第68話 格好良い武器がいい
月曜朝、教室に入ると一瞬時が止まった、気がした。
なんだなんだ?
再び動き出したクラスメートたちが、なんだかよそよそしい。
「なんかクラスの雰囲気おかしくないか?」
「あー……」
「緊張感があるっていうか、なんかみんな俺を見ないようにしてね?」
「ハヤテは自分の胸に手を当てて、よおく考えて見ろ」
安達に対して、大斗はむっつり顔だ。
椅子の背もたれに腕を乗せ、恨めしげに俺を見上げる。
「……さっぱりわからん」
「土曜のことだよ。ハヤテ、ドンパチやったじゃんか!」
「それが?」
「その被害がデカすぎて、みんなビビってんじゃん。目ぇ合わせただけで殺されるんじゃないかってさ」
「なんでみんなが知ってんだよ」
「相手が貴種派だったからか、一瞬で学校中に噂が広まったみたいだよ」
「なるほど。だが、誰彼構わず滅ぼすような真似はしないんだが?」
「ハヤテを知らない奴からすれば、自分のクラスに特大の爆弾があるような気分じゃん」
「むうん……」
俺ってそういう人間に見られてたのか。
なんか、ちょっとショックだわ。
「人畜無害なんだけどなあ」
「あんだけ破壊しといてそれは無理じゃんよ」
それもそうか。
クラスメートには何もしてないのに、ここまで怖がられるのは悲しい。
だからといって誰彼構わず好かれたいとも思わないし……別にいっか。
「ところでハヤテ、放課後暇?」
「特にやらなきゃいけないことはないな」
「んじゃ、ちょっと訓練に付き合ってくれないか?」
「大斗から誘ってくるなんて珍しいな」
「ちょっと、気分転換がしたくてさ」
まだ、偽装彼女のことを引きずってるのか。
しゃーない、大斗のために一肌脱ぐか!
――って思ってた時期もありました。
「なんだよガッカリして」
「訓練って、武器替えかよ」
「もう少し良いモテ武器にしたいんだよ!」
なんだよモテ武器って……。
「俺はお前が、ハンターとして目覚めたのかと思ってだな……」
「目覚めてる、目覚めてるよ。んじゃ次の武器宜しく」
「お前なあ……」
ため息一つ。
インベントリから、弓を取り出した。
大斗はいま、メイン武器を変更しようとしてる。
少しでも格好良い武器にしたいのだとかなんとか……。
あんな目に遭って、まだ時間も経ってないのにモテたいってよく言えんなって呆れたが、武器チェンジは俺も少し気になってる。
この世界が変わった時、ゲームの登場人物たちが新たに出現した。
そのキャラクターは、得意武器以外を持つと戦闘能力が低下する。
対して俺はプレイヤーだったから、どの武器でも能力低下なく扱える。
っていっても、好みはあるけどな。
で、問題は大斗たちみたいに、元々の世界にもいた奴はどうなっているのか、だ。
キャラクターみたいに能力低下があるのか、俺と同じく能力低下がないのか……。
長剣とか大剣、弓を試用したが、これまでメインで使ってきた槍と大差なかった。
やっぱり大斗も俺と同じ、プレイヤー側なのか……?
「なあハヤテ。刀ってないのか?」
「あー、あるにはあるが、打刀とか太刀じゃなくて忍刀だな」
「おお!! いいじゃんいいじゃん! 格好いいじゃん! 出してくれよ」
「はいはい」
忍刀――二本で一対の大小は、ゲームでも珍しいタイプの武器だ。
戦い方は一撃必殺狙いより、手数で押すタイプだな。
大小二本の刀を手にして、大斗がマネキンの前に立つ。
このマネキン、かなり昔に開発された訓練用アイテムらしい。
胸に取り付けた魔石がダメージを吸収する仕組みで、魔石が真っ黒になるまでは攻撃してもマネキンが破壊されない。
ゲームにはなかったが、攻撃をして黒くなるまでの時間を計れば、DSPがざっくり測定出来る。
かなり使えるアイテムだ。
「いくぞっ!」
大斗が気合いを入れ、マネキンに斬りかかる。
……うん、慣れない武器だから攻撃が全然なってないな。
大斗の姿を見てると、レオンとか一条がどんだけ異常かがわかる。
あいつら、初めて持った武器なのにそれまで以上に動けたもんな……。
「んん?」
何か違和感を覚えて目をこらす。
マネキンの胸元にある魔石が、早くも黒く濁り始めていた。
「えっ、早くね?」
大斗は忍刀で斬る、というより殴りつけてる。
初めて手にした武器だし、刃を立てるのは難しいから仕方がない。
――が、下手っぴ攻撃なのにダメージ蓄積が今までより異常に早いのは、明らかにおかしい。
「おっし、こんなもんか。ハヤテ、どうだった?」
「……」
これまでは、大斗もプレイヤー側だと思ってた。
武器を変えても変化がなかったからな。
だが、忍刀装備で予想が一気に覆った。
大斗の得意武器は、忍刀だったのか。
そして、同じ世界に存在していた大斗でも、キャラクターの縛りを受けている。
もしかしたらエマも、キャラクター側かもしれない。
やっぱりプレイヤーは、俺しかいないのか……。
「……」
「ハヤテ、どうした?」
「あ、いや、悪い。ちょっとぼっとしてた」
「何だ何だ、おれの華麗な攻撃を見てなかったのか?」
「何が華麗だ。ド下手くそだっただろうが」
「ん、そうかあ?」
大斗が不思議そうに首を傾げる。
お前、あれ本気で華麗に舞ってたつもりなのか……。
さておき。
なにかの間違いがあるかもしれない。
もう一度忍刀で攻撃させて、次は一本だけで攻撃させる。
その結果に、大きな違いは出なかった。
つまり忍刀は大斗の得意武器で確定。
一刀流でも、二刀流でもどちらでも可って感じか。
「大斗、これから忍刀を使え」




