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25 王都観光

 翌日、今日は王都メルリード観光だ。

 といっても専用のバス会社があるというわけでもない。

 王都観光向けの辻馬車があるのだ。


「こちらが、王宮でございます。今から何百年前からこの地を治めております」

「へぇ、けっこう長いんだ」

「青い屋根が綺麗ですね。五階建ての建造物は、ここ王都一番の高さを誇ります」


 堀を挟んで王宮の前を通る。


「次に高い建物は聖パスタイル聖堂の鐘つき堂でございます」


 馬車が王城前ロータリーを回る。

 通りを少し進むと、その聖パスタイル聖堂にやってきた。


「白い建物が特徴的ですね。これは聖属性を象徴する白をモチーフにしております」


 なるほど、聖属性って色名でいえば白属性だもんね。

 そりゃそうか。

 逆に黒、闇属性を嫌っていて、差別しているなんて実体もあったりする。

 しかし人々にも闇属性が得意な人とかけっこういて、弾圧が問題になっているらしい。

 市民は平等というのが教会の教えなのだけど、それに反するのではないかって問題だそうだ。


「隣には聖アンナ様の孤児院がございます」


 孤児院か。これもわりと定番ですな。


「そして通りをもう少し行った所にあるのが、冒険者ギルドでございます。国で一番大きなギルドとなっています。冒険者ギルド王都メルリード支店ですね」


 確かに建物がとても大きい。

 それでも王宮ほどではないけど、民間の施設としては破格だろう。

 これだけの権力があって国と揉めていないというはけっこう無理があるのでは、なんて考えてしまう。

 俺のところに集まってくる情報にも、冒険者ギルドと王宮が喧嘩しそうなネタなんかもいくつもある。


「一階が酒場とカウンター、二階が図書館、三階がギルドマスター室、サブマス室、特別室となっております」


 例えばアースドラゴンの討伐をめぐり、Aランク冒険者率いる冒険者ギルドが倒すか、それとも王立騎士団がメインを張って、国主導で退治するかで揉めたりした。

 けきょくその時は、王都から遠いという理由で冒険者ギルドが冒険者を派遣することで決着がついたんだったかな。

 ドラゴンの素材は錬金術でも使用され、また魔術の贄にしたりもするので、重宝がられる。

 国も素材は欲しいだろう。

 でも国王は争いを好まないので、冒険者ギルドに「貸し一つ」で譲ったのだ。

 まったくよくできた国王だことで。


 そうだ、ワイン、王様にも持って行ってやるか。

 しょーがないなー。

 俺以外に持ってる人、いないもんな、たぶん。

 領主に飲ませたのに王様には飲ませないなんて、不敬で捕まってしまうかもしれないし。

 あとで宿のマスターに相談しよう。


「こちらのロータリーには、サバルキア四世の彫刻がございます。その昔、エルダ―ドラゴンを倒した記念とされています」


 おぉぉエルダードラゴンか。

 なんでもこのクラスの古竜は、めっちゃヤバいやつがいるという話である。

 俺のところにも逸話がいくつも残されている。

 曰く、町が全滅した。王都を混乱の渦に巻き込んだ。

 討伐に出した騎士団が壊滅してほとんど帰ってこなかった。


 かなりの先頭好きでヤバい古竜がいたんだと。でもそれを倒したのがサバルキア四世という王様だったと。

 もちろん王は指揮を執るもので、自分で戦うわけではないのだろうけど、それでもその功績は大きい。

 今も古竜なんていたら、ヒヤヒヤものだな。

 今の所、そういう噂は聞かない。

 ただ、国境を越えた、遠い国の話となると、ちょっと事情も変わってくる。

 まだ竜の伝説は多いのだ。それも近年のものとかもある。


「こちらのロータリーには、聖アンナ様の奇跡の木がございます」


 かなりの大木だった。遥か昔からここにあるらしい。

 ご利益があるとして、熱心に祈ってる人が周りに何人かいる。

 ちょっと木の種類は分からない。

 たぶん、トネリコだろう。ちなみによく異世界に搭乗するユグドラシルもトネリコだとされる。

 トネリコはヨーロッパによく生えている広葉樹、落葉樹だね。


「この通りが王国一番の商店街となっております。高級店ばかりでございます」


 伝説の武器やアクセサリーとかも置いてあるとか。

 それから国で一番高いという噂のレストランとかもある。


「テリア、高級レストランだって、食べたい?」

「え、私? あんまりピーキーなのはちょっと……」

「だよな」


 高級店だから口に合うとは限らないのだった。

 たぶんうまいだろうけど、王都の店はわりあいどこでもうまい気がする。


「あとドレスコードとかあるとキツい」

「そっか」


 テーブルマナーとかすごいうるさそうだもんね。

 テリアはハイエルフという身分を明かせば利用はさせてもらえるだろうけど、俺は微妙だ。


 そんなこんなで王都を一周した。


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