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黒幕幼女の異世界ゲーム  作者: バッド
18章 陰謀と踊る幼女なんだぜ

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255話 頭の良い敵は嫌いな黒幕幼女

 爆発炎上して、燃え盛るルシフェル。その光景をコンコン幼女は見ながらも、警戒は崩さなかった。ダメージを最小限にする能力を敵は持っていると理解していたので。


 予想通り、超高熱の炎が収まったあとには、多少焦げているが、無事な様子を見せる少女の姿があった。


 幼女がかなりの力を注ぎこんで使った技だが、ルシフェルはたいしたダメージは負っていない。


「ふぅ。驚きました。私の不屈がなければ殺られていたところです。根性もあるので、なんとかダメージを最小限にできましたよ」


 そう答えるルシフェルの焦げた跡が、時間を巻き戻すように修復されて消えていく。


 それは予想通りであったが、それでも少しは倒したかと期待していた幼女は落胆してしまう。こいつ本当にゲーム仕様が違うのな。


「不屈を超えるダメージは与えられましぇんでちたか」


 残念無念と悔しがるコンコン幼女。不屈は総ダメージをたしか六分の一まで減衰する技だ。力が上がっているアイでも、不屈を超えたダメージは与えられなかった。


 なんというチートと悔しがる、神の力を借りてパワーアップしたチート幼女。己の姿は省みないらしい。幼女は我儘なので、自分のことは玩具箱に置いておくのだ。


「君が強いのはわかりました。さて、この場合はどうしたら良いのでしょうか?」


 腕組みをして、なにやら考え始める天使に嫌な予感がする。まさかとは思うが、ルシフェルたちとの戦いぶりから予想すると……。


「そうですね。今戦い勝利をするのは困難です。なので逃げるとしましょう」


 ぽんと手を打って、天使少女はアイの予想通りの言葉を言った。悪魔でも天使でも形勢不利となったら、即座に逃げようと考えるのは同じらしい。


「逃げても追いかけまつから無駄でつよ。あたちの速度は光速を上回りまつ」


 一応テレポートを使えるので嘘は言っていない。が、穏やかな笑みを深めて肩を竦めるルシフェル。


「君は頭が良い。私を追いかけるリスクを考えているはず。私がなりふり構わずに逃げに入れば、周りが甚大な被害を被る。追いかけることはできないよ。一応保険も用意しておいたしね」


 パチリとルシフェルが指を鳴らすと、天空要塞から、青銅色の羽を生やす天使たちがワラワラと飛んできた。


「ふふっ。転化の法を周囲の悪魔たちにもかけておいたのさ。彼らは私と違って自意識はないけどね」


「むぅ……。隙を見て攻撃してきても良いんでつよ?」


 口を尖らせて挑発するが


「残念ですが、私は確実性を求めるのです。貴女にはデミウルゴスを倒してもらうことにも決めました。私の力を使わずに、敵の戦力を減らす。ハルマゲドンでも同じことをしたことを思い出します。それではまた会う日まで」


