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黒幕幼女の異世界ゲーム  作者: バッド
22章 黒幕のいる世界なんだぜ

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最終話 これから

 魔導列車は滑らかに地上すれすれに整えられた道路の上を飛んでいく。巨大なる豪華客船、魔導列車号は人々の歓声を後に飛行していく。大陸間魔導列車なのでつと、幼女は強く言い張りまつよ。


「凄い凄ーい! こんなに速いんだ〜」

「マユさんも感動です。この駅弁とか言うのも美味しくておかわりをします。髭もじゃさん、おかわりを買いますね。とりあえずマユさんの分とマユさんの分とマユさんの分」

「ふふふ。旦那様。今回の旅行で、マーサみたいに私も……キャッ」


 ララが車窓から外を眺めて、流れていく風景に喜びの声をあげて、マユがワゴンから次から次に駅弁を買い込んでいく。シルはムフフと頬を赤らめながら、何かを企むように呟く。


「駅員さ〜ん、鉄道警察って、もう作られたっけ〜?」


 この列車には犯罪者がいるみたいだよと、ランカが手をあげて駅員に尋ねる。小さな小さな駅員さんは羽根を羽ばたかせて、ウンウンと頷き尋ね返す。


「ランカ。駅員って何をすれば良いんですか? 切符を持たない人間を列車から落としたり、大変だ大変だと騒ぐだけで良いとアイからは聞いていますが」


 パタパタと羽根を羽ばたかせるセフィは、アイからろくな説明を受けていないで駅員になった模様。色々な国を観光できまつよと誘われて駅員さんになったのだ。


「髭もじゃ、切符持ってない〜」

「落としちゃえ、落としちゃえ〜」

「持ち上げて、持ち上げて〜」


「持ち上げるなって、こら! 切符なら見せただろっ! え? 甘くない? 食べ物じゃねーよ、切符は! あ、こら運ぼうとするんじゃないっ」


 妖精がまとわりついて、楽しげに髭もじゃを外に落とそうと、身体を持ち上げようとするので、椅子にしがみつき抵抗するガイ。


「ガイはこれから私と旅行なの。切符はこれで良いのかしら?」


 おやつのクッキーを優しく微笑みながら、マーサが妖精へと差し出すと、きゃあっと喜び群がる妖精たち。カジカジとクッキーに齧りついて満足げにしちゃう。


「やれやれ、あいもかわらず騒がしい限りだな。もう少し落ち着きを持たぬと産まれてくる子供が不安に思うぞ」


 親の姿を見て子供は育つからなと、ギュンター爺さんは日本酒をゴキュゴキュ飲むので、説得力抜群である。つまみも旨いなと焼き鳥を食べながらのほろ酔い爺さん。旅行中、何本一升瓶を空にするか賭けができそうだ。


「むふーっ、リンはマッシグランドのグリフォンと握手する。絶対に握手して頭を撫でる」


 マッシグランドのパンフレットを片手に興奮するリン。むふーっむふーっとマスコットキャラクターのグリフォン、ポチに夢中である。きっと、到着したら、プチグリフォンの羽根という玩具を買って背中につけることは間違いない。


「今までは飛空艇や定期馬車でちたが、大陸間列車ができまちたからね。これからは右肩上がりで売り上げも上がるでしょー。筆頭投資家のあたちにもがっぽがっぽでつよ」


「あたしも投資したんだぜ! 配当金は何に使うか迷うなっ」


 とっても楽しみだと、配当金に期待して、身体を曲げてクフフと笑うマコト。ようやく定収入が入る見込みができたと嬉しそうだ。これからはきっと貧乏生活からおさらばするに違いない。


