表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
滅亡国家のラグナテア ~リアルがゲームに入れ替ったけどデータ引き継ぎで現代無双~  作者: 萩鵜アキ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

62/79

第62話 窮地へ滑り込む

「そういえば堤。お前の兄の線はどうなったんだ?」

「そ、それが、昼前から連絡が取れなくなったんだよね」

「ふむ?」

「し、仕事が忙しいのかも……」


 彼の兄は、ハンター協会で働いている。

 今回試験官の任を強引にねじ込み、白河の足を引っ張るよう動く手はずになっていた。


 具体的に、どう足を引っ張るかについては剣斗も知らない。

 そこは現場の判断に任せている。

 何も知らない人間が口を出すより、そちらの方が上手くいくからだ。


「も、もし失敗したら?」

「失敗しないよう、たっぷり金を渡している。おそらく忙しいのだろうな」

「そ、そう、だね……」

「だが、もし堤兄の作戦が上手くいっていたら、ここに白河は来ないかもしれないな」

「う、うん。もしかしたら今頃、白河が死んだから報告業務に追われてるのかも」

「――あいつは、死なねぇよ」


 その時、これまでどれだけ問うても、暴力を振るっても一言も発しなかった三浦が口を開いた。


「なにされようと、死ぬわけない、じゃん」

「……」

「きっと、もうすぐ、ハヤテが来る。死にたくない、なら……早いとこ、尻尾巻いて逃げたほうがいいぜ」

「――ッ!」


 気づけば剣斗は殴りつけていた。

 紙袋が破れるほど殴り、パイプ椅子と共に倒れた三浦を、足蹴りにする。


「尻尾を巻く? こちらが放った女に引っかかって、あっさり騙された無能な下等種が、貴種の俺になんと言った? 口の利き方がなってないゴミは、この手で処分してやろうか!!」

「ま、待て待てッ! 今殺すのは不味いって!」

「落ち着いて大庭、これは使い道があるって言ってたでしょッ!」


 羽交い締めにされ、引き離される。


 紙袋が破れ、露出した三浦の顔面はボコボコで、血だらけになっている。

 その眼が――潤んだ瞳が、倉庫の入り口を見つめた。


「……ハヤテェ」


 ゾクッ。

 本能が、体を震わせた。

 熱くなった血液が急速に熱を失い、サッという音と共に降下する。


 振り返ると、倉庫の入り口に、白河颯の姿があった。


 やはり来たか、という思いと、堤兄でも止められなかったか、という無念が同時にこみ上げる。

 それらの思考を隠すように、乱れた髪をかき揚げる。


「ようこそ、白河颯。こちらの注文通り、きちんと一人で来ただろうな?」

「……当然だ。早速だが、大斗を返してもらおうか」

「断る。貴様は貴種をコケにし、俺たちに暴力を振るった。この借りを返させてもらおう」

「何を馬鹿な――」

「おっと動くなよ。こいつがどうなってもいいのか?」


 剣斗が合図すると、仲間の一人が三浦を抑えつけ、もう一人が首筋に短剣を突きつけた。


「少しでも動いたら、こいつの命はない」

「……」

「ただの脅しだと思うなよ? 俺たちは本気だ。俺のツテを使って、ここから死体が出て来ても、警察は一切関与しないことになっている」


 こちらが本気だということが伝わったか。

 白河の肩から力が抜けた。


「俺たちの手札がこれだけだと思うなよ? 貴様が来るまでに、三浦から貴様の弱点をたっぷり聞き出してる。……家族が死ぬのは嫌だよな?」

「…………」

「よし、それでいい。黙って俺に殴られれば、貴様以外の命の保証はしよう」

「ハヤテ、それは嘘だ! 気にせずやれ!」

「黙れッ!!」


 剣斗が叫ぶと、仲間二人が大斗を締め上げた。

 しかし、どこにそのような力が残っていたのか、大斗は二人の束縛も関係なく声を張り上げた。


「ハヤテ、おれ、黙ってたぞ。お前の弱点を教えろって、殴られたけど、何も言ってない! 安心してこいつらをぶっとばせッ!」

「大斗落ち着け。いま俺が動くとお前の命も――」

「気にすんなって。……ほら、おれって馬鹿じゃん? 何も考えないで、女子に声かけて、彼女が出来たと思ったら、こいつらの仕込み(ハニトラ)だったみたいでさ……」

「黙れ虫けらがッ!」

「黙らねぇッ!」


 剣斗が大声で制止するも、逆にそれ以上の声が鼓膜に叩きつけられた。


「聞けハヤテ! 同級生だから大丈夫だって思ってたら、こいつらの手先だったみたいで、ころっと騙されて……去り際『あー、気持ち悪かった』『これでやっと解放された』って言いやがった……。

 おれのこと、ちっとも見てなかったんだ。なのにおれ、好かれてるって、勘違いしてたんだよ。おれ、すっげぇ馬鹿じゃん……」

「黙れと言っているッ!!」


 三浦に近づき、何度も蹴りつける。

 しかしこれまでと違い、彼の体は岩のように硬く、ほとんど手応えを感じなくなっている。


「う、ぐ、……頼むよ。お、おれ、馬鹿な奴のままで死にたくない! 親友のために命を捨てる奴だって、それくらいのコトは……漢としてやりたいんだッ!」

「だったら今すぐ死ねッ!!」


 当初予定していた作戦から、大幅にズレている。

 このままでは不味い!

 流れを呼び戻そうと、ナイフを三浦の首めがけて突き出した。


 だが――、


『お待たせいたしました。現時刻をもって制圧完了です♪』


 ――ガギッ!!


 首に突き刺さろうとしていたナイフの切っ先が、目に見えない何かによって阻まれた。

 まるで鉄にぶつかったような衝撃に、剣斗はうっかりナイフを手放すところだった。


「な、なんだ、これは? 白河、一体何をしたッ!?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