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滅亡国家のラグナテア ~リアルがゲームに入れ替ったけどデータ引き継ぎで現代無双~  作者: 萩鵜アキ


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第51話 クラン試験その2

「問題が起りました」

「問題?」

「ええ。白河さん、こちらに来ていただけますか?」

「俺一人で?」

「はい。お手数おかけしてすみません」

「ふむ」


 深淵で問題……。

 ぱっと思いつくだけでも三つある。

 次元層のブレイク、なりすまし、別クラン・一般人の侵入だ。


 ブレイクは、次元層を強引に破壊することだが、これは魔王種クラスじゃなきゃ無理だから、これはないか。

 なりすましは、ウツロビトみたいな悪魔が混在してた可能性。これは普通にありそうだな。


 別クランの侵入は…………ハンター協会が管理してるからないだろう。一般人の侵入ならありそうだ。


 そのどれかか、俺が思いつかないなにかな。

 とりあえず、堤はそこまで深刻そうじゃないから、なんとかなりそうだな。


「堤さん、問題ってなんですか?」

「大丈夫。こちらで対処します。梶原くんは他のメンバーを見ていてください」

「りょ、了解しました」


「ってわけで、行ってくる。みんな、この場で待っててくれ」


 仲間に断りを入れ、堤の後を追う。

 場所は……国技館の中か。

 ここ、ボスがいるんじゃないのか?


 別にボスがいようと俺は大丈夫だけどさ。

 ほんと、何があったんだ?


 ゲームでもなかった、未経験のイベントに少し緊張する。


「こちらです」


 扉を開いた先は、普通に大ホール。

 今は土がないが、相撲中継でよく見るあの場所だ。


 その中には、なにもない。

 ボスの姿もない。


 ん、ボスはここじゃないのか。

 ……ってことは、ボスがいないことが問題?

 でもその程度なら別に問題ってことでもないよな。


 深淵はボスを倒すだけじゃなくて、一般悪魔の群れを倒す殲滅タイプもある。

 それを知らないハンター協会じゃないはずだ。


 一体、なにがあったんだ?

 よくわからんな。


「堤さん、問題ってなんですか?」

「問題、ですか。それは君みたいな下等種が、貴種派に牙を剥いたこと、ですね」

「…………はっ?」


 全く想定外の台詞すぎて、右から左に抜けていきそうだった。

 なになに、貴種派? 牙を剥く?

 どういうこっちゃ……。


「やはり下等種。馬鹿なあなたに説明しましょう。学内で大庭の倅に怪我を負わせましたね? それに私の息子にも」

「あー」


 あれか。思い出した。

 ってか今出す話題じゃないから、すぐに思い出せんかったわ。


 ――えっ、私の息子?

 あの中に堤さんの息子がいたのか。


「へえ。……で?」

「やはり、馬鹿にはわかりませんか。貴種派に牙を剥くということが、どのようなことかが」

「だから、具体的に教えてくれよ。貴種派に牙を剥いたらどうなんだ?」

「この試験を潰します」

「あ、そう。このやり取りは録画してる。それでもやりたいなら、どうぞ?」


 難癖付けられても嫌だから、最初からエルドラに録画させてる。

 それが役に立った。こんな役立ち方は想定してないがな。


「このやり取りが表に出たら、困るのはお前だろ。下手に動かない方がいいんじゃないか?」

「その程度の証拠を、貴種派にはもみ消せないと何故思うのですか?」

「……何?」

「ここであなたもろとも、すべて消してしまえば、何も表に出ませんよね」


 堤が歪に笑った。

 その笑みに、背筋がざわめく。


「たかがどら息子のために、ここまでやるのか」


 一歩間違えれば破滅コースだろ。

 いや、それをどうにか出来る力があんのか。


「実のところ、私が動いたのは貴種派のためだけじゃないんですよ。……困るんですよね。最近C級に上がるクランが無駄に増えてしまって」

「はっ?」

「深淵は年間を通して、おおよその数が決まっています。ここでC級クランが増えれば、深淵の奪い合いが起る」

「それの何が困るんだよ」


 いいことだろ。

 深淵に挑めるクランが増えれば、深淵の討ち漏らしを防げる。

 ハンターの実力の底上げにも繋がる。

 何が悪いんだ?