「よ〜し、グリフォンたちを雇って、黒幕妖精の異世界ボードゲームという映画を作るんだぜ。映画の費用は借りるとして〜、その担保は投資した権利書にするんだぜ」


 フンフンと張り切る迷女優なので、今月ぐらいはセレブな生活ができるだろう。来月からは砂糖水だけで暮らしていても驚かないでつ。


「観光かぁ〜。こんなに楽しい生活になるなんて考えたこともなかったよ。これもアイちゃんのおかげだね!」


 ララがアイの頭を優しく撫でて、ニコニコとありがとうと満面の笑みでお礼を言ってくるので、なんとなくむず痒くなって、幼女は身体をクネクネさせちゃう。


 正面からのお礼は照れちゃう幼女なのだ。中の人がお礼を言われるのが苦手との噂もある。


「きっと、これからも楽しいことがいっぱいありまつよ。世界はそこそこ平和でつし、行商も楽しみでつ!」


「その前にマッシグランド。だんちょー、マッシグランドに行く」


「地下にあるホテルからのムーンライトの下の幻想的風景は見どころらしいね〜」


「珍しいきのこ酒もあるらしいぞ」


「ペガサスにも乗ろうね!」


「お土産に珍しい魔法道具をトートシティで買う。マユさんは新しい魔道具作りたいし」


 ワイワイガヤガヤと皆の楽しげな声が響き渡り、アイはふふっと優しく微笑む。


「慌てなくても大丈夫でつよ。時間はたくさんありまつから」


 そう言って、幼女も皆の中へと入っていくのであった。








 …………。



 タイタン王都。飛空艇が飛び交い、魔導列車が何便も線路を走っていく中で、王都の門番は南門の前で、フワァと欠伸をした。


 暇なのだ。だいたいの人は列車を使うか、飛空艇に乗るか。外に出て冒険者が魔物狩りをするにも魔導バギーを使うので、車道を通っていく。


 門番の守る門は徒歩専用なのである。なので、ほとんど人が通らない門を、昔ながらの慣習もあり門番は守っていた。ひいひい爺さんの頃は魔物が襲ってきたりもしたらしいが、過去のことだ。もはや魔物はバギーで一時間は走らないと出会えない程に、王都の周辺は平和である。


 代々門番の仕事をやってきているが、危険なことにあったことがない。最近で一番危険だったのはコンロにヤカンをかけっぱなしにして火事になりかけたことだ。


 定職は大事だし、先祖代々の仕事に誇りを持ってはいるが、暇である。のんびりと門を眺めながら今日も一日終わるだろうと考えていたら、珍しく徒歩で二人組が門に近づいてきた。


 奇妙な取り合わせの二人組であった。いや、よくよく見ると妖精が頭に乗っかっているので3人組だが、一人は艷やかな黒髪をおさげに纏めたやんちゃそうな顔つきたが、愛らしさを感じる簡単に抱き上げることができそうな小柄な幼女。金持ちが着るような肌触りの良さそうな高級そうな可愛らしい服を着ており、よく似合っていた。


 もう一人は髭もじゃで、安そうな毛皮を着込んでいる大柄な男だ。今どきいないだろうファッションセンスのなさを見せており、一昔前ならば山賊かと思われていたことだろう。


 どう見ても、おかしい組み合わせである。面倒ごとの匂いがするので、話しかけるのに一般人は躊躇うだろう。


 門番は小さくため息を吐き、これも仕事だからと話しかけることにした。面倒そうだが、人攫いなどなら、幼女を保護しないといけない。まぁ、妖精が一緒にいるので、あまり心配はしていないが。


「お嬢ちゃん。ちょっといいかい?」


 門を通り過ぎようとする幼女へ声をかけると、意外であったのか、キョトンとした表情で、自分を呼んだのかと指を自分に向けるので、目線を合わせるために座って、優しく頷いてあげる。


