119 キコーダ
戦闘が終わったので、あらためて部屋を見渡す。
ティアが座り込んでいて、その肩をマクラフ婦人が抱いていた。
なんでだ? 急いで自分のパラメータを出して仲間の欄を見る
名前:ティア
職業:武闘家
レベル:12
体力:90
魔力:0
ええ! ティアの体力は150だったはず。なんで体力そんなに減ってんの?
ティアに駆け寄った。
「ティア、どうした?」
ティアは「へへ」と軽く笑った。
「いや、笑い事じゃない。どこをやられた?」
「ティア殿、どうされた?」
ガレンガイルも心配そうに駆け寄ってきた。
「大丈夫。やられたわけじゃなくて、自分の技のせいだから」
「さっきのか! あれ、どうやった」
「あれ? カカカ殿、あれとは?」
「おれの目がおかしくなけりゃ、さっき、ティアは悪霊を殴った」
「なっ!」
ガレンガイルが言葉を失っている。やっぱ、そうよね。こっちの世界の人間でもおどろくよね。
「あたし、最初の死霊との戦いで何もできなかったでしょ。カカカに助けてもらって」
だから、そこは違うんだが、もう言うまい。おそらく、この子は自己嫌悪を感じたんだ。自己嫌悪って、他人が言って慰めれるものでもない。
「だからね、武闘家の古い文献を調べて、ずっと研究してたの。でも反動がすごくて」
ふぅ。限界を突破するのって、いつも若者だわ。
「生命力を使った打撃ね。見たことはあるわ」
マクラフ婦人はそう言って羽ペンを出した。
「ティアちゃん、でも今は使っちゃだめ。身体に負担がかかりすぎてる」
婦人がティアのひたいに手を置く。ふたりが鈍く光った。回復魔法だ。
自らの生命力を使った打撃とはね。なんか、とんでもない武闘家になりそうだ。
ふと、様子がおかしいガレンガイルを見た。おいおい。怒りの形相で自分の手を見てるよ。
「師匠、まさか、なぜおれにはできない! とか、考えてないよね?」
「いや、攻撃が効かない、と思い込んでいた自分に腹が立つ」
ふぅ。若者だけじゃないな。達人って、おっかない。ほっとこう。
しかし、特殊スキルで見た謎な技がこれか。「キコーダ」とかだったな。
うん? キコーダ? 気功打か!
「パラメータって、あいかわらず適当だなぁ」
「パラメータ?」
おれが思わず漏らした言葉に、ガレンガイルが反応した。
「いや、この情報が見れるやつ」
「ああ、ロード・アイの魔法の事か」
「ロード・アイ?」
知らない単語が出てきた。
「そうか。カカカの国ではパラメータと言うのか。このオリーブン国ではロード・アイと言う。城が壊れたので使えないと思ったが、使えて良かったな」
ちょっと待って。おどろき情報が多すぎる。おれは頭を整理した。
ロード・アイと言った。ロード・ベルと同じようなものか。
ロード・ベルは離れた相手に声を送る。じゃあ、ロード・アイは?
離れた相手に画像を送る、という事か!
「あー、その、おれは新参者なんで、よく知らないんだが、ロード・アイの魔法は誰がかけてるの?」
「誰? オリーブン城の魔法局だが」
そういう事か! TVかWIFIみたいなもんだな。島民全員にかける魔法ってわけだ。でもそれ、プライバシーはどうなんだろ。考えるとややこしいので、とりあえず考えるのをやめた。





