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太陽の勇者は沈まない ~マモノ災害と星の牙~  作者: 翔という者
第3章 予知夢に集う者たち
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第63話 ブラックマウント、決着

「はぁぁぁぁぁ!!」


 日向が狙うはブラックマウントの左脚と首の後ろの間。

 要は左肩、なのだろうか。そこ目掛けて剣を振り下ろす。

 刃は甲殻を切り裂き、鮮血を噴き出させる。


 その逆、右肩では日影が暴れまわっている。

 めったやたらに剣を振り回し、ブラックマウントを斬りつけているようだ。


「おるぁぁぁッ!!」


 切り裂かれた甲殻に、今度はシャオランが攻撃を仕掛ける。

 震脚を踏み、両腕を前後に突き出すように掌底を叩き込む。


「……はぁッ!!」


 ズン、とブラックマウントの身体に衝撃が伝わったのを感じた。


「ガアアアアアアッ!!」


 ブラックマウントは、まとわりつく三人を振り払うべく、脚で踏み潰そうとし、牙で噛みつこうとする。


 しかし、それらの攻撃は三人には届かない。三人の立ち位置、ブラックマウントの肩周辺は、踏みつけも牙もギリギリ届かない絶妙なポイントだ。ガンガン攻撃を浴びせることができる。


 ブラックマウントも後退し、三人を肩周辺から引きはがそうとするが、そうしたら三人もブラックマウントを追いかけ、再び肩周辺に張り付く。

 

「ガアアアアアアアアッ!!」


 ついにしびれを切らしたのか、ブラックマウントが上体を持ち上げる。押し潰し攻撃だ。その攻撃こそ、肩周辺にまとわりつく相手に最も有効な攻撃であり、三人が待ち望んでいた攻撃だった。


「来た! シャオラン、離れろ!」

「わ、分かってるよぉー!」


 日向とシャオランはブラックマウントから距離を取る。

 そして手はず通り、日影はブラックマウントの懐に潜り込む。


「……おぉぉぉぉぉッ!!」


 日影が叫ぶ。すると、彼の持つ剣から炎が噴き出す。

 それでブラックマウントの腹を焼き貫くつもりだ。


「さぁて、来いよカメ野郎。ぶち抜いてやるぜ」

「ゴオオオオオオオオッ!!」


 燃え盛る剣を構える日影。覆いかぶさるブラックマウント。

 そして、黒い巨体が勢い良く倒れ込み、大地を揺るがす震動が走った。


「うっ……!」

「うひゃあっ……!?」


 足元にビリビリと伝わった衝撃と、舞い上がる砂ぼこりで、日向とシャオランは怯んでしまう。ブラックマウントは、日影はどうなったのか……。




「……ガアアアアアアアアアアッ!? ガアアッ、ガアアアアアアッ!?」


 ブラックマウントの苦しむ声が聞こえる。

 日影の捨て身の一撃は効いているようだ。

 だが、まだ息はある。

 日影に頼まれた通り、ブラックマウントにトドメを刺さなければならない。


「シャオラン! 行こう!」


「こ、ここまで来たら、もう決着を付ける方が早いかな……! 覚悟完了、よし行くぞ……!」


 日向とシャオランはブラックマウント目掛けて走り出す。

 この勝負を決めるために。


「ゴオオオオオオオッ!!」


 ブラックマウントが二人に向かって顎を開く。ブレスだ。


「……ふッ!!」


 そのブラックマウントの顎下に潜り込み、シャオランが震脚を踏む。

 ズシンという震動音が鳴り響き、足元の岩盤に亀裂が入る。


「……はぁぁぁぁッ!!」


 そして繰り出したのは裡門頂肘りもんちょうちゅう

 肘はブラックマウントの顎をかち上げ、その巨大な頭を跳ね上げた。


「ゴ………ッ!?」


 ブレスを吐くために開いていたブラックマウントの顎が、強制的にバグンと閉じられる。瞬間、ブラックマウントの口元で大爆発が起こった。ブレスの暴発だ。


「ゴアアアアアアアッ!?」


 絶叫し、がくんとブラックマウントの頭が項垂れる。

 脳震盪(のうしんとう)を起こしたのだろうか、脚に力が入らないようだ。


「ヒューガ!」


 シャオランが日向を呼んでいる。

 見れば、ブラックマウントの顔面の側で、バレーボールのレシーブのように拳を構え、こちらを見ている。

 

 それを見て、その意図を察し、日向は思わず固まってしまう。


「……そのポーズは、まさか、飛び乗れと?」


「そうだよ!」


「その握りこぶしを踏み台にして、ブラックマウントの頭の上に乗れと?」


「そ、そうだよ!」


「いやいやシャオラン、俺の運動神経のひどさ、もう知ってるでしょ? 例えば一般人の運動神経の太さがきゅうりくらいだとするよ? その場合、俺なんかそうめんだよ? 束じゃなくて一本分の。そんなハリウッドスターみたいなマネ、俺が出来るワケ……」


「ひ、ヒューガ! 早く! ブラックマウントが起きちゃう!」


「……ええいもう! やってやらぁ!」


 日向はシャオランに向かって走り出す。

 近づき、シャオランの拳に向かってジャンプし、飛び乗る。

 

(……足が拳に乗った。踏み込み、一気に飛び上がる!)


