第57話 ※捨てられません
「……いよいよいらない子だな」
『そ、そんな……』
『マスター、マスター。魔力を充填してみてはいかがでしょうか?』
「ほう……」
エルドラの案は考えてもみなかった。
たしかに、この宝玉からはシャドウを戒めてた頃の魔力を一切感じない。
魔力切れだとするなら、たしかに充填すれば何かしら有用さを見いだせるかもしれない。
「んじゃ、ちょっと込めるぞ」
魔銃に注ぐようなイメージで、シャドウに魔力を充填する。
『ほ、ほーっ、ホアアーッ!!』
「どうだ?」
『漲ってきたのである!!』
「おっ、確かに大きくなったな」
今は小学一年生くらいか。
『んふ。どうであるか? 我が輩のバディは!』
「…………はあ」
『わわ、悪かったのである。だからその拳を下ろすのであるッ!!』
黙っていればいいとこのお嬢様に見えなくもないが、この口調と、ほのかに漂うガキ大将臭のせいですべてが台無しだ……。
これ、込める魔力量によってサイズも変わりそうだな。
いろいろ試してみたい。
「お前の得意な魔法はなんだ?」
『《ガトリング・ブラッド》であるが』
「そんじゃ、あの瓦礫に向かって放ってみろ」
『……で、出来なかったら?』
そんな目で俺を見るなよ。
出来なかったら、なにが出来るか一緒に考えよ? って言いたくなるだろ……。
「いいからやれ」
『了解したのである』
手を離すと、シャドウが宙に浮かび、右手を前に掲げた。
その腕の周囲で、赤い魔力が回転する。
『……いくのである。《ガトリング・ブラッド》!!』
次の瞬間。
――ダダダダダ!!
激しい音と共に、手のひらから弾が射出。
真っ赤な弾が瓦礫を木っ端微塵の粉々にした。
「お、おう……」
すげぇ威力。
これ、さっきの戦闘で食らってたらやばかったな。
『ふ、ふふ……フワーッハッハッハ!! 我が輩、やれば出来る子!』
「そ、そうだな」
テンションの上げ下げが極端すぎて付いていけねぇ……。
『そして人間よ。我が輩に力を与えたことを、あの世で後悔するのであるッ!! 《ガトリング・ブラッド》!!』
「――ッ!?」
――ダダダダダ!!
目の前で真っ赤な閃光。
轟音がガンガン鼓膜を叩く。
腕を前に掲げたが…………何もない?
穴は空いてないし、なんならかすり傷すらない。
魔法は、きちんと成立した。
俺の背後の瓦礫も、先ほどと同じように粉々になっている。
ってことは、原因は俺の魔力か?
「…………で、誰があの世で後悔するって?」
『ちち、違うのであるッ! これには歴とした訳が――』
「問答無用」
ガツン。
シャドウの脳天に拳を落とす。
こいつ、すぐに調子に乗るのは悪癖だが……ものっすごく扱いやすいな。
「エルドラ、今の魔法が俺に通じなかった理由はわかるか?」
『おそらくマスターの魔力を使った魔法だから、ではないでしょうか』
「お前もそう思うか」
俺が直接供給した魔力だから、俺をすり抜けた。
っていっても、普通は自分が放った魔法でも怪我をする。
普通じゃないことが起ったのは、こいつが魔王の宝玉を使った個体だからだろうな。
『マスター。こいつはここで処分しましょう』
『――ッ!』
「うーん」
『どうかご慈悲をッ!』
辞めろ、小学一年女子の姿でDOGEZAするな。心が痛い。
「処分は一旦保留だな」
『し、信じていたのである、ご主人!』
『マスター、ワタシは承服出来ません。こいつは危険因子です。いつか必ず災いをもたらします』
『シナイノデアル。我が輩、ウソ、ツカナイ』
お前嘘しかついてねぇだろ……。
「こいつが危険だってのは同意する。だが、有用でもあるのは見た通りだ」
正直、宝玉のシャドウは俺の想像を超えてた。
今回俺は魔力弾1発分の魔力しかチャージしてない。
なのに、あれだけの結果を出したんだ。
最上級魔法が放てるくらい魔力を込めたらどうなるか?
間違いなく、戦況を覆す結果が出せる。
とはいえ俺自身、普通だったら手を出さない類いのアイテムだ。
でも、どうもゲームの進行から外れている予兆がある。
深淵の増加がそれだ。
ゲームの進行だと本来あり得ない速度で、深淵が発生してる。
ってことは、次回魔王が襲来する時期も、前倒しになる可能性が非常に高い。
「これがジョーカーなのはわかっているが、切り札として備えておきたい」
『マスター。危険です!』
「んー……、じゃあこういうのはどうだ?」
Tips
『ほ、ほーっ、ホアアーッ!!』
とあるライブにて上がったファンの歓声。某声優も公認のかけ声……らしい。