 あっさりと挑発を受け流して、爽やかな笑みを浮かべて、その姿はかき消える。一瞬で加速したルシフェルは銀の軌跡を空に残しながら飛んで逃げてしまうのであった。


 ダカダカダカ、シルバー天使は逃げ出した。経験値0、ゴールド0を取得したというやつである。


 山向こうまで、高速で消えてゆくルシフェルをため息を吐き見送る。


「現実のラスボスは頭が良すぎて、嫌になりまつね」


 アイを囲む天使たちを見て、半眼になって呟くのであった。


 がっかりする幼女を青銅の天使たちが武器を構えて、押し包むように包囲を狭めてくる。


「神に逆らう者に死を」

「神に逆らう者に死を」

「神に逆らう者に死を」


 壊れたスピーカーのように同じセリフを口にしながら、無機質な表情で迫りくる天使たち。


 機械の軍隊のような異様さを見せる天使たちだがアイは恐れを見せなかった。不機嫌そうに鼻を鳴らすだけである。


「あたちの今のパワーは、青銅レベルでは敵わないのでつよコンコン」


 尻尾をフリフリ、扇子を広げて、ムフフと身体をくねくねさせちゃう。可愛らしいことこの上ないダンスを披露し始める幼女だが敵は容赦しなかった。


 様々な武器を持つ天使たち。剣を振り上げ、槍にて突き、斧を薙いでくる。だが、幼女は目の前に迫りくる攻撃を見てもダンスをフリフリ続けており


「が?」

「ギ?」

「グハッ」


 天使たち各々が繰り出した攻撃は、幼女に当たらずに味方を切り裂いていた。大勢の天使たちは、クネクネダンスを踊る幼女を追いかけて、さらなる攻撃をするが、なぜか幼女に攻撃したはずなのに、味方にその攻撃は当たってしまう。


「無駄でありんつよ」

「無駄でありんつよ」

「無駄でありんつよ」


 天使たちは躍起になってアイを倒そうとするが、目の前にアイがいるにもかかわらず、あらぬ方向から声が木霊のように聞こえてくるので、混乱をしてしまう。


「幼術 案山子の舞。貴方たち、ドローンでは決してあたちを捕まえること叶わず。ただ悪戯にその命を消耗するだけでコンコン」


 無理に語尾にコンコンとつけて、ヘンテコになってしまう幼女であるが、その魔法は強力であった。


 怯まずに攻撃をし続ける天使たちは、既に狐幼女の術に嵌っており、味方をアイと誤認識させられて、次々と同士討ちをして倒れていき、あっという間に数を減らしてしまうのであった。


 さすがは狐神の加護。その幻術は超1級である。


 ダンスをイェイと踊る幼女の前に、同士討ちにて残り数十となってしまった天使たち。残り少しと判断したアイは扇子を天使たち向けてハタリと扇ぐ。


「幼術 風塵」


 緩やかな風が扇子を扇いだことにより発生し、天使たちへと凪ぐように吹く。


 ダメージなどないはずの風であったが、その攻撃を受けた天使たちは、ビクリと身体を震わすと、サラサラと灰へと変わってゆくのであった。


「凄まじい力でつね……」


 幼女はあまりにも強大な狐神の力に畏れを抱き、つつっと涙を一筋流す。神の力はここまで凄まじいのかと。


「課金パワースゲーでつ」


 すっからかんになった素材一覧を見て、泡を吹いて気絶しそうでもあったりした。


 数万はあったのに。もはや、数年やっていたスマフォゲームみたいに欲しい物はほとんどなくなったはずだったのに、振り出しに戻っちゃったでつ。


「コアチェンジと唱えれば、様々な私の眷属の力を借りれるようになりましたよ。おめでとうございますアイさん」


 モニターに女神様が映り込み、ぱちぱちと拍手をしてくれるが嬉しくないのはなぜだろうね。


 でも、ルシフェルは勿論のこと、デミウルゴスとの戦いにも必要なことだったのだろう。女神様は無駄なことをしない神算鬼謀の持ち主だしな。


「でも、他の世界から降臨するなんてあるんでつね……。まぁ、あたちがそんな感じの存在でつが」


「ソウデスネ。オソラクハタイタンニアノエネルキーガモンダイダッタノデショウ。アレハイカイノチカラヲツカッテマスノデ」


「なるほどでつ。かなり強い敵でつから、これからは油断しないようにしないとでつね」


 ルシフェルは今までの敵とは次元が違う敵だった。あれは月光幼女に変身しないと勝てない相手だ。


「ちなみに真の月光幼女になる時には、必ず素材が空になりますので注意してください。それでは、とりあえずの勝利の褒賞として、なにか一つ欲しい物があればあげますよ?」


 ピカーンとその言葉にアイは目を光らせちゃう。


「それじゃ、バッテリーのレシピくだしゃい。所謂魔石というやつでつ」


 それが手に入れば、様々な消費系魔道具が作れるのだ。ライトな異世界にある魔石。あのご都合主義アイテムが手に入れば生活が変わるのである。


 意外な願いだったのか、目を丸くする女神様だが、ほほうと頷く。


「良いでしょう。それならば今よりもずっと世界は便利になりますしね。石油を見つけた地球の如く、それよりも遥かにクリーンな魔石。いえ、神石を作れるようにしましょう。愛だけに」


