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10年ごしの引きニートを辞めて外出したら自宅ごと異世界に転移してた  作者: 坂東太郎
『第十四章 エルフ護送隊長ユージは一時帰還して開拓団長兼村長の仕事をする』

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第十四章 プロローグ

今章プロローグ。

ちょっと短めです。

 王都からプルミエの旅、二日目。

 ユージたちは旅の難所・峠越えに差し掛かっていた。

 とはいえ、御者を務めるケビンもゲガスも経験は豊富。三台の馬車のうち、中央の馬車を操るジゼルをサポートしながら順調に歩みを進めていた。

 いまは今日の旅程を終え、峠のピークを越える前の場所に設けられた野営地に着いたところである。


「そういえばゲガスさん、俺たちの後ろに何台か馬車がついてきてるんですけど……その、もしもの時はどうすればいいんですか?」


「ああ、便乗したヤツらか。ユージさん、基本は無視でいいぞ」


「え?」


「ユージさんは優しいですからねえ。ユージさん、会頭の、いえ、義父の言う通りです」


「義父……ケビン、だったらもうゲガスでいいぞ」


「え? いいんですかお義父さん?」


「やめろ! 鳥肌もんだ気持ちわりい!」


「あの、ケビンさん? ゲガスさん?」


 義理の親子のイチャつきっぷりに困惑するユージ。

 ゲガスは口では微妙なことを言っているが、この二人、どう見ても仲良しである。


「ああすみませんユージさん。まあ何かあった時は目の前で見殺しにするのもアレですから、助けられそうなら助けます。彼らはそれを期待しているんですよ」


「はあ」


「ありゃ自分の荷を自分で守りきれないって言ってるようなもんよ。商会としちゃ二流以下だな」


 天秤の旗とえび茶色のマント。

 ゲガス商会の目印であるそれは、盗賊避けになる。

 さらに言えば、ゲガス商会の人員は強い。

 その馬車にコバンザメのようについていくことで、安全な旅路を目論んでいるのだ。

 ゲガスとケビンはわかったうえで無視。余裕があれば助けるが、基本は有事の際にあっさり切り捨てるようだ。

 シビアな世界である。


「そうですか……」


「まあユージさんはあんまり気にすんな。それよりほれ、この野営地の名物だ」


 そう言ってユージの背後を指さすゲガス。

 振り返ったユージが息を呑む。


「おお、これは……」


「うわあ、うわあ! ユージ兄、すっごいキレイだね!」


 峠の野営地から見下ろす景色。

 麓に広がる平野と川、そして王都が夕日に照らされている。

 アリスが興奮するのも無理はないほどの景色だった。


 ユージは立ち上がって野営地の端、崖の手前に近づいていく。

 そっとユージの左手を握って一緒に歩くアリス。

 アリスの左手はエルフの少女・リーゼが握っていた。

 そのリーゼの左手は、1級冒険者のエルフ・ハルが。

 手を繋いで四人が並ぶ。

 アリスとリーゼの間、四人の真ん中にコタローがおすわりする。中心に居座って女王気取りである。犬なのに。


「キレイな景色だね」


「うん!」


『スゴイ! リーゼたちはあそこにいたのね!』


『ええお嬢様。それにしてもいい景色ですねえ。たまには馬車もいいものです!』


「アリス、また王都に来ようね。シャルルくんに会いに」


「うん! アリスね、幸せになるの! それでね、シャルル兄に教えてあげるんだ!」


『ハル、リーゼはたくさん冒険したのよ! お話の中のレディにだって負けないんだから!』


『よかったですねえお嬢様! でも、帰ったらお説教が待ってますよ?』


 はしゃぐ二人の少女と、二人の保護者。

 四人の後ろでは、ついに結ばれたケビンとジゼルが身を寄せ合っている。

 さらにその後ろでは、イチャつく二人を睨みつけるゲガス。

 ケビンのことを認めているものの、それはそれ、これはこれであるようだ。


 開拓地からプルミエの街、そして王都へ。旅を続けたユージたち。

 さまざまな思い出を抱き、今度は家路を行くのだった。


 ユージ、アリス、コタロー、リーゼ、ハル。

 ケビン、二人の専属護衛、ジゼル、ゲガス、ユルシェル。

 サロモン、エンゾ。

 12人と一匹、馬車三台の旅である。



  □ □ ■ ■ □ ■ ■ □ □



「……ブレーズさん」


「ああ? どうした、シケた顔して」


 ユージ不在の開拓地・ホウジョウ村。

 住居用地確保のための伐採、その休憩時間。

 元3級冒険者にして副村長のブレーズは、第二次開拓団の元5級冒険者の男に話しかけられていた。


「えっと、その……」


「おい、ちゃんと言えって。ブレーズさんなら相談に乗ってくれるかもしれないだろ」


「その……実はブレーズさん。俺、フラれました」


「お、おう、そうか」


「ブレーズさん、お願いです! ホウジョウ村にもっと女性を!」


「いや、俺にそんなこと言われてもな……と、とりあえずアレだ、プルミエの街に買い出しでも行ってくるか?」


「いいんすか!? 何買ってきましょうか!」


「……特にねえな。この前ケビン商会の人がいろいろ置いてったしな」


「そんな!」


 ホウジョウ村に残っているのは、元3級冒険者パーティ『深緑の風』のリーダー・ブレーズと弓士のセリーヌの夫婦。盾役のドミニクと、元奴隷でいまは針子見習いの妻。

 ユージの奴隷にして農作業を取り仕切る犬人族のマルセル、妻で猫人族のニナ、その子で犬人族のマルク。

 針子のユルシェルの夫・ヴァレリーと、針子見習いとして移住してきた三人の女性。

 そして男手として移住した元5級冒険者パーティの独身男性五人。

 加えて、木工職人のトマスと見習いの二人、それから出張できている職人たちである。


 つまり、独身女性は三人のみ。


 どうやら元5級冒険者の男は、逸って告白して玉砕したようだ。

 だがブレーズに相談したところでどうするのか。

 新しい移住者を求めるにせよ、それは開拓団長のユージの判断次第。

 ひとまずブレーズは、買い出しを名目に街に行かせて発散させるつもりのようだ。優しい男である。勝ち組の余裕である。


 いつの時代も、小規模な農村の嫁取りは大変な問題なのだ。


「ああもう、ユージさん早く帰ってきてくんねえかなあ……」


 二棟の共同住宅、二軒の家庭用住居と建築中の三軒の家。

 マルセルが指揮した農作業は一段落して、いまは建築作業を中心に取りかかっていた。

 出張できている職人たちは、着々と缶詰工場建設予定地の整備を進めている。

 プルミエの街と開拓地を結ぶ獣道も開拓が進んでいるようだ。



 ユージ不在の開拓地・ホウジョウ村。

 開拓は順調なようだが、恋模様は複雑なようだ。

 そこにユージの存在はない。



ちょっと短めですが、今章のプロローグですので。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] これ、てまさか最後までユージに春は来ないのか!?
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