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滅亡国家のラグナテア ~リアルがゲームに入れ替ったけどデータ引き継ぎで現代無双~  作者: 萩鵜アキ


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第75話 不死の魔王

 不死の魔王ネクロ・ダルヴァスが目覚めた時、己の体に感じたことのない力が漲っていることに気がついた。


 魔界にいた頃よりも、確実に数倍強い力だ。

 今の自分ならば、過去の自分とて赤子の手を捻るように殺してしまえるに違いない。


 事実、目の前を漂っていた羽虫など、軽く威圧を飛ばしただけで粉々になった。


「……いい、すごく、いい」


 漲る力に歓喜が溢れる。

 これなら異界の地とて、容易く掌握出来るに違いない。


 早く、死者だけの王国を作りたい。

 すべての生物から、生きる苦しみを取り除くのだ!


 具合を確かめるようにゆっくりと体を起こす。

 その時、突如として目の前が真っ赤に染まった。


「――ッ!?」


 激しい熱を感じる。

 だが、ダメージはない。

 ほんの少しぎょっとしたが、今の自分には通用しない攻撃とわかり、すぐに冷静さを取り戻す。


「……ふふ。こっちで、初めての相手。楽しみ」


 売られた喧嘩だ。買うしかない。

 ただ、戦うとすぐに壊してしまうかもしれない。


「壊れたら、グールにする。こっちで、初めての部下。楽しみ」


 魔法が放たれたであろう場所に向け、ネクロが軽く踏み出した。

 まるで距離が縮まったような感覚。

 コンマ一秒にも満たぬ間に、ネクロは敵対者との距離を100からゼロにした。


 顔が触れあうほどの位置で、ネクロの虚ろな瞳が対象をじっと見る。


「……にんげん?」

「チッ。ネクロか」

「当たり。なんで、知ってる?」

「企業秘密だ」


 人間が軽く身をよじる。

 次の瞬間、

 カッ!

 閃光が瞬いた。


 視界が白に染まり、若干体にダメージを感じる。


「光属性……こしゃく」


 腕を大きく振る。

 人間がいた場所だったが、攻撃が当たった感覚がない。

 早くも逃げたか。


 自己修復機能が働き、視力が回復した。

 背中に衝撃。ダメージはゼロだ。

 振り返ると大きな魔銃を持った人間を発見。


「これで、おわり」


 手に魔力を集め、得意の闇魔法を放つ。

 ――つもりだったが、魔力が一向に集まらない。


「……?」


 体には力が満ちている。能力も低下を感じない。

 にも拘わらず、発動が大幅に遅延している。

 この感覚には覚えがある。


「……ニトの、力?」


 間違いない。

 だがニトはここにはいないし、魔界を離れたこともない。


 ならばニトと同様の力が使えるのだろう。

 しかしそのようなことが人間ごときに可能なのだろうか?

 魔界ですら類似する能力を持つ者はいなかった。


(危険?)

(どうしよう)

(殺す、には……)

(ううん、人間、使える?)

(配下に、したほうが、いい?)


 1秒ほど考えに考え抜いたネクロは、


「――面倒。死ね」


 考えることを止めた。


 手のひらから放ったただの魔力弾が人間に迫る。

 人間は、動かない。


(観念、した?)


 瞬きすら許さぬその攻撃を人間は、真上に弾いた。


「――ッ!」


 ネクロは見た。

 コンマ1秒すらない間隙のうちに、人間は巨大な銃を消し、拳を固め、アッパーを放った。


 その拳にはいつの間にか、鉄拳が填められている。

 インベントリを使い、武器を早替えしたのだろうことはわかる。

 早替え――言葉で言うのは容易いが、コンマ一秒で行うには恐ろしく繊細かつ精緻な作業が要求される。


「一体、何者?」


 人間に少し、興味が湧いた。

 先ほどは疑問形だった勧誘も、いまでは真剣に考えているほどだ。


「……面白い」


 人間界など吹けば壊れる程度に考えていた。

 だが、どうも違うようだ。


 ここには面白い人間がいる。

 次元層の外には、もっと面白いものがあるかもしれない。


「気に、なる」


 せっかくだ。

 この人間を殺し、死霊術で配下に加えその後に、人間界を堪能しよう。

 今はまだ他の魔王もいない。


「全部、ウチの死霊(もの)


 だからさっさと死ね、人間。

 そんな思いで戦っているのだが、まるで手応えがない。


 魔法を放っても弾かれ、物理攻撃を当てたと思っても霞のように消えてしまう。

 接近するとその分だけ遠ざかり、遠距離で討とうとしても接近により攪乱される。


 まるで幻術。

 ネクロは完全に弄ばれていた。


「くぬぬ……。人間、真面目に、戦って!」

「こっちは大真面目だ」

「卑怯!」

「卑怯で結構」


 人間を爪で引き裂く。

 しかし、再び霞になって消える。

 背後から攻撃。

 ダメージは薄い。


 だが、先ほどから同じ手を延々と食らったネクロは、限界だった。


「もーっ! 嫌い、人間、嫌いッ!!」


 全身から魔力を放出。

 空中で無数の呪の塊になる。


 この呪法を初めから使っていれば、すぐに決着が付いていただろう。

 反面、これを使えば人間は跡形も無く消し去ってしまう。

 それはネクロの美学に反していた。


 あらゆる生命体は、命あるからこそあらゆる苦しみに苛まれる。

 そこから解放し、不死者としての生を与えるのがネクロの役割であり、目的だ。


 すべてを破壊しては、第二の生を与えられない。


 それに呪法は、己が蓄えてきた『死力』を解放しなければならない。

 死力とは敵対した者や罪深い者の魂を捕らえ、呪詛として編んだものだ。


 これはネクロにとって奥の手。

 一度使えば、しばらくは使えなくなる。

 故に温存していたのだが、そのようなことを構っていられるほど、冷静ではいられなかった。


「命よ苦しみよ、消滅きえよ、永劫の彼方へ《冥狂死衰(サクリファイス)》」


 百を超える呪詛の塊が、弾けた。

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