16 初戦闘は絶体絶命
右足が動かない。
左足だけに体重を載せ、四つん這いになった。
棍棒はだめだ。両手に石を掴む。右からデフナッシー。右手の石で叩く。二度目を叩こうとしたら一旦逃げた。そうしていると左から来た。左手の石で叩く。
これはもう、モグラ叩きだ。押し寄せる八匹のデフナッシーを必死で叩いた。
デフナッシーは思ったより素早い。叩ければいいが、外すとすぐ逃げる。
それに思ったより頑丈。一撃では死なない。三回は叩く必要があった。
一進一退の攻防だったが、着実に数は減っている。しかし、おれの動きも疲労で鈍い。叩いても、当たったり当たらなかったり。そろそろ、腕をあげるのもしんどい。
何回叩いたのか解らなくなったころ、残る一匹まで追い詰めた。
「来い! このやろう!」
デフナッシーに言葉は解らないだろうが、おれに向かってガサガサやって来る。その時、首筋にガサガサ這い上がってくる物があった。
「うっわ!」
あわてて手で払い落とす。フナッシーだった。いや! こいつは無害だ!
デフナッシーは?
顔を上げた。すぐ前にいる。
デフナッシーが、ぴょんと跳ねた。体を丸め、尻尾の針を前に出す。
左目に当たる! 首を捻って避けた。まぶたの上にかすった。
うしろの地面に着地したデフナッシーに石を投げる。当たった!
おれは、飛びつくように倒れ、もう一つの石で叩いた。危ねえ! 目に刺さったら、さすがに死ぬんじゃねえか?
ほんと、ゲーム内で死んだら、どうなるんだろう? それを確かめる手段はないのか?また、復活の呪文、いわゆる生き返らせる魔法があるのか? わからないことが多すぎる。
おっと! その前に、まだ戦闘は終わってない。まだフナッシーが残っていた。右足が毒でマヒしているので、棍棒を支えにして立った。
なんてこった。ほんとに棍棒の特殊効果を使ってるよ。たしか、特殊効果に「杖の代わりにもなる」って書かれてあった。
フナッシーは、昨日と同じだ。うろうろと逃げるだけ。
おれは棍棒の杖をつきながら、それをよたよたと追いかけた。足元に来たら杖の先で潰す。
十匹ほどを潰すと、もういないようだった。精根尽き果て、その場に座り込む。
「毒消しのお茶を作っとこう」
オヤジはそう言って、ティアを連れて店に帰っていった。
おれは疲れた。畑の上に大の字になって寝転ぶ。
最悪の戦闘だ。
おれには、アナライザー・スコープというスキルがある。それなのに、よく見ていない。思い返せば、家電の説明書とかも、ざっと読むタイプだ。
カサカサと音がして、そっちを見るとフナッシーだった。野菜の裏に隠れていたらしい。
なんだか、もう戦闘をする気になれない。手のひらをフナッシーの前に置くと、カサカサと乗っかってきた。こいつバカだな。畑の外に放り投げた。
足も腕も、パンパンに筋肉痛だ。重い身体を持ち上げる。
水晶を拾い集め、右足を引きずりながら氷屋の店に戻った。