「そのおじさんは知り合いかい?」


 怪しさしか感じない髭もじゃのおっさんを鋭い目つきでちらりと見て尋ねる。


「えっとぉ〜、お菓子をくれるっていうから、ついてきまち」


「いやいやいや、親分、洒落になりませんよ。そういう冗談は相手を選んでくだせえ。この人は国家権力者ですよ?」


 もじもじと頬に手を当てながら、答えてくれる幼女に、おっさんが慌てて口を挟む。門番程度を国家権力者呼びとは随分と小物な奴だと呆れてしまう。親分? と変なあだ名だなと首を傾げて不思議に思うが、ププッと幼女が可愛らしく吹き出すので、おっさんをからかったのだとわかった。


 どうやら、大丈夫そうだ。気安そうな感じが二人の間にはある。


「冗談でつよ、ガイ。もちろん友人でつ。今日はタイタン王都に観光にきまちた!」


 テヘヘと、小さく舌を出して悪戯そうな笑みを浮かべて、ペコリと謝ってくる幼女。


「そうかい。近くまではバスででも来たのかな? タイタン王都はたくさん見る所があるから楽しんでいくと良いよ」


 悪戯好きそうな幼女の頭を優しく撫でて、ニコリと笑いかける。


「ここは王城の庭園が綺麗だし、レストラン街は王都ならではの料理も楽しめる。なにより、ここは以前に神の使徒が住んでいたと言われる屋敷があるんだ! 今は歴史館になっているから、絶対に見に行ったほうが良いよ」


「おぉ〜。それは楽しみでつ! ワクワクしちゃいまつね。久しぶりに王都に来て良かったでつ!」


 久しぶりとは変な言い回しだと苦笑しながら、きっと背伸びをしたいお年頃、知った言葉を使いたいだけなんだろうなと思いながら、立ち上がる。


「さて、おじさんはそろそろ門番の仕事に戻らないとな」


「……ガイドの子供はいないんでつね」


 周囲を見ながら尋ねてくるので、ツアーでもないとこの王都を見て回るのは厳しいだろうと、追加情報を教えることにした。


「冒険者ギルドに行けば、ガイドを雇えるよ。そこまで高くはないから安心しなさい」


 見習い冒険者などが小遣い稼ぎにガイドをしていると教えてあげると、フッと幼女に似つかわしくない遠い目をして、かぶりを振って


「いや、そういう意味ではないのでつ。まぁ、もうスラムもないし、いるわけない、か……」


 どことなく寂しげに呟くが、すぐにニパッと明るいひまわりのような笑みとなって、ペコリと頭を下げてきた。


「ありがとうございまつ。それじゃ、あたちたちはいきまつね。バイバーイ」


「あぁ、観光楽しんでおいで」


 元気いっぱいに手をブンブン振ってくるので、その愛らしさに顔を綻ばせながら門番も手を振り返す。


「最初は歴史館からでつね」


「あたしはなんて伝えられているんだろうなぁ」


「あっしの部屋……見世物になってるんですかね?」


 3人組はワイワイと楽しそうに話ながら、雑踏の中へと消えてゆく。


 今度、長期休暇をとって、俺も旅行に行こうかなぁと考えて、元の位置に戻る。


 空は青く、やけに大きな鳥が空をピピッと可愛らしい鳴き声をあげて飛んでいた。


 今日もどうやら平和な一日そうだと、再び王都の門番はフワァと欠伸をするのであった。




おしまい。

これにて完結となります。読んで頂けてありがとうございました!新作、キグルミ幼女の旅日記を書き始めたので、良かったら読んでください!

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― 新着の感想 ―
二週目も楽しく読ませていただきました。コンハザ読んだ後だとやっぱ印象も変わるしもっと楽しめました
[良い点] 全編通しで楽しい雰囲気で面白かったところに最後の最後でしんみりしました。 でもきっとララ達楽しい人生送ったんだろうなぁ( ^ω^ )
[良い点] ここ2週間ほど、楽しく読ませていただきました。 感謝です。 [気になる点] 幼女多いですねえ。 好きなんですか?幼女。 (スマホに110と打ちつつ)
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