「いっけぇぇぇぇぇ!!」

「うおわあああああ!?」


 シャオランが、思いっきり腕を振り上げ、日向を打ち上げる。それに合わせて、日向もシャオランの手の上で跳躍する。


 ハッキリ言って、日向の跳躍のタイミングは全く合っていなかったが、それでもシャオランの常人離れした怪力が、無理やり日向を打ち上げてしまった。


 ブラックマウントの頭より高く打ち上げられた日向。

 眼下には、ちょうどブラックマウントの脳天が見える。


「コイツがどれだけ大きなマモノでも、心臓が止まれば死ぬ。脳が破壊されれば息絶える。派手に真っ二つにする必要は無い。急所をコイツで貫けば終わる……!」


 ブラックマウントの脳天を見下ろしながら、日向は剣の刀身に火が灯るようイメージする。すると剣は日向の望み通り、その刀身に紅蓮の炎をまとわせた。


 そして……。


「これで、終わりだぁぁぁぁぁ!!!」


 日向はブラックマウントの脳天目掛けて、思いっきり剣を突き刺し、レバーを引き倒すように深く抉った。


「ガアアアアアアアアアアッ!?」


 ブラックマウントが絶叫し、その頭を思いっきり振り回す。


「うわぁっ!?」


 その拍子に、日向は頭から振り落とされ、地面に叩きつけられた。

 ”再生の炎”が身体を焼くが、気にならない。


 それより問題はブラックマウントだ。

 日向は、攻撃の結果を確認するため、急いで顔を上げた。


「ガアアアアアアアアアア……ッ」


 それが断末魔となり、ブラックマウントはついに倒れた。

 後に残るは、戦いの終わりを告げる静寂のみ。



「……お、終わったぁぁぁぁぁぁ……」


 ようやく勝利を実感し、シャオランが座り込んでしまった。


「日向くん! お疲れ様!」

「何とか、勝てたか」


 皆の喜ぶ声が聞こえる。

 走り寄ってきた北園の手を借りて、日向は何とか立ち上がる。


「みんな、お疲れ様。けど、とりあえずまずは日影を助け出そう。何とかしてブラックマウントをどかさないと―――――」


 その時、日向は目の前に不思議な存在を見つけた。

 女の子だ。

 こんなところに小さな女の子がいる。

 深緑色のローブに、大きな杖。青と緑のオッドアイ。

 肩にはキレイな赤色の鳥。


「あの子は、いったい……?」


 その少女は、ブラックマウントの亡骸に近づき、小さな手の平で触れる。


「……お疲れ様。どうか、安らかに……」


 その子がそう呟くと、ブラックマウントの身体から、何やらエネルギーのようなものが出てきて、その女の子に吸い込まれていく。


 そして、ブラックマウントの甲殻が、肉が、みるみるうちに溶け出して、最後にはとうとう骨だけになってしまった。


「……んあ? なんだこれ? オレ、助かったのか?」


 もはや骨だけとなってしまったブラックマウントの腹下で、日影が身体を燃やしながら起き上がる。しかし、日向たちは日影の無事を喜んでいる場合ではなかった。



「き……君は一体……? 今、ブラックマウントに何をしたんだ……?」


 日向は、恐る恐る聞いてみる。

 するとその子は、真っ直ぐ日向を見据えて、答えた。


「私は『星の巫女』。この星の力を預かり、『この子たち』の怒りをあなたたちに伝える者です」 

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― 新着の感想 ―
[良い点] シャオランくんの「いっけぇぇぇぇぇ!!」がひたすらカッコイイ⸜(*ˊᗜˋ*)⸝ そして星の巫女の登場……! オッドアイ好きなのでたまりません( *´艸`)♡
2022/01/03 20:59 退会済み
管理
[良い点] ついに本当の敵とご対面! でも、巫女って……。 事情が気になっちゃいます! ハイスピードな捨て身のバトル、視点も多角的で、勉強になります。 [気になる点] 覚悟完了! シャオラン君、日本語…
感想一覧
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