第26話 点が無理なら面で攻めよ
「足下がお留守だヨ」
逆の手でなぎ払い。
それを、
「――知ってるよ」
夢幻機動で縦回転。着地。
よしよし、実戦でも問題なく使えるな。
「えっ、なにソの動き。きもち悪~イ」
「手足から首まで伸びまくる奴に言われたくねぇよ」
夢幻機動は、装備が意識を読み取って体を動かしてくれる、特殊スキルだ。
本気で動かせば、ただ真上にジャンプするだけで、空中で五回転くらいは出来る。
※ただし平衡感覚は死ぬ。
今の動きも、足を払われるとわかった瞬間、装備が俺の足を持ち上げ、体ごと回転させた。
つまりこの装備は、回避補助装置みたいなもんだ。
難点はフルオートじゃないこと。
全手動だからプレイヤースキルが試される。
ゲームでずいぶん使い込んだから、問題ないけど。
ウツロビトの攻撃を、立て続けに躱す。
こっちの攻撃は当たらないし、深淵からは出られないし。
このままじゃじり貧だ。
ところで、他のハンターの増援は来るのかね?
「グググ。攻撃当たらなイ! なんで!? さっきは簡単に殺せたのに!」
「殺す? もしかして、先に進んでたハンターか?」
「ああ。簡単に殺せたヨ? 弱すぎて全然つまらなかったけド。あー、でもお肉は美味しかったなア」
「そうかい」
目を虚空に向け――確認を取る。
見慣れた光が一つ、上下に揺れる。
……そうか。
「君のお肉も食べさせてヨ」
「食えるもんなら食ってみろ」
残念な結果だが、条件が整った。
レギオンを構える。
ここまで攻撃せずに、チャージしっぱなしだった魔力を解放。
「無駄無駄! 君の攻撃は遅すぎて、何発撃っても当たらないヨ?」
「さて、それはどうかな?」引き金を引いて「《焦炎爆散》」
「――ナッ!?」
レギオンの銃口から射出。
瞬間、拡散、巨大な業火。
麻布ヒルズ全体を飲み込み、破壊し、燃やし尽くして押し流す。
炎が通った道には何も残らない。
ビルでさえ、炎に飲まれて灰になった。
かすった道路は赤く染まり、ボコボコと沸騰を続けている。
「…………こわっ!」
自分でやっておいてなんだが、これはない。
こんなん、大量破壊兵器レベルじゃん!
上級魔法マジこえぇ!!
「な……ゼ……」
道路から、ゆらりと黒い影が立ち上がる。
フレアブラスターから回避を試みたが、残念ながら生き残ったのは半分だけだったな。
体のもう半分は綺麗に消えている。
「初めから……これを、使えば……一瞬デおわって、た、ハズ……」
「そうだな」
そうなんだよ。
ウツロビトの簡単な攻略法は、逃げ場すらないほど面で大打撃を加えることだ。
それが最初から出来てたら、ここまで戦闘が長引くことはなかった。
回避力がずば抜けて高い魔物だが、反面防御がカスカスだからな。
「あ、そん、でた、のカ!」
「……この先にハンターがいたら巻き込むから、撃ちたくても撃てなかったんだよ」
範囲攻撃を使うと、射線上のハンターを巻き込む可能性があった。
この先に【払暁の光剣】のメンバーがいたしな。
だから、〝くっそ厄介だ〟が単体魔法で対処するしかなかった。
うっかりコイツがハンターを殺したって――射線上に誰もいないことをバラさなきゃ、たぶんずっとどっちの攻撃も当たらないって泥仕合をしばらく続けただろうな。
まあ、それでも俺が勝つけど。
レギオンを構え、魔弾を射出。
死にかけのウツロビトは回避出来ず、魔弾に頭を粉砕されて塵へと消えた。
赤黒く染まった次元層が、徐々に元の色を取り戻していく。
『マスター、お疲れ様です』
「おう。生体反応の確認、助かった」
『いえ、マスター。すみませんでした』
「いきなりどうした?」
『映像が妨害されたせいで判断を誤りました。おそらく、ワタシがハンターの生存を確認した時には既に、全滅していたものと思われます』
「なるほど」
エルドラが感知したノイズは、妨害の形跡だったか。
『悪魔にジャミングされるとは、一生の不覚です』
「気にするな。今回のことは次に行かせばいいさ」
『ありがとうございます。次に戦いでは是非、ワタシに名誉挽回の機会をお与えください』
「覚えておくよ」
『一撃で魔王をも仕留めてみせますので!』
「ほ、ほどほどにな?」
こいつ、攻撃も出来るのか……。
ステータス100%アップって設定どこいった?
胸がぽっと、熱くなる。
位階昇格。
これでⅣ――中堅ハンタークラスか。
完膚なきまでに破壊した麻布ヒルズが再生していく。
これ、元に戻らなかったら人生終了だったな……。
今更ながらに背筋が冷たくなるのだった。
○名前:白河 颯
○位階:Ⅲ→Ⅳ ○ハンターランク:F
○クラン:ラグナテア ○クランランク:―
○装備
・武器:レギオン
・防具:夢幻のローブ
夢幻の手甲
夢幻のブーツ
夢幻のベルト
・ペット:白銀の守護機〝エルドラ〟




