姿なき籠城犯
電話の相手は木原だった。
『合田警部。大変です。センタースペードに爆弾があります』
「爆弾だと。いいか。警視庁に爆破予告が届いた。午後八時にそのビルが爆破される。それまでに爆発物処理班を派遣するから非難しろ」
『無理です。今警備室から電話しているのですが、犯人の策略によって閉じ込められました。爆弾は警備室にあります。出入り口はありません』
「人質は」
『百人以上です。この場には私と大野。そして会社員が四人います』
「分かった。その爆弾はパスワードを乳六することで解除できる。ただし三回間違えれば爆破される。何とかしろ」
『パスワードによる解除は最終手段ですね。それとこのビルは犯人によって完全な密室になりました。突入時には気をつけてくださいね』
電話は切れた。その後大野は佐野に聞いた。
「ここの警備室から防犯カメラの映像は観られますか」
「はい。館内放送もできます」
木原が反対した。
「館内放送は止めろ。今このビルが爆破されると放送したらパニックになる」
佐野は防犯カメラの映像を見せた。どのカメラにも籠城犯の姿はなかった。木原は急いで合田にメールを送った。
『籠城犯の姿はなし』
「後は死角に籠城犯が隠れている場合です」
川上が言った。
「それはありません。内の防犯カメラには死角がありません」
大野は爆弾の前に立った。
「いずれにしろ透明人間と名乗る犯人はこの中にいる。そして解放してみせる。この殺意に満ちたこの空間を」




