67 人探しの依頼
「ご不満ですか?」
グレンギースが聞いてきた。困ったのが顔に出たようだ。
「いえいえ。おれはあまり強くないのでね。どうやって金を稼ぐか、頭を捻ってただけですよ」
「であれば、是非とも、人探しの案件を」
ふいに口を開いたのはバルマー局長だ。
「この所、増えております。報酬も良く、高いものだと金貨一枚になります」
金貨一枚! 10000Gだ。元の世界では百万円。見事な逆転さよならホームラン。
「ええ、しかし、人探しは見つからない、または亡くなっていた場合は無効です」
グレンギースが横から付け加えた。おれは逆転さよならホームランのヒーローインタビューを受けている自分を消した。
そうか、無駄になる事も多いんだな。それに自分からいなくなっていたら、探すのも大変そうだ。
「グレンギース、早いもの勝ち、という側面もありますよ」
なるほど。依頼を受けるというより、言葉は悪いが「賞金首」みたいな物か。
バルマー局長は、内ポケットから三枚の依頼書を出した。普通の依頼書とは違い、下半分に似顔絵が書かれている。
「私もこのように、何件かは常に持ち歩いております。ひとまず、こちらを差し上げておきましょう」
バルマー局長がおれに差し出す。
「いいんですか? ご自身のは?」
「同じものが何枚もギルドには用意してあります」
そういう事か。おれは三枚の似顔絵を受け取り、リュックに入れた。
「カカカ様、行方不明者は犯罪に巻き込まれている場合もあります。お気をつけ下さい」
「グレンギース、冒険者は危険を冒さねばならぬ職業だ。机に座っているだけの我らが進言する資格はない」
あらら、ちょっと気まずい雰囲気が。その時、天から救いの女神の声がした。
「わたしだけど」
上を向いた。ロード・ベルの魔法で話す時は、なんとなく上に向いてしまう。
「はい。こちら湾岸署のカカカ」
「意味わからないわ」
思いついたジョークはスベった。
「火急の依頼があるの。オリーブ畑の妖獣駆除」
「やります!」
幸運の女神、マクラフ婦人からの依頼は必ず受けるようにしている。彼女が選んだ、という事は、それは今のおれが経験すべき案件だ。敵も倒せる範囲だという事になる。
依頼のオリーブ畑は、ここからギルドへの途中にある。白い風車が目印だった。
おれは、このまま行くと伝えた。ロード・ベルの直接依頼は、ギルドに依頼書を取りに行かなくても受けれる。
「マクラフからですか?」
「そうです。おれは途中で降りて直行します」
「まこと、そなたは冒険者の鑑でありますな」
バルマー局長が満足そうに言って、うなずいた。





