表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
滅亡国家のラグナテア ~リアルがゲームに入れ替ったけどデータ引き継ぎで現代無双~  作者: 萩鵜アキ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

70/79

第70話 意味深な拒絶

「今後、深度EXの深淵が発生した場合は、俺のクランが陣頭指揮を執ることになるだろう」

「ふむ……」

「こちらは最大で八人パーティ。君が加われば九人で魔王討伐に当たれる。白河くんは是非とも、魔王討伐の際には【払暁の光剣】のパーティに加わり力を貸して欲しい」

「――断る」


 思いも寄らない言葉に、ぴくり亘の眉が動いた。


「何故断る? こちらは八人、そちらは君一人だけ。ならば【払暁の光剣】に臨時加入し、力を合わせて魔王を討伐するのがセオリーだと思うが?」

「……」

「分配が不安かな? それについては、きちんと人数割りで行う予定だ。丁度協会職員もいることだ、覚書を交わしてもいい」

「そういうことじゃない」


 分配ではないのなら、何故断る?

 訳がわからず、亘は首を傾げた。


「君はこれまで、かなり高ランクの悪魔をソロで倒してきたようだが、魔王は次元が違う。前回の魔王出現時は、Aランク超のハンター百名で挑み、生き残ったのはたったの六人だった。

 そのうちの一人が、俺の父だ。その父から魔王の恐ろしさを直接聞いている。最精鋭のハンターが、一瞬のうちに何人も、惨たらしく殺されたと」

「だろうな」

「ならば、我々が力を合わせることを、何故拒む?」


 これが若者の無鉄砲というものか。

 亘は自身が若い頃、全能感に酔っていたことがある。

 何をやっても上手くいき、誰も達成出来ない実績を達成した。特にハンター養成学校在学中、Dランクハンターへ昇格した頃が最もピークだった。


 他人が出来ないことでも、自分には出来る。

 自分の思うとおりにやれば、すべて上手くいく。

 そう、思っていた。


 今思い返すと喉を掻きむしりたくなるほど、恥ずかしい過去の記憶だ。

 結局プロハンターとして【払暁の光剣】に正式加入してからすぐ、長く育った鼻っ柱をへし折られた。


 悪魔との戦いで、三名の部下を失ったのだ。

 自分の指揮が未熟だったが故の失態だった。


 白河の姿が、当時全能感に酔っていた自分とダブり、亘は思わず顔をしかめた。


「君がいなくなれば、クランはどうなる? 悪いことは言わない、俺の指揮に入れ」

「断る。【払暁の光剣】に入るくらいなら、ソロで挑む」

「いい加減にしろ!」


 亘は思わず立ち上がり、拳をテーブルめがけて叩き降ろす。

 ギリギリ理性がおいつき、天板寸前で拳が止まる。


 破壊は、免れた。

 だが拳が生み出した風圧が、テーブルを大きく軋ませた。


「ソロで挑む? 君は、自分の命をなんだと思っているんだ!」


 無鉄砲は若者の特権だ。

 誰しも無茶をして、加減を知り、大人になっていく。


 だが魔王だけは違う。

 あれは、人類にとって絶望でしかない。


 常に明るく何でも教えてくれた父が、唯一魔王戦のことだけは一度しか口にしなかったことからも、どれほど過酷だったかが窺える。


 そんな深淵に、若者一人だけを向かわせるわけにはいかない。


 特に彼は、十六才でEXに認定されるほどの才能溢れる少年だ。

 ゆくゆくは日本の将来を背負って立つといっても過言ではない。


 それほどのハンターを、単なる子どもの無鉄砲で失わせてなるものか!

 そんな意気込みは、白河の言葉で躓くこととなる。


「お前は何故、深度EXの深淵から生還出来たのが六人だけだったのか、考えたことはあるか?」

「……む?」

「これは助言だ。部下を失いたくないなら、必ず正しい答えを見つけ出せ」


 白河の表情に、亘は息を呑む。

 これまで一切力強さを感じさせなかった少年が、いまはまるで巨大な壁のような圧迫感を放っている。


 これはただ虚勢を張ったり、無闇に威圧的な態度を取っているわけではなさそうだ。

 白河には、亘にそう思わせるだけの雰囲気があった。


 だが、何故六人だったのか?

 ……考えたこともなかった。

 強かったから、あるいは偶然、生き残っただけではないのか?


 そこに隠れた答えがあるとは到底思えない。

 だが、ここで正しい答えを出さねば、自分は再び大きな間違いを犯すのではないか?

 白河の瞳にはそう思わせるだけの真剣さがあった。

 また己のハンターとしての勘も、無下にするなと訴えている。


 戸惑っている間に、白河は席を立ち会議室から出て行ってしまった。

 一人残された亘はぽつりとこぼす。


「……一体、どういうこと、なんだ?」


 いつもの威厳は消えた情けない声が、誰もいない会議室に空しく響き渡った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