第60話 手紙
「現在の日本で、これらの深度の悪魔をソロで討伐したことのあるハンターは皆無だ」
えっ、マジで!?
誰だって死に戻りを使えばいつかは魔王でもソロ討伐出来るはず――って、それはリアルじゃ無理だったな。
ああ……そうか。
冷静に考えてみればこの世界じゃ、情報サイトとかで悪魔のスキルから行動パターンを覚えて、さらに何度も死に戻りながら戦闘を体で覚えてる俺が、あまりに特殊すぎる。
「白河くんをEXにしなければ今後、ハンター協会としてEXに認定出来るハンターがいなくなるだろう」
「それにしては、フットワーク軽くない?」
そんなにあっさり決めていいものなの?
「君は、それほどの偉業を成したのだ」
「ふぅん……?」
「以前から理事のほうにも、話題に上がっていたというのも大きい」
「なるほど」
「ただ注意点がある。日本ハンター協会が出来るのは、君を日本のEXハンターと認定することだけだ。世界ではEXハンターとしては活動出来ない」
「……ん、どういうこと?」
「管轄の違いだ。日本ハンター協会は、あくまで世界ハンターズギルドから業務委託を受けた出先機関。Sランクまでの昇格権を持っているが、EX――世界的に活躍する逸材を実際に昇格させられるのは、ハンターズギルドだけだ」
ってことは、外国に行ったらDランク扱いなのか。
……まあ、今のところ海外に出る気はないからいいんだけどさ。
「もう一つ注意してほしいのは、肩書きはEXランクだが、実際はDランクとほぼ同じ権利しか与えられない」
「……マジか」
うそ、だろ……。
梶原の言葉に、ガツンとショックを受けた。
「実質Dランクなら、EXにする意味ないだろ……」
「意味ならある」
梶原が真剣な目を俺に向けた。
「――魔王討伐に参加出来る」
○名前:白河 颯
○位階:★Ⅳ→★Ⅴ ○ハンターランク:D→EX
○クラン:ラグナテア ○クランランク:―→C
○装備
・武器:・レギオン
・ベルフェゴール
・防具:夢幻のローブ
夢幻の手甲
夢幻のブーツ
夢幻のベルト
・ペット:白銀の守護機〝エルドラ〟
・???:シャドウ
○
まさか今EX認定を受けるとは思ってもみなかったな。
ただこれで魔王が出現しても、戦闘に参加すら出来ないってことがなくなった。
普段のものとは違う、EXマークの入ったハンター証を受け取る。
「EXも銀なんだな。ゴールドとかブラックとか、もっと派手になるのかと思ってたわ」
「銀じゃなくてプラチナだ。白河、学校で習っただろ」
「そ、そうだったっけ?」
「小学生でも知ってる常識的だぞ……」
「う、ぐ……」
「戦闘だけでなく、勉強にも力を入れないと千葉のようになるぞ」
「来週から勉強頑張るわ!」
「おいテメェら、それどういう意味だよ」
畠山と俺の話を聞いたレオンが、半目で睨む。
どういう意味って、わかるだろ。そういう意味だよ。
「先ほどまでは冗談かと思っていたが、いざカードを見ると、颯が本当にEXになったのだと実感が湧くものだな」
「そうですね。あっ、マスターがEXだとクランメンバーになりたいハンターがたくさん集まるんじゃないですかね?」
「そうだな。面接をするのは颯と安達か? きっと大騒ぎになるのだ」
「あ、いや、しばらくは新メンバーの募集はかけないぞ」
「えっ!? 何故なのだ?」
「せっかくクランを拡大するチャンスじゃないですか!」
だって、募集かけてもどうせ集まるのはレア度Nの有象無象だけじゃん。
うちのメンツを考えると、今はレアが出ないノーマルガチャばっか回しても意味ないんだわ。
「体勢が整わないまま拡大しても上手くいかない。それは歴史が証明している」
どんな歴史だよ……。
畠山がしたり顔でメガネを押し上げた。
「僕が聞いた話だが、急に拡大すると大概二つの理由で空中分解する」
「二つ理由?」
「一つは主導権争い」
「なるほど」
「もう一つは、色恋のこじれだ」
「マジかよ……」
あるんだなあ、そういうの。
でもダンジョンとか深淵って、常に吊り橋みたいなもんだから、恋愛感情がわき上がりやすいのかもな。
「色恋……」
「白河くんが新しいメンバーの女性にたぶらかされるんじゃ」
「は、颯に限ってそんな」
「経験豊富な女性ならイチコロですよきっと!」
「それは……不味いのだ」
「不味いですよね」
「新メンバー募集は無しだな」
「無しですね」
エマと萌木はヒソヒソと話し合って、お互いに頷き合っている。
なんか俺の名前が聞こえた気がしたが……気のせいか?
まあいいや。
「ここから暫くは、このままでいって、めぼしい人材が見つかったら勧誘するって形を取ろうと思ってる」
「それがいいと思うのだ!」
「私も賛成ですッ!」
助成二人の勢いが凄い。
そんなにクランを大事に思っているのか。関心関心。
「ってわけで、今日はこのへんで解散し――」
「白河くんッ!!」
その時、ハンター協会のエントランスに俺の名が響き渡った。
振り返ると、血相を変えた安達がいた。
なんだどうした?
珍しく息を切らしているな。
「どうした安達、そんなに慌てて」
「これを」俺に手紙を差し出し「クランハウスに、届けられたんだけど……」
いまどき、手紙って珍しいな。
うん? これ宛名だけで差出人の名前がないな。
おまけに切手も消印もない。
クランハウスの郵便受けに、誰かが直接投函したのか。
中を開いて、確認する。
瞬間、全身が凍り付いた。




