表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/36

第四十七章 真壁の家紋  

十月十八日。

 直人のもとに、封書が届いた。

 差出人の名前はない。消印は千代田区。封筒の中に、一枚の写真と、手書きのメモが入っていた。

 写真。古いモノクロ写真だ。昭和二十年代のものと推定される。

 写真に写っているのは、二人の男性。一人は和装、一人は洋装。背景は——皇居の二重橋の前。二人は並んで立ち、カメラに向かって微かに笑っている。

 手書きのメモ。

『写真の左が川村啓一郎。右が私の祖父、真壁鉄太郎。二人は敵対していたのではありません。——真壁透』

 直人は写真を凝視した。

 川村啓一郎。GHQ文書を改変した「K」。更新派の協力者と推定される人物。

 真壁鉄太郎。真壁透の祖父。維持派の番人。

 その二人が、並んで笑っている。

 直人はメモの裏を見た。もう一行、書き加えられていた。

『祖父のネクタイの家紋をよく見てください。』

 直人はルーペを取り出し、写真の真壁鉄太郎の胸元を拡大した。洋装のスーツに、ネクタイ。ネクタイには小さな家紋が織り込まれている。

 直人はさらに拡大した。

 家紋は——二重円だった。

 外側の円は維持派の印。だが内側の円は——崩し字ではなく、別の文字が入っている。

 ルーペの倍率では限界だった。直人は写真をスキャンし、早川に送った。

『真壁の祖父のネクタイの家紋を最大限に拡大してくれ。内側の文字を読みたい。』

 早川の返信。

『やりました。内側の文字は——「未央」っす。』

 直人は椅子から立ち上がった。

 真壁鉄太郎——維持派の番人が、「未央」の文字をネクタイに織り込んでいた。未央印。失われた勅印。

 維持派は、未央印の存在を知っていた。知った上で——それを封じるのではなく、身につけていた。

 真壁透が言った言葉が蘇る。「維持派と更新派は、対立していたように見えて——同じ問いを共有していた」。

 対立ではなく、対話。

 維持派は未央印を封じたのではない。未央印の記憶を保持していたのだ。

 直人は真壁に返信を書いた。

『写真を受け取りました。お祖父様のネクタイの「未央」の文字を確認しました。お祖父様は——未央印の場所を知っていたのですか。』

 返信は三十分後。

『祖父は知っていました。そして私も——知っています。ただし、私が知っているのは場所ではなく、条件です。未央印は、五つの封印がすべて正しく解かれ、かつ封印を解いた者が「国家の外に立つ者」であると認められたとき——自ら姿を現すと。』

『自ら姿を現す? 物理的な印章が?』

『物理的な印章ではありません。未央印は——形のある物体ではないのです。鷺宮さん、この先は直接お会いして話したほうがいい。十月二十三日の前に。』

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