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10年ごしの引きニートを辞めて外出したら自宅ごと異世界に転移してた  作者: 坂東太郎
『第十五章 エルフ護送隊長ユージ、エルフの里に向かう』

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第十五章 プロローグ

短めです

「よし、じゃあ出発しようか!」


「はーいユージ兄! リーゼちゃん、今日もがんばろうね!」


「うん! リーゼ、負けないから!」


「ふふ、お嬢様ったら張り切っちゃって。今日はボクもやってみるよ!」


 辺境の森、ユージたちが暮らす開拓地から伸びる造りかけの用水路。

 そこに、野営道具を片付けた旅人の姿があった。

 エルフ護送隊長のユージ。同居しているアリスとコタロー。

 今代のお役目・ゲガス、お役目を引き継ぐケビン。

 エルフの少女・リーゼと1級冒険者のハル。

 6人と一匹の集団である。


 秋にゴブリンとオークから助け出したリーゼ。

 冬の間は開拓地で保護して、春にはエルフの冒険者・ハルに会うために王都に向かった。

 ユージたちは開拓地で旅の疲れを癒した後、春の終わりにふたたび旅に出るのだった。


 親元からはぐれたリーゼを、エルフの里に送り届けるために。



  □ □ ■ ■ □ ■ ■ □ □



「土さん、たくさん下にいってー!」


『土に宿りし魔素よ、我が命を聞け。押しかたまりて下へ向かえ。土壌圧縮(プレス・アース)


「ユージさん、アリスちゃんもリーゼちゃんもすごいですねえ」


「ええ、ほんとに! 二人はすごいんですよケビンさん。用水路がここまで進んでるのも二人のおかげです!」


「ははは、ユージさん、これはボクにはできないや!」


 6人と一匹は開拓地から西へ。川に向かってゆっくり進んでいく。

 アリスとリーゼ、二人の少女が魔法で用水路を造りながら。

 ちなみに工事中の用水路はまだ空である。


「え? 1級冒険者のハルさんでもですか?」


「ユージさん、ボクが得意なのは風の魔法だからね! 次が水で、土はまあ使えなくはないってレベルだから」


『ふふん、ハルはできないのね。リーゼはできるけど!』


 誇らしげに胸を張ってハルに宣言するリーゼ。絶壁である。12才なので。そう、12才なので。

 リーゼと手を繋いだアリスは、頬を緩めて下からユージの顔を覗き込んでいる。


「アリスもリーゼもすごいなー、ほんと助かるよ!」


 ニコニコと二人の少女の頭を撫でるユージ。保父さんである。

 リーゼは照れくさそうに、アリスは望んだお褒めの言葉をもらってニッコリと笑顔を浮かべていた。

 コタローはワンッ! と声をかけ、尻尾を振ってぐるぐると二人の少女のまわりを駆ける。えらいわありす、りーぜ、と言いたげに。お姉さん気取りである。犬なのに。


「んー、ケビンさん、たぶん二人は途中で魔力切れになると思うんですけど、どうしましょうか?」


「急ぐ旅ではないとはいえ、留守にしてきた開拓地も気になりますからね。用水路造りはできるところまででいいんじゃないでしょうか?」


「ケビン、そんなこと言って早くエルフの里を見たいだけなんじゃねえか? それとも早く帰ってジゼルに会いたいほうか?」


「お義父さんこそさっきからコタローさんに止められてるじゃないですか」


「まあ俺もひさしぶりだからな。それとおまえらの驚く顔を想像したら……くくっ」


 ゲガスとケビン、義理の親子の二人の商人は、開拓地を出てからずっと浮かれっぱなしであった。

 もともと好奇心が旺盛なために行商人をしていた二人である。

 ケビンはまだ見ぬエルフの里に、ゲガスは同行者のリアクションに。

 年甲斐もなくワクワクしているようだ。


 いや、ワクワクしているのはこの二人だけではない。

 アリスはもちろん、ようやく家族に再会するリーゼも、ユージも。

 ユージが持ったカメラに期待する掲示板住人たちも。


 春の終わり。

 6人と一匹は、ゆっくりと森を散策しながらエルフの里に向かうのだった。



  □ □ ■ ■ □ ■ ■ □ □



「さて。ケビンたちは行ったし、バンバン開拓を進めましょ!」


「ジゼルさん? いや、エンゾも二人も帰ってきてねえから、そんなにムリするつもりもないんだが」


「あ、そうだったわね! じゃあこれまで通りで!」


「おう、物わかりがよくって助かる。それにしても……心配じゃねえのか?」


「ブレーズさん、ケビンは私よりも強いのよ? それにハルさんがいるんだもの。モンスターも賊も相手にならないわね。パパも一緒だから、何があっても生きて帰ってくるわよ」


 エルフの里に向かったのは6人と一匹。

 そのうち二人は少女なのだ。

 それでもジゼルの信頼は揺らがない。

 現役の1級冒険者を含んだ集団の戦闘力、そして行商に生きた二人の男の生還力。

 たしかに信頼に足るものだろう。


「まああのメンツじゃなあ。俺たちがフルパーティで挑めば……いや、勝ち目はねえか」


 ジゼルの言葉を聞いて、ブレーズも納得顔である。


「そういうこと! さ、開拓をはじめましょ! 今日は何かしら?」


「男たちとセリーヌは農作業だな。工場予定地は動きはないし、ジゼルさんには針子たちを任せてもいいか?」


「了解! というかそれが私の仕事だしね!」



 ユージ不在の開拓地。

 開拓の全体を仕切るのは元3級冒険者『深緑の風』のパーティリーダーで副村長のブレーズ。

 農作業はユージの奴隷にして犬人族のマルセルが指示を出す。

 工場予定地を含めた建設は木工職人のトマス、針子たちはケビン商会のジゼル。


 徐々に陽射しが強くなってきた春の終わり。

 開拓団長で村長のユージが不在でも、開拓は順調に進んでいるようだ。



短めですが、プロローグですので…


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― 新着の感想 ―
[良い点] 主人公がいなくても稼働する開拓村。いやそれも主人公がいてこその仲間なんだから、やっぱりユージの存在は偉大だ。
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