「新規参入してきた下等種のせいで、我々の収入が減るじゃないですか」

「……は?」

「深淵は我々のもの。新参の、それも下等種が出る幕はありません」


 うわぁ。

 他人の命や安全よりも自分の儲けとか、思想がゴミだ……。


「我々の利益を奪おうとするのなら、潰すまでです」


 そう言って、堤がポケットから見覚えのある石を取り出した。

 あっ、と思った時にはもうその石――深淵石が発動。

 深淵の中に、深淵が出現した。


 深淵石から外側に向かって、次元層が膨張。

 一定のラインで、真っ赤になって定着した。


「脱出不能、か」

「安心してください。外の五人も、すぐにあなたと同じ場所に送って差し上げます。……ああ、いえ、私が手を下さずとも勝手に死ぬかもしれませんね」

「……どういうことだ?」


 堤の台詞で、背筋が凍る。

 まさか梶原もグルなのか!?


「あなたたちの情報は耳に入っております。全員がDランクに上がった、新進気鋭のハンター校生。けれど真の実力者はあなただけ。あなたが他のメンバーを引き上げたからこそ、皆が一斉にDランクに上がれたのですよね?」

「…………」

「引っ張り上げられただけの学生、それもたったの五人では、深度Ⅲのボスには太刀打ち出来ないでしょう。無残に殺されるに違いありません」

「……はあ。なんだそんなことか」


 最悪の事態を想像して、無駄に警戒したわ。


「深度Ⅲくらいで失敗するほど弱くねぇよ」


 その程度で死ぬような鍛え方してねぇから。


 そもそもSSRキャラも、エマだって、成長力がずば抜けてる。

 俺が初心者だったら、奴らの成長に付いて行けなかったかもしれない。

 それくらい、みんなは特別だ。


「――俺の仲間を舐めんな」


 仲間のことはいい。

 それより、今の問題は目の前の悪魔だ。


 深淵石で出て来た悪魔だが、今はまだ石棺の中にいる。


 石棺――もうこれだけですごく嫌な雰囲気をビンビン感じる。

 なのに堤は一切、悪魔に意識を向けてない。


 自分が攻撃されないとでも思ってんのか?

 ――ははぁん、これは特殊アイテムを使ってんな。


「悪魔払いの十字架でも持ってんのか」

「……何故それを知っているんですか?」


 いやいや。「馬鹿なッ!?」みたいな反応するようなアイテムじゃないだろ。

 課金で手に入る上位互換のアイテムならわからなくもないが、普通に店売りアイテムだろ……あっ、もしかしてリアルじゃレアアイテムなの?


 やべっ。

 失言だったか?

 一気に背筋が冷たくなる。


「まさか我々の仲間……なはずないですね。下等種ごときが仲間など、虫唾が走ります」

「…………」

「……まあ、いいでしょう。今回使った深淵石はここにいる誰も、決して逃さぬよう準備した特別です。喜んでください。私はそれだけあなたたちを買っているのです」

「そりゃどうも」


 こんな奴に買われても、ちっとも嬉しくねぇな。


「下等種が持ち込んだアイテムだから性能までは期待していませんでしたが……ふむ。これはこれは。見たところ、事前に受けた説明の通りですね。

 下等種と繋がるのは不本意でしたが、これだけのアイテムが用意出来るのなら使ってやっても良いでしょう。奴もきっと、我々のような貴種に使われて本望でしょうね」

「おい、そんなにべらべら喋っていいのか?」

「いいんですよ。ここでなにを喋っても、どうせ貴方は死ぬのですからね。今回生まれた深淵の深度はⅥ。魔界では名持ちの悪魔が召喚されているはずです」


 石棺が、少しずつ開いていく。

 それを見た堤が、にやりと歪に笑った。


「それを、あなたに倒せますか?」


 次の瞬間、石棺の中から悪魔が飛び出した。

 Tips

『貴種派』

 古くは公家や国主など歴史ある家柄の者たちや、黎明期に活躍した有名ハンターなどが貴種派として名を連ねる。

 政界・財界などに強い影響力を持っている反面、それ相応の社会的役割や責任を背負わされている。


 元来、国と国民を守る為に身を削り尽力する立場であったが、平和な時代が続くことで利己的な考えの者が増えていった。

『立場ではなく行動こそ尊くあれ』という貴種派の理念はもはや形骸化している。


○ハヤテメモ:中世の貴族みたいなもん。ぶっちゃけしょうもない奴らの煮こごりだな。

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― 新着の感想 ―
何か自分たちと違うものは悪もしくは悪役というのがダブルミーニングってて草
梶原がなんかしてくるのかと思ったけど、まさかの堤の方か! 出てくる悪魔ってバフォメットと同じクラス? じゃあ、周りの被害気にしなくて良い状況なら直ぐに終わりますね
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