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滅亡国家のラグナテア ~リアルがゲームに入れ替ったけどデータ引き継ぎで現代無双~  作者: 萩鵜アキ


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第31話 言い訳は許さない

「なにか申し開きはあるか?」


 ハンターならば誰もが夢見るハイクラン【払暁の光剣】。

 そのクランハウスの執務室に、一条肇は呼び出されていた。


 呼び出したのはクランマスターであり、日本最強と名高いハンターの一人、そして肇の父である一条亘だ。


 普段からにこりとも笑わない人物ではあるが、今日はとみに険が深い。


「なにも……ありません」

「今回チームに参加させたのは、お前に勉強してもらうためだった。お前の位階はⅡであるし、さしたる期待はしていなかったのは事実だ」


 期待はしていない。

 その言葉が、肇の胃をずんと重くする。


 肇は将来のクランを背負ってたつつもりで生きてきた。

 努力も惜しまなかったし、弱いながらもクラン内で信頼を勝ち取ってきた。


 その実直な姿に、周りでは次期マスターの待望論が囁かれるほどだ。

 にも拘わらず、父には期待されていなかった。


「今回の事故でCチームが壊滅した。ポーターの中からも恐怖に負けて離脱する者が現われている。そんな中、お前の同級生の白河少年が結果を出した。ただの平民の生まれの子どもが、だ」


 こつこつこつ。

 亘が机を指先でノックする。

 その音が、まるで絞首場への階段を上る音のようだ。


「それに対して、一条家の完全バックアップの中育ったお前はどうだ? 何か、出来たことはあったか?」

「それは……」


 答えられない。

 何も、出来なかったから。


 肇はCチームに入り、伝達役として動いていた。

 それ以上の働きをすることなど、頭になかった。

 与えられた役割を真面目に、正しくこなすことに、集中していた。


 だが、それでは父を満足させられなかった。


「僕に……深度Ⅴの悪魔を倒せ、と?」


 それは、どう足掻いても不可能だ。

 肇は位階Ⅱのハンターで、まだ16才の学生だ。

 深度Ⅴの悪魔など、逆立ちしても倒せるはずがない。


「何故お前はやる前から、倒せないと決めつけている?」

「それは、位階が離れすぎているからで――」

「お前は相手が強ければ、自分は何もしなくていいと考えているのか?」

「いえ、それは……」

「ハンターは、たとえ相手が強くとも戦わねばならない時がある。それに白河少年はウツロビトに果敢に挑み、討伐した。違うか?」

「……いいえ、その通りです」


 それを言われると、黙るしかなくなる。

 あいつは、なんなんだ?

 何故、自分と同じ年齢で深度Ⅴの悪魔ウツロビトを倒せたんだ?

 それだけの力がありながら、今まで誰にも気づかれなかったというのもおかしい。


 何か、秘密があるはずだ。

 たとえばどこかで入れ替わったとか。

 ――それこそ、悪魔になった可能性だってある!


「あの白河颯は、不審な点があります。それまではぱっとしなかったのに、ある日突然強くなりました。もしかしたら悪魔かなにかに、乗り移られたという可能性も――ッ!」


 ――ズン!!


 父から感じる気迫がより重みを増した。

 気の弱いものなら気絶しているであろう。

 肇ですら、腹部ち力を入れていなければ、膝を屈していた。


「お前も、工藤と同じ妄執にとりつかれているようだな。不審な点がある? だからなんだ。ハンターとは結果がすべてだ。不審な点などという曖昧な言葉で、結果をひっくり返そうとするなど、一条家の嫡男が情けない」

「…………ッ!」

「もし白河少年が悪魔だったとして、ハンター協会が入れ替わりに気づけぬウツケの集まりであると思うか?」

「それは……」


 もしハンターと悪魔が入れ替わった場合、人類側にとてつもない被害が出る可能性がある。

 故に入れ替わり対策は、真っ先に対処してしかるべき問題だ。


「たとえばお前も保っている学生証。ハンター証と同じ機能を持っているが、悪魔が持てば色が変わるよう作られている」

「そうだったんですね」


 初耳だ。

 ライセンスに対策が施されているなら、悪魔がハンターになりすましても、ハンター協会で必ず露見するだろう。

 ダンジョンだけでなく、ハンター協会に入るだけでも、ライセンスを使わねばならないからだ。


「ライセンスはあくまで一例だ。他にもいくつもの対策が取られている。これまで何十年と悪魔と戦ってきた我々人類が、入れ替わりへの対策を怠るなど、あり得るわけがない。この程度、少し考えればわかるはずだ」

「……すみません」


 苛立ちのあまり、肇はギリッと奥歯をかみしめる。

 腹立たしいのは、父が息子の話を聞いてくれないから、ではない。

 一瞬で論破されるような言葉を口にした、己の頭の軽さに対して苛立っていた。


「お前にはクランへの立ち入りを無期限で禁じる。当面の間は、学業だけに専念せよ」

「……はい、わかりました」


 その言葉は、一条家の嫡男としての、死刑宣告のように感じられた。




~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



TIPS

・ハンター証

 所謂ハンターのライセンス。表面に名前とハンターの階級が刻まれている、特殊合金のカード。

 カードの色は、ハンターランクF・E・Dは鉄、C・Bは銀、A・Sは金と変化する。


 一見すると何の変哲も無いカードだが、悪魔が持つと途端に変色する。


 かつて深淵がブレイクし、外に飛び出した悪魔が社会に潜伏し、ハンターに背乗りして国家転覆を目論んだことから、こうした悪魔対策が施されるようになった。

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