は、往々にして治した途端に走り出す」


 アドラダワー院長の声が後ろから聞こえ、おれは手を振って感謝を伝えた。


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