 アイと愛をかけたらしい女神様は、早くツッコんでよと、目をキラキラさせていたが、ソッと目を逸らした。女神様へのツッコミは不敬すぎまつ。あと、面倒くさい。


 俺だけが作れるのかと残念に思うが、それが譲歩の限界でもあるのだろう。


「強力な浄化の力が必要なので、アイしか作れないということがあります。では、特性、幼女は泥団子作りがお好き。を授けます」


 それぇと、女神様はおててを振ると、モニターから黄金の粒子が噴き出してアイを包みこむ。そうしてステータスボードに新たなる特性が書き込まれたのであった。


 アイは流れ込む知識の内容を理解して、ほほうと嬉しげに顔を輝かす。この神石は凄いものだ。これでようやく世界は変わる……かもしれない。少なくとも人々の暮らしは大幅に変わるだろう。


 商売人の顔になり、色々とこれからのことを考え始めるが、そういえばと一応尋ねておく。


「マコトはどうしたんでつか?」


「マコトは今メイドと対戦中ですよ、ほら」


 画面が移り変わり、銀髪のメイドと、同じく銀髪の少女が机を挟んで、対面していた。そばには金髪ツインテールの美少女メイドと、ちっこい狐が立っている。


「くくく、私が勝つざんす。ざんすざんす。ちなみになんでざんすって言うんでしょうね」


 テーブルには麻雀牌が置いてあり、二人の手元に配牌されているが、少し配牌が少ない。特殊ルールっぽい。


「ここで勝って、借金帳消しにするんだぜ。正々堂々と勝負だ!」


 妖精の本体であろうマコトが、コホンコホンと咳をしながら正々堂々と宣っております。メイドもなんだか視線があらぬ方向を向いており様子がおかしい。


 二人ともイカサマをしているとわかる勝負をしていた。


「この勝負に勝てば、マコトさんは再びサポート役に戻れるでしょう。負けた場合は、子狐がサポート役になりますね」


「あ〜……子狐の方が良いかもでつ」


 アホなサポート役はさようならかもと、寂しさを隠して作り笑いをして言う。作り笑いだよ? 本当だよ?


「ちなみにドロップは消耗素材に平均ステータス100の天使が352。武器素材にオリハルコン293、天使の羽が527ですね。知識因子はなしとなります」


 マコトがバトル中なので、女神様がサラッと教えてくれるが、その内容に驚く。さすがは天使たち。ドロップがハンパない。悪魔は悪魔のドロップは?


「悪魔のドロップは使ったのでないですよ」


「あ〜。ボス戦前に一度戦果が精算されていたのでつか……仕方ないでつね」


 それでも天使があれば良いだろう。


「一応勝利しまちたし、凱旋しまつかね」


 暗闇の中、日の出が見えて、眩しさで目を細める中で、黒幕幼女は眠そうにアクビをして、都市へと踵を返すのであった。




 ちなみに最低ギャンブラー対決の結果は、楽しそうに女神様と金髪ツインテールが泥沼というパチンコ台を新たに作っていたとだけ言っておこう。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 流れるような投資手腕で変則的ながら幼女の本気モードに加護を与えてみせた狐に対して流れるように地下帝国に送られるマコトさん、一体何処から差が付いてしまったのか(最初から周回遅れ) [気になる…
[一言] 自身の目的の為に引くのは立派なんだが 戦う時散々大口叩いてやばくなったらスタコラサッサはダサすぎる・・・ 堂々と漁夫の利取りますとも言ってるし、強さはあっても威厳がマイナスですねぇルシファー…
[一言] まさかのルシフェル逃亡でしたか… そう言えば某超ロボット大戦争なゲームでも倒したはずのボスが勝利宣言しつつ逃げて行ってました。 しかし運営さんちょっと怪しすぎないですか。何企んでるんでしょう…
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